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救急隊は傷病者が搬送を断ったらどうするのか|救急業務実施基準が定める搬送拒否と医師要請と同乗の扱いを解説

救急隊は傷病者が搬送を断ったらどうするのかを解説する記事のアイキャッチ画像。壁掛けのAED収納箱と電話機がある事務所の廊下

事業所で従業員が倒れて119番に通報すると、救急隊が駆けつけます。
では、傷病者が「搬送はいらない」と言ったとき、救急隊は何を基準に動くのでしょうか。
消防庁の救急業務実施基準は、市町村の消防機関が行う救急業務の実施事項を定めています。
この記事では、第4章の救急活動のうち、搬送を断る場面を中心に整理します。

うちの従業員が倒れたとき、救急隊はどんな順で動くのでしょうか。

救急隊の動き方は、救急業務実施基準に書かれています。

本人が「大丈夫」と断ったら、救急隊はどうするのですか。

基準には、搬送を拒んだ場合の定めがあります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 救急業務実施基準(昭和39年自消甲教発第6号)は、市町村の消防機関が行う救急業務の実施事項を定めた消防庁の基準です。
  • 救急事故の通報を受けたら、発生場所・傷病者の数・傷病の程度等を確かめ、直ちに所要の救急隊を出動させるとされています(第15条)。
  • 傷病者又はその関係者が搬送を拒んだ場合は、搬送しないものとされています(第17条)。
  • 搬送が生命に危険な場合や、搬送可否の判断が困難な場合は、隊員が医師を要請するよう努めるものとされています(第18条)。
  • 関係者の同乗や家族等への連絡は、どちらも「努めるものとする」という書き方で、確実に応じる義務としては書かれていません(第20条・第25条)。

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通報を受けて出動し、搬送を断られたら搬送せず、迷うときは医師を要請するという救急隊の三つの場面を示した図解

119番通報を受けた消防は最初に何を確かめるのか

卓上の電話機と空白のメモ帳、赤い回転灯を付けた白い救急車のイラスト

救急業務実施基準は、救急隊の動き方を条ごとに定めています。
まず、通報を受けた直後の場面から確認します。

(救急業務実施基準 昭和39年自消甲教発第6号)(救急隊の出動)第十五条 消防長又は消防署長は、救急事故が発生した旨の通報を受けたとき又は救急事故が発生したことを知ったときは、当該事故の発生場所、傷病者の数及び傷病の程度等を確かめ、直ちに所要の救急隊を出動させなければならない。
(救急業務実施基準 昭和39年自消甲教発第6号)(口頭指導)第十六条 消防長は、救急要請時に、指令室又は現場出動途上の救急自動車等から、救急現場付近にある者に、電話等により応急手当の協力を要請し、その方法を指導するよう努めるものとする。
(消防法第二条第九項 抜粋)救急業務とは、(略)傷病者のうち、医療機関その他の場所へ緊急に搬送する必要があるものを、救急隊によつて、医療機関(厚生労働省令で定める医療機関をいう。第七章の二において同じ。)その他の場所に搬送すること(傷病者が医師の管理下に置かれるまでの間において、緊急やむを得ないものとして、応急の手当を行うことを含む。)をいう。

通報を受けた消防長又は消防署長は、直ちに所要の救急隊を出動させなければなりません。
第15条は、出動させる前に、発生場所、傷病者の数、傷病の程度等を確かめると定めています。
通報する側が、発生場所・傷病者の数・傷病の程度を先に伝えれば、救急隊の判断材料がそろいます。
第16条は、救急現場付近にいる者へ、電話等で応急手当の協力を求め、その方法を指導するよう努めると定めています。
通報者が慌てて電話を切らないよう、社内で共有しておきましょう。

