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加圧送水装置の電動機をトップランナー対応に取り替えるとなぜ自家発電設備の出力まで見直すのか|消防庁が示した5つの留意事項を解説

消火ポンプ室に置かれた赤いポンプと青い電動機、右の壁に灰色の制御盤が写った写真

平成27年3月25日、消防庁は消防予第126号で、加圧送水装置の電動機を取り替えるときの留意事項を示しました。
同じ月に加圧送水装置の基準へトップランナー対応電動機が加わったことを受けた通知です。
この通知は法令ではなく、消防組織法第37条に基づく助言として出されています。
この記事では、通知が示した5つの留意事項と、見落としやすい点を、消防庁の通知と現行の条文をもとに解説します。

消火ポンプのモーターを新しくするときに、気をつける点があると聞きました。
うちの建物でも、そのうち取り替える時期が来そうです。

電動機を新しい型に替えると、電気の面で変わる点があります。
まず通知が出た理由と対象を順に見ていきましょう。

電気の面というと、ブレーカーのことでしょうか。

ブレーカーだけではありません。
自家発電設備まで関わる落とし穴もお伝えします。

この記事の結論
  • 消防庁は平成27年3月25日の消防予第126号で、加圧送水装置の電動機を従来型からトップランナー対応電動機に取り替えるときの留意事項を示しました。
  • 背景は、平成27年消防庁告示第6号でJIS C 4213の電動機が基準に追加されたことで、事故が理由ではありません。
  • 留意事項は、遮断器と配線、自家発電設備の出力、出力不足時の対応、吐出量と揚程、設置スペースの5つです。
  • トップランナー対応電動機は始動電流や定格電流が大きくなることがあるため、自家発電設備の出力を再算定する必要があります。
  • 通知は消防組織法第37条に基づく助言で、従来の電動機の取り替えを義務づける内容ではありません。

▼

電動機を取り替えるときに確かめる点を、遮断器と配線、発電機の出力、出力が足りない時、吐出量と揚程、設置の場所の5つで整理した概要図解

加圧送水装置の電動機の取り替えについて消防庁はなぜ通知を出したのか

青い消火ポンプの横にオレンジ色の円筒形の電動機が並び、右上に葉の形の小さなバッジが浮かんだイラスト
通知は、事故を受けたものではなく、基準の改正に合わせて運用上の注意を示したものです。
平成27年3月16日に「加圧送水装置の基準の一部を改正する件」(平成27年消防庁告示第6号)が公布され、電動機の規格にJIS C 4213が加わりました。
「加圧送水装置の基準の一部改正に係る運用上の留意事項について(通知)」(平成27年3月25日付け消防予第126号)は、次のように述べています。
今般「加圧送水装置の基準の一部を改正する件」(平成27年消防庁告示第6号)が公布され、加圧送水装置に用いる電動機としてJIS C 4213(低圧三相かご形誘導電動機―低圧トップランナーモータ)(以下「トップランナー対応電動機」という。)が追加されました。
トップランナー対応電動機は、従来の電動機と比較して、電動機効率が高い、力率が低い、始動・定格電流が大きいなどの特徴を有していることを踏まえ、その運用に係る留意事項を下記のとおり定めたので通知します。
通知が出た理由は、事故ではなく、基準に新しい電動機が加わったことです。
通知は、事故や不具合には触れていません。
新しい電動機は、従来のものと比べて電動機効率が高い一方で、力率が低く、始動電流と定格電流が大きいという特徴があると通知は述べています。
同じ通知は、この特徴を踏まえて、取り替えるときの留意事項を5つ示しました。

