排煙機を動かす電気をどこから取るかについて、消防法施行規則は自動火災報知設備の電源の決まりを「例により」借りています。
そのため三重県や埼玉県の消防本部の審査基準にも、排煙設備の電源の項目で自動火災報知設備の受信機の規定を準用するものがあります。
ところが、どの項目を借りるか、開閉器の表示や操作回路の配線をどう書くかは、本部ごとに少しずつ違います。
四日市市消防本部の審査基準の第18の7をたどり、鈴鹿市・埼玉県央広域・津市と比べます。
四日市市のビルで、排煙設備を更新することになりました。
排煙機の電源は、空調と同じ分電盤の回路から取ってもよいのでしょうか。
四日市市の審査基準は、排煙機の電源に自動火災報知設備の受信機の常用電源の規定を準用しています。
専用の回路にするのが基本です。
自動火災報知設備の決まりを、排煙設備に使うのですか。
国の規則がもともと例によりと書いて借りているので、市の基準もそれに合わせています。
順番にたどってみましょう。
- 消防法施行規則第30条第7号は、排煙設備の電源を第24条第3号(自動火災報知設備の電源)の例により設けるとしている
- 四日市市は第18の7で、排煙機による排煙設備の電源と配線に自動火災報知設備の基準の1(1)と9を準用している
- 準用先の1(1)は、専用回路として階別主開閉器の電源側から分岐し、開閉器に赤色の表示を付けるなどとしている
- 鈴鹿市と埼玉県央広域も自動火災報知設備の常用電源の項を準用し、防災表示盤の電源にも同じ項を借りている
- 操作回路の配線は鈴鹿市と県央広域が耐熱配線、四日市市は耐火配線又は耐熱配線とし、津市は非常電源の図の例によるとしている
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目次
国の規則は排煙設備の電源をどこから借りているのか

その中で電源・非常電源・操作回路の配線の3つは、ほかの設備の条文を借りる書き方になっています。
排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準の細目は、次のとおりとする。
七 電源は、第二十四条第三号の規定の例により設けること。
八 非常電源は、第十二条第一項第四号の規定の例により設けること。
九 操作回路の配線は、第十二条第一項第五号の規定の例により設けること。
三 電源は、次に定めるところにより設けること。
イ 電源は、蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとること。ただし、(略)
ロ 電源の開閉器には、自動火災報知設備用のものである旨を表示すること。
第30条第7号は、排煙設備の電源について自分では中身を書かず、第24条第3号の規定の例により設けるとしています。
第24条第3号は、電源を蓄電池か交流低圧屋内幹線から、ほかの配線を分岐させずに取り、電源の開閉器に用途を表示するよう求めています。
非常電源は第12条第1項第4号(屋内消火栓設備の非常電源)、操作回路の配線は同項第5号の例によるので、排煙設備の電気まわりは2つの設備から借りた決まりでできています。
ただ、「分岐させずに」とは分電盤のどこから取ることか、表示は何色かといった細かい点は規則に書かれておらず、各消防本部の審査基準が具体化しています。
四日市市の場合は、次の順につながっているので、上から読むと追いやすくなります。
- 消防法施行規則第30条第7号:電源は第24条第3号の例による
- 同第24条第3号:蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとり、開閉器に表示する
- 四日市市 審査基準 第18 排煙設備の7:電源及び配線等は自動火災報知設備の基準の1(1)及び9を準用
- 同 第10 自動火災報知設備の1(1)ア〜カ(受信機の常用電源)と9(配線及び工事方法等)
- 非常電源は規則第30条第8号から第12条第1項第4号へ、四日市市は第18の8から第27 非常電源へ
電源の決まりは、排煙設備の条文の中には書いていないのですね。
はい、第30条は第24条の例によるとだけ書いています。
細かい中身は、消防本部の審査基準で確かめます。
四日市市は排煙機の電源に受信機のどの規定を当てはめるのか