通報したあとに、電話で応急手当を指示されることがあるのですか。

第16条が、口頭指導に努めると定めています。
電話を切らずに、指示を聞き取りましょう。

傷病者が搬送を断ったら救急隊はどうするのか

折りたたんだ白い毛布をのせたストレッチャーと、空欄のチェック欄がある白紙のクリップボード、閉じた後部ドアの白い救急車のイラスト

救急隊が現場に着いても、傷病者が搬送を望まないことがあります。
その場面は、基準の第17条が定めています。

(救急業務実施基準 昭和39年自消甲教発第6号)(搬送を拒んだ者の取扱い)第十七条 隊員及び准隊員は、救急業務の実施に際し、傷病者又はその関係者が搬送を拒んだ場合は、これを搬送しないものとする。

傷病者やその関係者が搬送を拒んだ場合、隊員は搬送しないものとされています。
条文が並べているのは、「傷病者又はその関係者」です。
本人だけでなく、関係者の拒否も同じ扱いになります。
拒否を受けたあとの確認の手順は、この条文には書かれていません。
現場での具体的な運用は、所轄の消防本部に確認しておきましょう。

本人が「大丈夫」と言えば、救急隊は帰るのですか。

条文は、拒んだ場合は搬送しないとしています。
具体的な確認の手順は、所轄消防本部にご確認ください。

搬送してよいか迷うときや、明らかに死亡しているときはどうなるのか

聴診器を添えた白い医療用バッグと、卓上の電話機、ストレッチャーのイラスト

現場では、搬送してよいのか判断に迷う傷病者もいます。
その場合と、明らかに死亡している場合の定めを確認します。

(救急業務実施基準 昭和39年自消甲教発第6号)(医師の要請)第十八条 隊員又は准隊員は、次の各号のいずれかに該当する場合は、速やかに救急現場に医師を要請し、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。一 傷病者の状態からみて搬送することが生命に危険であると認められる場合 二 傷病者の状態からみて搬送可否の判断が困難な場合
(救急業務実施基準 昭和39年自消甲教発第6号)(死亡者の取扱い)第十九条 隊員及び准隊員は、傷病者が明らかに死亡している場合又は医師が死亡していると診断した場合は、これを搬送しないものとする。

搬送が生命に危険な場合や、搬送可否の判断が困難な場合は、医師の要請に努めることになっています。
第18条は、この二つのどちらかに当たるとき、速やかに救急現場へ医師を要請するよう努めると定めています。
第19条は、傷病者が明らかに死亡している場合や、医師が死亡していると診断した場合は、搬送しないとしています。
判断の主語は、どちらの条文でも隊員又は准隊員と医師です。
事業所の従業員は、傷病者の状況を正確に伝えることに集中しましょう。

現場で迷ったら、私たちが医師を呼べばよいのですか。

医師の要請は、条文上隊員又は准隊員が行うものです。
従業員は、傷病者の状況を正確に伝えましょう。

同乗や家族への連絡は当然に認められるのか

後部ドアが開いた救急車と空の補助席、白紙の吹き出しを表示したスマートフォンのイラスト

傷病者が搬送されるとき、同僚や家族が同乗を望むことがあります。
同乗と家族への連絡は、第20条と第25条が定めています。

(救急業務実施基準 昭和39年自消甲教発第6号)(関係者の同乗)第二十条 隊員及び准隊員は、救急業務の実施に際し、傷病者の関係者又は警察官が同乗を求めたときは、これに応ずるよう努めるものとする。
(救急業務実施基準 昭和39年自消甲教発第6号)(家族等への連絡)第二十五条 隊員又は准隊員は、傷病者の傷病の状況により必要があると認めるときはその者の家族等に対し、傷病の程度又は状況等を連絡するよう努めるものとする。

同乗も家族への連絡も、条文の書き方は「努めるものとする」です。
第20条は、関係者又は警察官が同乗を求めたとき、隊員が応ずるよう努めると定めています。
第25条は、傷病の状況により必要があると認めるとき、家族等へ傷病の程度や状況等を連絡するよう努めると定めています。
どちらも努めるものであって、必ず応じると約束する書き方ではありません。
救急隊が家族等へ連絡する場面に備え、従業員の緊急連絡先を取り出せる形にしておきましょう。

