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除菌用ウエットティッシュは消防法の危険物として扱うのか|アルコールが染み込んだ紙の判定を消防庁の執務資料で解説

事務所の棚に置かれた除菌用ウエットティッシュの袋と机の上の開封した袋の写真

除菌用のウエットティッシュを、事務所の倉庫にまとめて置いてよいのか、迷ったことはないでしょうか。
消防庁は、平成22年12月28日の消防危第297号で、アルコールが染み込んだ紙を危険物として扱うかどうかを、執務資料として示しました。
通知には、通常の状態でアルコールが紙からにじみ出ない場合は、非危険物として取り扱って差し支えないと書かれています。
この記事では、通知の内容、危険物かどうかを分ける条文、答えが当てはまる前提、明日から確かめることを解説します。

除菌用のウエットティッシュには、アルコールが使われていると聞きます。
倉庫にまとめて置くと、危険物になるのでしょうか。

はい、消防庁が執務資料で答えを示しています。
まず、通知の中身から確かめましょう。

どんな場合でも、危険物ではないのですか。

いいえ、答えには前提があります。
順に見ていきます。

この記事の結論
  • 消防庁危険物保安室長は、平成22年12月28日の消防危第297号で、危険物規制事務に関する執務資料を都道府県と東京消防庁、指定都市の消防長あてに送りました。
  • 問3は、除菌用ウエットティッシュなどの第4類アルコール類が染み込んだ紙が、通常の状態(常温、常圧)でアルコール類がにじみ出ない場合の扱いを聞き、答えは「お見込みのとおり」でした。
  • 消防法第2条第7項は、危険物を別表第一の品名と性状で定めていて、アルコール類は炭素の原子が1個から3個までの飽和一価アルコールです。
  • 危険物の規制に関する規則第1条の3第4項第1号は、飽和一価アルコールの含有量が60パーセント未満の水溶液を、アルコール類から除いています。
  • 通知の答えは、にじみ出ない場合だけを扱うので、にじみ出る場合や、液体のままの除菌用アルコールについては、通知では触れていません。

▼

紙に染み込んだアルコール類が常温常圧でにじみ出ないときに非危険物として扱える流れを示す図解

消防庁はなぜ危険物規制事務の執務資料を送付したのか

事務机の上のバインダーと書類の束の右に、灰色の書類棚が立つイラスト
通知の本文は、執務資料を送る目的を短く書いています。
まず、その部分を引いて確かめます。
消防危第297号「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成22年12月28日、消防庁危険物保安室長)は、次のように述べています。
危険物規制事務に関する執務資料を別紙のとおり送付しますので、執務上の参考としてください。
また、各都道府県消防防災主管部長におかれましては、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨周知してくださいますようお願いします。
この通知は、危険物の規制事務で生じた疑義への答えを、消防機関の参考として送るものです。
宛先は、各都道府県消防防災主管部長と、東京消防庁、各指定都市の消防長です。
別紙は、分野ごとに3つの問を並べています。
問分野内容と答え
問1地下タンク貯蔵所関係SF二重殻タンクの鋼板に代えてステンレス鋼板を用いることを、政令第23条を適用して認めてよいか(答:お見込みのとおり)
問2製造所等の定期点検関係PFOS含有泡消火薬剤を使う泡消火設備の点検と、泡消火薬剤の補充の取扱い(答:1、2及び3いずれもお見込みのとおり)
問3危険物判定関係第4類アルコール類が染み込んだ紙を、非危険物として取り扱って差し支えないか(答:お見込みのとおり)
この記事が扱うのは、このうち問3です。
問1と問2は、別の話題なので、この記事では触れません。