そのうち1(1)は、自動火災報知設備の受信機の常用電源の項目です。
7 電源及び配線等
排煙機による排煙設備の電源及び配線等は、自動火災報知設備の基準1(1)及び9を準用すること。
8 非常電源
非常電源の基準によること。
常用電源は交流電源とし、次によること。
イ 電源電圧は、300V以下であること。
エ 電源は、専用回路とし、配電盤又は分電盤により、階別主開閉器の電源側から分岐すること。ただし、他の消防設備用等の電源を自動火災報知設備の電源と共有する場合で、自動火災報知設備に障害を及ぼすおそれがないときは、共有することができる。
オ 回路の分岐点から3m以下の箇所に各極同時に開閉できる開閉器及び過電流遮断機(定格遮断電流20A以下のもの。)を設けること。
カ 開閉器の見やすい箇所に、自動火災報知設備専用である旨の赤色の表示を付しておくこと。
1(1)はア〜カの6項目で、電源の電圧と容量が適正であること、電源電圧300V以下、金属製外箱の接地(努めて施す)、専用回路、開閉器と過電流遮断機、赤色の表示を並べています。
このうちオ(分岐点から3m以下の開閉器と過電流遮断機)だけに下線が引かれており、四日市市の凡例では下線は市の行政指導を表します。
エにはただし書きがあり、ほかの消防用設備等と電源を共有することも、障害を及ぼすおそれがなければ認められています。
もう一つの準用先の9は、電線の規格の表と、金属管工事・ケーブル工事などの工事方法を定め、耐火・耐熱の保護が要る配線は非常電源の基準によるとしています。
受信機を前提に書かれた項目(電源電圧・外箱の接地・遮断機の定格・表示の文言)を排煙機にどう読み替えるかは本文に書かれていないので、設計の段階で四日市市消防本部に確認すると確実です。
階ごとの主開閉器の下にある空き回路を使うだけでは、足りないのですね。
階別の主開閉器より電源側から分けるのが基本です。
単線結線図に分岐の位置を書いておくと、協議が早く進みます。
鈴鹿市と埼玉県央広域は排煙設備の常用電源をどう書いているのか

常用電源はどちらも自動火災報知設備の受信機の項を準用しますが、細かな書き方に違いがあります。
省令第30条第7号から第9号までに規定する非常電源、常用電源及び配線は、次による。
⑵ 常用電源
第10 自動火災報知設備第3⑶を準用する。
鈴鹿市の第10の3⑶と県央広域の第10の4⑶は、規則第24条第3号イの「他の配線を分岐させずにとる」を、専用回路とし配電盤又は分電盤で階別主開閉器の電源側から分岐することだと説明し、どちらも●(法令の解釈と指導)を付けています。
鈴鹿市にはここにただし書きがあり、ほかの消防用設備等と電源を共用しても障害を及ぼすおそれがなければ共用できるとしていますが、県央広域の同じ項にはこのただし書きがありません。
常用電源に蓄電池を使う場合は蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)に適合するもの又は認定品とし、充電用の交流電源は専用回路とする点は両本部で同じです。
開閉器の表示は、鈴鹿市が「赤色の表示」、県央広域が「地が白色で文字が赤色の表示」と書き分けています。
四日市市にある電源電圧300V以下や、分岐点から3m以下の開閉器と過電流遮断機の項目は、鈴鹿市と県央広域の常用電源の項にはありません。
| 項目 | 四日市市 | 鈴鹿市 | 埼玉県央広域 |
|---|---|---|---|
| 排煙設備の項 | 第18の7 | 第18の10⑵ | 第18の11⑵ |
| 準用先 | 第10の1(1)と9 | 第10の3⑶ | 第10の4⑶ |
| 専用回路・階別主開閉器の電源側から分岐 | あり | あり(●) | あり(●) |
| ほかの消防用設備等との共用 | 障害がなければ可 | 障害がなければ可 | 記載なし |
| 分岐点から3m以下の開閉器と過電流遮断機 | あり(下線=行政指導) | 記載なし | 記載なし |
| 開閉器の表示 | 赤色の表示 | 赤色の表示(●) | 地が白色で文字が赤色(●) |
つまり、鈴鹿市や鴻巣市でも専用回路が基本で、表示の書き方が少し違うのですね。
そのとおりです。
表示の札は、本部ごとの書き方に合わせて用意しましょう。
防災表示盤の電源は何を借りるのか

その電源も、自動火災報知設備の受信機の項を借りています。
防災センター等に設ける起動等の制御及び作動状態の監視ができる装置(以下この項において「防災表示盤」という。)は、次によること。
(略)
ウ 常用電源等
常用電源、非常電源及び予備電源は、第10 自動火災報知設備4⑶から⑸までを準用すること。
鈴鹿市の第18の7⑶ウも同じ書き方で、第10の3⑶から⑸までを準用し、⑶防災表示盤の見出しに▲(市の行政指導)を付けています。
準用先の⑷非常電源は、第23 非常電源によるとしたうえで、受信機に内蔵された予備電源が非常電源の容量を超える場合は非常電源を省略できるとしています。
⑸予備電源は、鈴鹿市が品質評価品を用いるとし(▲)、県央広域は予備電源の用語の意義などを定めたうえで、受託評価品は適合するものとして扱えるとしています。
県央広域は第18-22図の備考で、蓄電池が内蔵されている場合は防災表示盤の一次側配線を一般配線としてよいとしています。
四日市市の第18には防災表示盤の電源の項は見当たらないので、監視盤の電源の扱いは四日市市消防本部に確認してください。
防災センターの監視盤にまで、電源の決まりがあるとは思いませんでした。
監視盤に蓄電池が内蔵されているかで、非常電源や配線の扱いが変わります。
機器の仕様書を手元に用意しておきましょう。
非常電源回路と操作回路の配線は4本部でどう違うのか