トップランナー対応電動機が加わったことが、通知のきっかけなのですね。

はい。
通知が挙げた特徴は、始動電流や定格電流が大きいことなどです。

通知の対象になるのはどの電動機の取り替えなのか

左に消火ポンプと電動機の一式、右に壁付けの灰色の制御盤が置かれ、細い配管でつながれたイラスト
通知の1は、見出しを「従来の電動機からトップランナー対応電動機への取り替え時における留意事項」としています。
加圧送水装置の構造と性能は、規則第12条第1項第7号ニが、消防庁長官の定める基準に適合することを求めています。
消防法施行規則第十二条第一項第七号ニ(抜粋)
加圧送水装置の構造及び性能は、イからハまでに定めるもののほか、消防庁長官の定める基準に適合するものであること。
加圧送水装置の基準(平成9年6月30日消防庁告示第8号)五 電動機(一)電動機の構造イ(抜粋)
交流誘導電動機にあっては、JIS C 4203(一般用単相誘導電動機)、JIS C 4210(一般用低圧三相かご形誘導電動機)、JIS C 4213(低圧三相かご形誘導電動機―低圧トップランナーモータ)又は一般社団法人日本電機工業会規格(以下「JEM」という。)1381(高圧(三kV級)三相かご形誘導電動機(一般用F種)の特性及び騒音レベル)に適合するものであること。
対象は、従来の電動機をトップランナー対応電動機に取り替える場合です。
その基準が加圧送水装置の基準で、電動機の構造の規定にJIS C 4213が入りました。
従来型のJIS C 4210なども、同じ規定に引き続き並んでいます。
また通知は、平成26年3月31日付け消防予第137号の問7が、トップランナー対応電動機が基準に規定される前の取扱いを示したものだったため、この通知で削除するとしています。

通知が扱うのは、取り替えるときの話なのですね。

はい。
従来型の規格も告示に引き続き入っています。

通知は取り替えるときに何を確認するよう求めているのか

灰色の制御盤の前に、遮断器、発電機、羽根車、圧力計、設置位置の枠をそれぞれ載せた5つの小さな灰色の台が並んだイラスト
通知が示す留意事項は、次の5つです。
通知はこれらを「従来の電動機からトップランナー対応電動機への取り替え時における留意事項」として並べています。
消防予第126号の1は、最初の2つを次のように述べています。
(1)トップランナー対応電動機は、従来の電動機と比較して始動電流・定格電流値が大きくなることがあるため、分電盤や制御盤内に設置されている遮断器が始動電流で誤作動しないことをカタログ等により確認すること。また、配線の容量や過電流警報装置の作動電流の設定値についても、併せて確認が必要であること。
(2)非常電源として用いる自家発電設備の出力について、再算定が必要となること。(略)
通知の項確認する内容
(1)遮断器と配線遮断器が始動電流で誤作動しないか、配線の容量、過電流警報装置の作動電流の設定値
(2)自家発電設備の出力非常電源の自家発電設備の出力の再算定(消防予第127号の方法を参考にする)
(3)出力が不足する場合自家発電設備の増設のほか、電動機の始動方式を変えて始動電流を小さくする方法
(4)吐出量と揚程回転速度が上がって増えることがあるため、放水圧力などの基準値が規定の範囲内か。超えたときはポンプの羽根車の径を縮小する方法など
(5)設置スペース電動機の外形が大きくなることがあるため、外形寸法図等で確認
5つは、電気の面が3つ、水の面が1つ、場所の面が1つです。
(1)から(3)が電気、(4)が吐出量と揚程、(5)が設置スペースにあたります。
取り替えは電動機だけの部品交換にとどまらず、分電盤や非常電源まで影響が及ぶ設備の見直しになると読めます。

確認する点は、電気と水と場所に分かれるのですね。

はい。
まず遮断器と配線の確認から入ります。

取り替えで見落としやすいのはどこか

大きなオレンジ色の電動機が、右側の一回り小さな紺色の発電機の箱に太いケーブルでつながれたイラスト
通知が最初に挙げたのは遮断器ですが、実務で見落としやすいのは、電動機のそばではない別の設備です。
同じ日に出された消防予第127号は、その設備を名指ししています。
「消防用設備等の非常電源として用いる自家発電設備の出力算定の一部改正について(通知)」(平成27年3月25日付け消防予第127号)の2は、次のように述べています。
トップランナー対応電動機は始動電流等が大きくなる特徴を有していることから、既設の電動機と取り替える場合、接続させる自家発電設備の出力不足となることがあるため、改正後の100号通知にて出力算定の見直しを行うなど、自家発電設備の出力不足とならないよう留意すること。
消防法施行規則第十二条第一項第七号ホ(抜粋)
加圧送水装置には、当該屋内消火栓設備のノズルの先端における放水圧力が〇・七メガパスカルを超えないための措置を講じること。
落とし穴は、電動機だけを見て、非常電源の出力を見直し忘れることです。
出力の算定方法は、昭和63年8月1日付け消防予第100号(100号通知)で示されており、消防予第127号はその諸元表にトップランナー対応電動機の値を追加しました。
追加されたのは、定常時定数・始動時定数・力率・効率などです。
別紙の注では、トップランナー対応電動機の諸元値の出力範囲は0.75キロワット以上375キロワット以下とされています。 もう一つの落とし穴は、水の量と圧力が変わることです。
電動機の回転速度が上がると、ポンプの吐出量や揚程が増加することがあると通知は述べています。
通知は例として、スプリンクラー設備の放水圧力が規定の範囲内にあるかの確認を挙げています。
屋内消火栓設備なら、ノズル先端の放水圧力が0.7メガパスカルを超えない措置が規則に定められています。