家族には、救急隊が必ず連絡してくれるのでしょうか。

条文は、必要があると認めるときに連絡するよう努めるとしています。
事業所でも、緊急連絡先を確認しておきましょう。

事業所は救急要請の前後に明日から何を確認すればよいのか

壁に掛けた白いAEDの収納箱と卓上の電話機、空欄のチェック表に虫眼鏡を添えた事務室の一角のイラスト

この基準は、事業所に義務を課すものではありません。
第1条が定めているのは、市町村の消防機関が行う救急業務の実施事項です。

(救急業務実施基準 昭和39年自消甲教発第6号)(目的)第一条 この基準は、市町村の消防機関が行う救急業務について、必要な事項を定め、救急業務の能率的運営を図ることを目的とする。

救急隊の動き方を知っておくと、事業所の備えの中身が見えてきます。
確認したいのは、通報・電話・本人の意思・連絡先の4点です。
1点目は、通報のとき、発生場所・傷病者の数・傷病の程度を落ち着いて伝えられるかです。
2点目は、電話口の指示を聞き取り、応急手当を進められる人が決まっているかです。
3点目は、本人や関係者が搬送を断ったとき、責任者へ報告する流れがあるかです。
4点目は、従業員の緊急連絡先を、救急隊にすぐ伝えられる形で用意してあるかです。
基準は令和7年6月27日の消防救第236号で一部改正されましたが、改正は第14条第2項の情報通信端末の記載で、第4章の条文は今回の引用のままです。

まず、通報時に伝える内容と、緊急連絡先を確かめればよいのですね。

はい。
消防計画にも書き込んでおきましょう。

よくある質問

Q救急業務実施基準は、事業所にも守る義務があるのですか?
A第1条は、市町村の消防機関が行う救急業務について必要な事項を定める、と書いています。名宛ては消防機関で、事業所への義務は条文に書かれていません。
Q本人ではなく上司が「搬送は不要」と言った場合も、搬送されないのですか?
A第17条は「傷病者又はその関係者」が搬送を拒んだ場合と書いています。関係者の範囲は条文に書かれていないので、個別の場面は所轄消防本部にご確認ください。
Q医師を要請するかどうかは、誰が判断するのですか?
A第18条は、隊員又は准隊員が、搬送が生命に危険な場合や搬送可否の判断が困難な場合に、医師を要請するよう努めると定めています。判断の主語は隊員又は准隊員です。
Q同僚が救急車に同乗したいと言えば、必ず認められますか?
A第20条は、関係者又は警察官が同乗を求めたとき、応ずるよう努めると書いています。必ず認められるとは書かれていないので、現場の隊員の指示に従ってください。

まとめ

✔救急業務実施基準は、市町村の消防機関が行う救急業務の実施事項を定めた基準である
✔通報を受けたら、発生場所・傷病者の数・傷病の程度等を確かめ、直ちに所要の救急隊を出動させる
✔救急要請時には、電話等で応急手当の協力を求める口頭指導に努めるとされている
✔傷病者又はその関係者が搬送を拒んだ場合は、搬送しないものとされている
✔搬送が生命に危険な場合や判断が困難な場合は、隊員が医師を要請するよう努める
✔同乗や家族等への連絡は、どちらも努めるものであって、必ず応じる書き方ではない
✔通報内容・電話の指示・搬送を断られたときの報告・緊急連絡先を消防計画で確認しておく

通報の伝え方と緊急連絡先を、消防計画で確認します!

救急要請への備えも、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 救急業務実施基準(昭和39年自消甲教発第6号)第1条・第15条〜第20条・第25条
  • 救急業務実施基準の一部改正について(令和7年6月27日 消防救第236号 消防庁長官)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第9項

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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