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消防用設備等の点検に新しい技術を使ってよいのか|技術カタログが定める代替できる範囲と点検者の責任を解説

技術カタログを使った点検のイメージ。受信機の表示を三脚のスマートフォンで撮り、ドローン型の加煙試験器が置かれた機械室

スマートフォンで受信機の表示を見ながら感知器を試験したり、ドローンで高所の感知器に煙を当てたりする点検が、実際に行われ始めています。
こうした新しい技術を、消防用設備等の点検で使ってよいのかと迷う方もいるでしょう。
じつは消防庁が、点検に使える新技術を「技術カタログ」として公表しています。
この記事では、技術カタログの位置づけと代替できる範囲、点検者の責任を、消防庁の通知に沿って整理します。

新しい技術を使った点検は、どこまで認められているのですか。

消防庁が技術カタログに載せた技術は、決められた範囲で従来の点検方法に代えられます。
ただし条件があります。

載っていれば、どんな使い方でもよいのですか。

使用方法と適用条件に合う場合に限られます。
順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 技術カタログは、点検要領が定める新たな点検技術を用いた点検方法を、消防庁が具体的に示したものです。
  • 載っている技術は、所定の使用方法に適合する形で使う場合に限り、一定の点検項目で従来の方法に代えられます。
  • カタログには、代替できる技術のほかに、点検作業を効率化する技術も載っています。
  • 技術を使っても、点検項目の適否は点検者が責任を持って判定します。
  • 活用するかどうかは点検者の判断で、電波が届かないなど使えない環境では従来の方法で点検します。

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技術カタログを使う点検の流れを、掲載技術の選択、使用方法と適用条件の確認、点検者による適否の判定、点検票への記録に分けて整理した図

技術カタログはなぜ作られ、どの通知で示されたのか

通知を綴じたファイルと建物の模型が置かれた机のイラスト
点検にデジタル技術を取り入れる動きは、政府全体の規制見直しから始まりました。
令和4年6月7日の「規制改革実施計画」(閣議決定)で、アナログ規制の見直しを可能なものから順次措置するとされたためです。
「火災予防分野における技術カタログ」(消防庁) 本カタログについて
消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の3の規定による消防用設備等の点検、同法第8条の2の2の規定による防火対象物の点検及び同法第36条第1項において準用する同法第8条の2の2の規定による防災管理対象物の点検(以下「各種点検」という。)については、「規制改革実施計画」(令和4年6月7日閣議決定)において、アナログ規制の見直しについて、可能なものから順次措置することとされました。
この流れを受けて、令和5年10月6日の消防予第568号が、設備点検要領・防対点検要領・防災点検要領を一部改正しました。
設備点検要領には、「新たな点検技術等を用いた点検方法」で代えられる項目が設けられ、具体的な運用は別に通知するとされていました。
消防庁は令和5年度に代替技術を公募し、学識経験者等でつくる「火災予防分野における点検技術評価会議」で評価しました。
その結果をまとめて示したのが、令和6年9月10日の消防予第423号です。
「火災予防分野における技術カタログ」について(通知)(令和6年9月10日付け消防予第423号)
消防庁では、令和5年度に点検に係る新たな代替技術を公募し、学識経験者等で構成された「火災予防分野における点検技術評価会議」において、応募のあった技術の評価を実施しました。今般、当該会議において、従前の点検方法に代替できると認められた技術について、「火災予防分野における技術カタログ」として別紙のとおりとりまとめましたので通知します。
カタログは消防庁のホームページに載せられ、技術の追加など更新があったときは、そのつど周知するとされています。
令和7年7月7日の消防予第294号で第2版が出て、技術が追加されました。