危険物の判定の通知は、消防署の人に向けたものなのですか。

はい、宛先は消防機関の側です。
でも、答えの内容は、倉庫を管理する私たちにも役に立ちます。

除菌用ウエットティッシュは危険物として扱わなくてよいのか

作業台の上に、青いふたの付いた白い袋と白い円筒の容器と透明なスプレーボトルが並ぶイラスト
問3の文は、対象と条件を一つの問いにまとめています。
まず、問いと答えの原文を引いて確かめます。
消防危第297号の別紙、(危険物判定関係)の問3と答えは、次のとおりです。
問3 除菌用ウエットティッシュなどの第4類アルコール類が染み込んだ紙であって通常の状態(常温、常圧)において第4類アルコール類が紙からにじみ出ない場合、当該第4類アルコール類が染み込んだ紙は非危険物として取り扱って差し支えないか。
答 お見込みのとおり
答えは「お見込みのとおり」で、問いのとおり、非危険物として取り扱って差し支えないとされました。
通知には、その理由を説明する文はありません。
問いの文から、押さえる語を表に抜き出します。
問いの語意味
除菌用ウエットティッシュなど問いが例として挙げている物品
第4類アルコール類が染み込んだ紙紙に、第4類のアルコール類が染み込んでいるもの
通常の状態(常温、常圧)問いが置いている前提の状態
アルコール類が紙からにじみ出ない問いが置いている前提の条件
非危険物として取り扱って差し支えない答えが認めた扱い

ウエットティッシュの倉庫は、危険物の扱いで考えなくてよいのですか。

通知の前提に当たるなら、非危険物として取り扱って差し支えないとされています。
前提は、次の見出しから確かめます。

危険物かどうかは条文のどこで決まるのか

左に透明な液体入りのガラス瓶、右の灰色のトレーに白い紙の束が置かれたイラスト
通知の問いは、法令の危険物の定義を、紙に染み込んだ物品に当てはめたものです。
まず、消防法の定義から引いて確かめます。
消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第二条第7項(現行、抜粋)
危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。
危険物かどうかは、別表第一の品名と、同表の性状の両方で決まります。
第4類は「引火性液体」で、品名欄にはアルコール類が挙げられています。
アルコール類の意味は、別表第一の備考が定めています。
消防法別表第一備考第十三号(現行、抜粋)
アルコール類とは、一分子を構成する炭素の原子の数が一個から三個までの飽和一価アルコール(変性アルコールを含む。)をいい、組成等を勘案して総務省令で定めるものを除く。
備考の「総務省令で定めるもの」は、危険物の規制に関する規則が定めています。
危険物の規制に関する規則(昭和三十四年総理府令第五十五号)第一条の三第4項(現行、抜粋)
法別表第一備考第十三号の組成等を勘案して総務省令で定めるものは、次のものとする。
一 一分子を構成する炭素の原子の数が一個から三個までの飽和一価アルコールの含有量が六十パーセント未満の水溶液
炭素の原子が1個から3個までの飽和一価アルコールの含有量が60パーセント未満の水溶液は、アルコール類から除かれます。
危険物の判定に関わる規定を、表にまとめます。
規定内容
消防法第2条第7項危険物は、別表第一の品名と性状で決まる
消防法別表第一備考第十三号アルコール類は、炭素の原子が1個から3個までの飽和一価アルコールで、組成等で総務省令が定めるものを除く
危険物の規制に関する規則第1条の3第4項第1号飽和一価アルコールの含有量が60パーセント未満の水溶液を除く
危険物の規制に関する政令別表第三アルコール類の指定数量は、400リットル
通知は、この条文のどの部分を根拠に非危険物とするのかを書いていません。
条文の定義と、通知の答えは、分けて読むことが大切です。

アルコールの濃度が低ければ、そもそも対象から外れるのですか。

はい、規則は60パーセント未満の水溶液をアルコール類から除いています。
ただし、通知の答えとは別の話なので、混同しないでください。

通知の答えはどんな前提のときに当てはまるのか

乾いた茶色い机の上に白い袋が二つ並び、右の袋の周りに青いしずくが落ちたイラスト
通知の答えは、問いが置いた前提のもとで示されています。
前提を、問いの文から拾います。
前提通知の問いの文言
物品第4類アルコール類が染み込んだ紙(例:除菌用ウエットティッシュ)
状態通常の状態(常温、常圧)
アルコール類の様子紙からにじみ出ない
この3つの前提のもとで、答えは「お見込みのとおり」でした。
前提から外れる場合の扱いは、通知の問いにも答えにも含まれていません。
通知が触れていない事柄を、次の表にまとめます。
事柄通知での扱い
アルコール類が紙からにじみ出る場合問いに含まれていない
液体のままの除菌用アルコール(ボトルやスプレーなど)問いに含まれていない(紙に染み込んだ物品の問い)
常温、常圧から外れる状態問いに含まれていない
液体のままの消毒用アルコールは、別の記事で扱っています。
通知に書かれていない場合は、通知の答えを広げて考えず、所轄の消防署に確かめてください。