電動機を替えただけのつもりが、発電機まで影響するのは意外です。

はい。
通知は出力の再算定を求めています。

明日から取り替えの前になにを確認すればよいのか

脚の付いた台に立てかけた確認表のバインダーと、その右に置かれた電動機付きのポンプと小さな圧力計のイラスト
通知は、取り替えるときの確認項目を示したもので、手順そのものは定めていません。
通知の項目を工事の前後に並べ直すと、次のような確認になります。
  • 取り替え予定の電動機がJIS C 4213かどうか、仕様を施工業者に確認する
  • 遮断器の始動電流への対応、配線の容量、過電流警報装置の設定値を、施工業者に確認してもらう
  • 自家発電設備を非常電源にしているなら、出力の再算定結果を受け取る。算定は消防予第127号で示された方法を参考にする
  • 出力が不足するときは、発電機の増設か始動方式の変更かを、設計者と相談する
  • 取り替えの後は、放水圧力などが規定の範囲内かを確かめ、設置スペースも外形寸法図で確かめる
取り替えの前に、5つの確認結果を施工業者から受け取っておくことです。
電動機の価格や納期だけで機種を決めず、非常電源まで含めた工事として発注します。
実際の対応は建物や設備ごとに異なるため、所轄消防署や設備業者にも相談してください。

取り替えの前に、業者へ確認してもらう項目が分かりました。

はい。
出力の再算定結果は、書面でもらっておくと安心です。

よくある質問

Q消防予第126号はいつ、どの立場の人から出されたのですか?
A平成27年3月25日に、消防庁予防課長から各都道府県消防防災主管部長や東京消防庁、各指定都市消防長へ宛てて出されました。
Qトップランナー対応電動機とは何ですか?
A通知は、JIS C 4213(低圧三相かご形誘導電動機―低圧トップランナーモータ)の電動機をこう呼んでいます。従来の電動機より効率が高く、始動電流や定格電流が大きいなどの特徴があります。
Q従来の電動機を使い続けると、通知に反しますか?
A通知は消防組織法第37条に基づく助言で、取り替えを義務づけてはいません。告示にも従来型のJIS C 4210などが引き続き入っています。
Q自家発電設備の出力は何を参考に見直すのですか?
A平成27年3月25日付けの消防予第127号で改正された、消防予第100号(100号通知)の出力算定の方法を参考にします。

まとめ

✔消防庁は消防予第126号で、電動機を取り替えるときの留意事項を示した
✔背景は、告示の改正でJIS C 4213の電動機が加わったことで、事故ではない
✔トップランナー対応電動機は、効率が高い一方で始動電流と定格電流が大きい
✔留意事項は、遮断器と配線、自家発電設備の出力、出力不足時の対応、吐出量と揚程、設置スペースの5つ
✔非常電源の自家発電設備は出力の再算定が必要で、方法は消防予第127号を参考にする
✔回転速度が上がると吐出量や揚程が増えることがあり、放水圧力の確認が要る
✔取り替えの前に、5つの確認結果を施工業者から受け取っておく

取り替えの前に、5つの点を確かめてみます!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「加圧送水装置の基準の一部改正に係る運用上の留意事項について(通知)」(平成27年3月25日 消防予第126号 消防庁予防課長通知)
  • 「消防用設備等の非常電源として用いる自家発電設備の出力算定の一部改正について(通知)」(平成27年3月25日 消防予第127号 消防庁予防課長通知)
  • 加圧送水装置の基準(平成9年6月30日消防庁告示第8号、平成27年消防庁告示第6号による改正)
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第7号ニ・ホ、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条 e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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