通知が何本も出ていて、どれを見ればよいのか分かりません。

技術の中身はカタログ本体を、位置づけは消防予第423号を見ます。
更新は消防庁のページで確かめましょう。

技術カタログの技術は、点検のどこまでを代えられるのか

壁に取り付けた放送設備の操作部に通信ユニットがつながり、ノートパソコンが横に置かれたイラスト
カタログの掲載技術は、設備点検要領の「新たな点検技術等を用いた点検方法」として位置づけられています。
防火対象物点検と防災管理点検の点検要領では、「判定方法に定める事項を適切に判定できるその他の方法」という言い方です。
いずれも、代えられるのは点検項目の一部に限られます。
「火災予防分野における技術カタログ」 本カタログについて
本カタログに掲載の技術は(中略)「新たな点検技術等を用いた点検方法」、(中略)「判定方法に定める事項を適切に判定できるその他の方法」として位置づけられ、所定の使用方法に適合する形で利用する場合に限り、一定の点検項目において代替することができるものですので、個々の点検事案に適した点検方法を選択するための参考資料として活用してください。
どの項目で代えられるかは、掲載技術ごとの別紙に「技術カタログ運用範囲」として示されています。
たとえば放送設備の技術では、内蔵型の非常電源の電解液の漏れなどの確認について、自動点検を実施した日時と点検結果に不良がないことを確認することで、目視による確認に代えられるとされています。
つまり、点検項目のすべてが機器任せになるわけではありません。
運用範囲の外の項目は、従来どおりの点検方法で確かめます。

カタログに載っていれば、その設備の点検は全部代えられるのですか。

いいえ、運用範囲に示された点検項目だけです。
範囲の外は従来の方法で点検します。

カタログにはどんな技術が載っているのか

受信機の表示灯の前にセンサーを付けてスマートフォンで見る様子と、天井の感知器にドローンで加煙する様子のイラスト
第2版のカタログは、大きく2つに分かれています。
1つ目は、既定の点検方法の代替となる技術で、消防用設備等点検と、防火対象物点検・防災管理点検が入ります。
2つ目は、点検作業等の効率化等に資する技術です。
分類掲載されている技術カタログが示す特徴
代替(消防用設備等点検)放送設備の自動点検機能と遠隔監視自動点検の結果を確認して、一部の点検項目に代える
代替(消防用設備等点検)自動火災報知設備の受信機表示の遠隔確認発報状況の確認や通話試験を、規模によっては1名で行える
代替(消防用設備等点検)スマートフォンで発報を確認する感知器動作点検受信機の発報番号を画面で確認し、感知器動作点検を1名で行える
代替(消防用設備等点検)受信機の表示確認と操作を行う施工・点検ツール受信機の表示をスマートフォンで確認し、遠隔で操作できる
代替(防火対象物点検・防災管理点検)密閉空間の監視システム、リモート点検点検に使う技術として2件が掲載されている
効率化等に資する技術ドローンに搭載できる加煙試験器高所の煙感知器の加煙試験で、点検棒や足場の課題を減らす
自動火災報知設備では、感知器の動作確認の手間を減らす技術が目立ちます。
従来は、感知器を試験する人と、受信機の発報を無線で伝える人の2名以上で行っていました。
スマートフォンで受信機の発報番号を確認できる技術では、1名で感知器動作点検ができるとされています。 一方、ドローンに載せる加煙試験器は、「点検作業等の効率化等に資する技術」の分類です。
長い点検棒や足場が要るという課題を減らす位置づけで、点検要領に記載された点検方法を効率化し、省人化に資するもの。 各技術には掲載期限があります。
第2版では、放送設備の技術が2030年3月31日、自動火災報知設備等の技術と加煙試験器が2031年3月31日までとされています。
最新の掲載状況は、消防庁のページで確かめてください。

どの技術も、どの受信機でも使えるのですか。

技術ごとに対象の機種や適用条件が決まっています。
使う前にカタログで確かめましょう。

技術を使えば点検資格者でなくても点検できるのか

記入欄のない点検票を載せたクリップボードと資格証、タブレットが置かれた机のイラスト
できません。
カタログの留意事項は、技術を使って点検する場合でも、点検項目の最終的な適否は点検者が責任を持って判定すると明記しています。
「火災予防分野における技術カタログ」 第1 掲載技術の利用における留意事項
本カタログに掲載の技術を使用して点検を行う場合でも、点検項目の最終的な適否については、当該技術の使用方法、適用条件等を把握した上で、点検者が責任を持って判定するものであること。なお、各種点検の点検者については、各法令に基づく資格を有するものであること。
消防用設備等の点検では、消防法施行令第36条第2項に規定する防火対象物以外を点検する場合が、この資格の要件から除かれると注記されています。
掲載技術ごとの「資格要否」欄も同じ考え方で、点検資格者による点検が必要な防火対象物には消防設備点検資格者等の資格が必要とされています。 設置工事についても書かれています。
受信機本体の設置工事には、消防設備士甲種第4類が必要と書かれた技術があります。
ドローンの加煙試験器の欄には、必要な人数は2名以上、操縦する人は無人航空機操縦士の資格か、同等以上の社内技術認定を持つ者と書かれています。 さらに、カタログを活用するかどうかは点検者が判断するもので、消防庁が推奨、斡旋するものではないとされています。
掲載内容や機器の仕様に関する苦情や紛争への対応は、技術を応募した者が行い、消防庁は責任を負わない。