ウエットティッシュから、アルコールがにじむときはどうなるのですか。

通知の答えは、にじみ出ない場合についてのものです。
にじむ場合の扱いは書かれていないので、消防署に確かめましょう。

明日から保管の確認で何を見ればよいのか

鉄の棚に白い箱と白い袋が並び、上の壁に丸い温度計が掛かったイラスト
危険物にあたる場合は、保管できる場所が法律で決まっています。
まず、消防法の該当部分を引いて確かめます。
消防法第十条第1項(現行、抜粋)
指定数量以上の危険物は、貯蔵所(車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)を含む。以下同じ。)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。
危険物であれば、指定数量以上を貯蔵所以外で貯蔵することは、原則としてできません。
指定数量未満の危険物は、法第9条の4により、貯蔵と取扱いの基準を市町村条例が定めます。
だから、危険物かどうかを、まず物品ごとに分けて見る必要があります。 通知は平成22年のものなので、いまの制度は、上の現行の条文で確かめてください。次の5つは通知に書かれた義務ではなく、通知と条文を踏まえた実務上のおすすめです。
  • 倉庫にある除菌用品を、紙に染み込んだものと、液体のままのものに分けて一覧にする
  • 紙に染み込んだものは、包装の外にアルコール類がにじみ出ていないかを確かめる
  • 保管場所が、通知の前提の常温、常圧の範囲かを確かめる
  • 液体のままの除菌用アルコールは、量を数えて、アルコール類の指定数量に対する倍数を確かめる
  • 前提に当たるか迷うものは、所轄の消防署に確かめる

倉庫には、ウエットティッシュも除菌用のアルコールも置いています。
何から確かめればよいですか。

まず、紙に染み込んだものと液体のままのものを分けましょう。
液体のほうは、指定数量に対する倍数を確かめます。

よくある質問

Q除菌用ウエットティッシュは、この通知でどんな場合でも非危険物になるのですか?
Aいいえ。答えは、通常の状態(常温、常圧)でアルコール類が紙からにじみ出ない場合についてのものです。
Q除菌用のアルコールスプレーやボトルも、非危険物として扱えますか?
Aこの通知の問いは、紙に染み込んだものについてです。液体のままの物品は、問いに含まれていません。
Qアルコールの濃度が低い除菌用品なら、危険物ではないのですか?
A規則は、飽和一価アルコールの含有量が60パーセント未満の水溶液をアルコール類から除いています。個別の製品が当たるかは、成分と濃度で確かめる必要があります。
Qこの通知で、ウエットティッシュの保管に新しい義務が決まったのですか?
Aいいえ。通知は執務上の参考として送られた資料で、危険物の定義は消防法第2条第7項などが定めています。

まとめ

✔消防庁危険物保安室長は、平成22年12月28日の消防危第297号で、危険物規制事務に関する執務資料を送付した
✔問3は、第4類アルコール類が染み込んだ紙の危険物判定に関するもので、答えは「お見込みのとおり」だった
✔答えの前提は、通常の状態(常温、常圧)でアルコール類が紙からにじみ出ないことである
✔危険物かどうかは、消防法第2条第7項により、別表第一の品名と性状で決まる
✔規則第1条の3第4項第1号は、飽和一価アルコールの含有量が60パーセント未満の水溶液をアルコール類から除いている
✔通知は、にじみ出る場合や、液体のままの除菌用アルコールには触れていない
✔前提に当たるか迷うものは、所轄の消防署に確かめる

危険物の判定を、倉庫の物で確かめます!

除菌用品の保管は、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防危第297号「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成22年12月28日 消防庁危険物保安室長)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第7項・第9条の4・第10条・別表第一 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第1条の3 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)別表第三 e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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