審査基準での書き方は、4本部で分かれます。
五 操作回路又は第三号ロの灯火の回路の配線は、電気工作物に係る法令の規定によるほか、次のイ及びロに定めるところによること。
イ 六百ボルト二種ビニル絶縁電線又はこれと同等以上の耐熱性を有する電線を使用すること。
ロ 金属管工事、可とう電線管工事、金属ダクト工事又はケーブル工事(不燃性のダクトに布設するものに限る。)により設けること。ただし、消防庁長官が定める基準に適合する電線を使用する場合は、この限りでない。
鈴鹿市と県央広域は、非常電源回路を耐火配線、操作回路を耐熱配線と書き分け、非常電源と非常電源回路の配線等は第23 非常電源によるとしています。
四日市市は第18の8で非常電源の基準によるとし、第27の6(12)で、非常電源の専用区画等から電動機の接続端子までを耐火配線、操作回路等を耐火配線又は耐熱配線とする図を示しています。
同じ(12)は屋内消火栓設備の(1)ア〜ウの例によるとし、非常電源回路を専用区画等から直接専用の回路とすることや、電源回路に地絡で電路を遮断する装置を設けないことを借りています。
津市は排煙設備の基準(5-19)に電源の項がなく、消防用設備等の非常電源(5-24)の⑼で、排煙設備の非常電源回路等を第24-12図iの例によるとしています。
非常電源の使用時分は、排煙設備について津市の表が30分間、四日市市の表が30分以上としています。
| 項目 | 四日市市 | 鈴鹿市 | 埼玉県央広域 | 津市 |
|---|---|---|---|---|
| 非常電源の項 | 第27 非常電源 | 第23 非常電源 | 第23 非常電源 | 5-24 非常電源 |
| 非常電源回路の配線 | 耐火配線(専用区画等から電動機の接続端子まで) | 耐火配線 | 耐火配線 | 第24-12図iの例 |
| 操作回路の配線 | 耐火配線又は耐熱配線 | 耐熱配線 | 耐熱配線 | 第24-12図iの例 |
| 防災表示盤の一次側 | 記載なし | 記載なし | 蓄電池内蔵なら一般配線可 | 記載なし |
排煙設備の更新や新設の前には、次の順で確かめると漏れが出にくくなります。
- 排煙機の常用電源を、階別主開閉器より電源側から専用回路で取っているか
- ほかの消防用設備等と電源を共用するなら、その本部の基準にただし書きがあるか
- 開閉器の表示の文言と色を、本部の書き方に合わせて消防本部に確認したか
- 非常電源回路と操作回路の配線の種類が、本部の書き方と一致しているか
- 防災表示盤の予備電源の容量と、一次側配線の扱いを仕様書で確かめたか
配線の種類は、本部ごとの書き方を見比べてから図面に入れます。
それがいちばん確実です。
図面の凡例に耐火と耐熱の区別を書いておきましょう。
よくある質問
まとめ
排煙機の電源の取り方と表示の文言を、四日市市消防本部に確認してみます!
単線結線図と配線の凡例をそろえておくと、協議が進みやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第18 排煙設備 7・8 掲載PDF
- 同 第10 自動火災報知設備 1(1)・9 掲載PDF
- 同 第27 非常電源 1・6(12) 掲載PDF
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第18 排煙設備 7⑶・10 掲載PDF
- 同 第4章 第10 自動火災報知設備 3⑶〜⑸ 掲載PDF
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第18 排煙設備 8⑶・11 掲載PDF
- 同 第10 自動火災報知設備 4⑶〜⑸ 掲載PDF
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-19 排煙設備 掲載PDF
- 同 5-24 消防用設備等の非常電源 掲載PDF
- 消防法施行規則 第12条・第24条・第30条(e-Gov法令検索)
※本記事は四日市市消防本部・鈴鹿市消防本部・埼玉県央広域消防本部・津市消防本部が公表している審査基準と、消防法施行規則に基づく一般的な解説です。審査基準の文言・下線・記号は原本の画像で確かめ、長い部分は(略)で省きました。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