機械が異常なしと出したら、それで合格にしてよいのですか。

最終の適否は点検者の判定です。
放送設備の例でも、点検者が点検票の判定結果欄に記入します。

点検で使うときは何を確かめ、点検票にどう書くのか

地下の機械室の廊下に、三脚のスマートフォンと点検棒、感知器、青い延長アンテナが置かれたイラスト
使う前に確かめることは、カタログの「使用方法・適用条件等」の欄にまとまっています。 まず対象の機種と適用条件です。
放送設備の技術は、型式番号まで示された機種が対象で、遠隔監視をするには専用のユニットを接続しておく必要があります。 次に通信環境です。
自動火災報知設備の遠隔点検は携帯回線で接続するため、電波環境の悪い場所では使いにくいとされています。
スマートフォンで発報を確認する技術も、地下や山岳地域は不適で、通信ができない場合は点検者が点検を行うとされています。
受信機の前に最低60cmの設置空間が必要な技術もあります。 判別を点検者に任せる部分もあります。
受信機の地区表示灯に付けるセンサーは、断線を示す点滅と発報を示す点灯を区別できないため、点検者の責任で判別するとされています。 最後に記録の書き方です。
放送設備の例では、点検者が自動試験の結果に異常がなければ点検票の判定結果欄に○、異常があれば×と記載します。
校正の要否も技術ごとに書かれていて、放送設備やスマートフォンでの確認は不要、加煙試験器は10年とされています。 個人情報や事業所のセキュリティなどの法人情報の取扱いは、点検者と点検依頼者の間で適切に処理するとされています。
点検の前に、遠隔で見せてよい範囲を話し合っておくと安心です。 点検票の作り方や報告の期間は点検票と報告期間の記事、点検で使う試験器の校正は試験器の校正周期の記事で整理しています。

電波が入らない機械室では、どうすればよいのですか。

その場合は従来の方法で点検します。
技術を使えるかどうかは、現地の環境で決まります。

よくある質問

Q技術カタログに載っていれば、どの点検項目も代えられますか?
Aいいえ。掲載技術ごとの別紙に示された運用範囲の点検項目だけが対象で、所定の使用方法に適合する形で使う場合に限られます。
Q技術を使った点検では、有資格者でなくてもよいですか?
Aいいえ。最終的な適否は点検者が責任を持って判定し、点検者は各法令に基づく資格を有するものとされています。ただし、消防法施行令第36条第2項に規定する防火対象物以外を点検する場合は、注記で除かれています。
Q技術カタログはいつ更新されますか?
A技術の追加などがあったときに更新され、そのつど周知されます。第1版が令和6年9月10日、第2版が令和7年7月7日です。
Q電波の届かない場所では、どう点検しますか?
A通信ができない場所では、従前のとおり点検者が点検するとされています。地下や山岳地域では、使えない技術もあります。

まとめ

✔技術カタログは、消防予第423号(令和6年9月10日)で示された、点検に使える新技術の一覧
✔載っている技術は、所定の使用方法に適合する形で使う場合に限り、一定の点検項目で従来の方法に代えられる
✔代えられる項目は、掲載技術ごとの別紙の運用範囲で確かめる
✔ドローンの加煙試験器などは、効率化等に資する技術として別の分類になっている
✔最終的な適否は点検者が責任を持って判定し、資格の要件も変わらない
✔使うかどうかは点検者が判断し、消防庁は推奨も斡旋もしない
✔電波が届かないなど使えない環境では、従来の方法で点検する

まず点検で使う設備の機種と現地の電波環境を、カタログと照らして確かめてみます!

その確認から始めれば、使える技術の見極めがしやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第17条の3の3(消防用設備等の点検及び報告)
  • 消防法施行規則第31条の6(消防用設備等の点検及び報告)
  • 消防用設備等の点検要領の全部改正について(平成14年6月11日付け消防予第172号)
  • 設備点検要領、防対点検要領及び防災点検要領の一部改正について(令和5年10月6日付け消防予第568号)
  • 「火災予防分野における技術カタログ」について(令和6年9月10日付け消防予第423号)
  • 「火災予防分野における技術カタログ」の更新について(令和7年7月7日付け消防予第294号)
  • 火災予防分野における技術カタログ(消防庁ホームページ)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。技術カタログは更新されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。

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