変圧器や発電機を置いた電気室は、油を使うのか、火災のときに何で消すのか、が実務で必ず問われる場所です。
床面積が広ければ、原則として、特殊な消火設備が必要になります。
ところが、使う油の種類や、ガスの種類、発電設備の形によっては、扱いが変わる場面があります。
消防の実務書には、こうした電気設備の消火設備と、発電設備の運用を確かめた質疑応答が並んでいます。
この記事では、その中から5つの論点を取り上げ、現行の条文に照らして読みます。どの条件を満たせば扱いが変わるのかを、順に確かめます。
電気室の消火設備は、どんな設備でもいいわけではないんですよね。
はい。
ただし、油の種類や設備の形によって、質疑で扱いが示されています。
発電設備の方も、条件つきの扱いがあるんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当たれるところは、当たって読みます。
- 冷却や絶縁に油類を使わず、不燃性ガスの六ふっ化硫黄だけを使う電気設備は、昭和51年の通知が挙げる「油類を使用せず、可燃性ガスを発生するおそれのないもの」に当たると答えています
- 絶縁油に植物油を使う変圧器は、危険物に当たらず燃焼点が300度を超えるなど六つの要件を満たせば、令第32条を適用して大型消火器を設置してよいと答えています
- 都市ガスを使う既設の発電設備が、平成6年の通知が示した基準に適合していれば、常用防災兼用ガス専燃発電設備として使ってよいと答えています
- 予備燃料を必要としない場合の主燃料の安定供給の評価は防火対象物ごとに行い、ガス導管の評価は製造設備出口バルブから区分バルブまでを原則としています
- 常用防災兼用ガス専燃発電設備では、電源の切替試験に替えて、火災発生に伴う負荷の切替えを確認する試験でよいと答えています
▼

目次
電気室と発電設備の消火は、どの条文にもとづくのか
消防法施行令第13条は、別表第一に掲げる防火対象物のうち、発電機、変圧器その他これらに類する電気設備が設置されている部分で、床面積が200平方メートル以上のものに、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のいずれかを設けるよう定めています。ただし、令第32条は、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の基準によらなくても、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、火災等の災害による被害を最少限度に止められると認めるときは、その節の基準を適用しないと定めています。以下の質疑の多くは、この令第32条の運用にあたります。
発電設備の非常電源としての基準は、消防法施行規則第12条第1項第4号ロの自家発電設備の規定にあります。ここでは、容量、常用電源が停電したときの自動切替え、消防庁長官が定める基準への適合などが求められています。
質疑の回答は、消防庁予防課が都道府県などへ出した通知に収められたものです。通知は、消防組織法にもとづく助言として発出されたもので、質疑にある通知の名前や条番号は、当時のものです。
六ふっ化硫黄を使う電気設備は、油を使う設備と同じ扱いなのか

一方で、冷却や絶縁に油を使わず、不燃性のガスである六ふっ化硫黄だけを使う設備があります。この設備は、油を使う設備と同じに扱うのかが、問われました。
(消防庁の消防用設備等に係る質疑応答・通知)(平成11年2月17日・消防予第36号)
質疑がいう昭和51年の通知は、電気設備が置かれた部分の消火設備を、設備の中身に応じて整理したものです。その通知が、冷却や絶縁の方法で扱いを分けている点を、この回答は前提にしています。
令第13条の条文には、油を使う設備と使わない設備の区別は書かれていません。区別は通知の運用で示されています。通知の中で、その設備にどの消火設備が求められるかは、通知の本文で確かめる必要があります。
油を使わないガスの設備は、区別して扱われるんですね。
はい。
ただし、通知の本文で扱いを確かめてください。
植物油を使う変圧器に、特殊消火設備の代わりに大型消火器を置けるのか

令和5年に消防庁の予防課長が出した通知には、この植物油を使う変圧器について、次の要件を満たすものは、令第32条を適用して、特殊消火設備に代えて大型消火器を設置して差し支えないかを確かめた質疑が収められています。
1 絶縁油として使用する植物油は、消防法第2条第7項に規定する危険物に該当せず、かつ、燃焼点が300度を超えるものであること。
2 変圧器には、電気設備に関する技術基準を定める省令第14条に規定する過電流遮断器及び第44条に規定する自動的に当該変圧器を電路から遮断する装置が施設されていること。
3 変圧器は、耐火構造で区画された室に設けられていること。
4 単器容量が10,000kVA以上の変圧器にあっては、当該変圧器専用の個室に設けられ、当該変圧器と直結される電圧調整器、補償リアクトル、整流器及びユニット受電方式の開閉装置、ケーブルヘッド等の電気設備に関連する機器以外が設置されていないこと。
5 単器容量が2,000kVA以上10,000kVA未満の変圧器にあっては、当該変圧器(変圧器と直結される関連機器を含む。)と他設備との間に、耐火構造の壁(衝立)及び防火戸で遮へいされた区画に設けられていること。
6 変圧器を設ける室には、油の流出を防止する対策及び放圧管からの噴油対策が講じられていること。
(消防庁予防課長通知・令和5年3月30日・消防予第205号)
危険物に当たるかどうかの線引きは、消防法の別表第一が定めています。動植物油類は、動物の脂肉等又は植物の種子若しくは果肉から抽出したもので、一気圧における引火点が250度未満のものを指します。要件1は、これに当たらないことに加えて、燃焼点が300度を超えることも求めています。引火点と燃焼点は別の温度なので、製品の仕様書で、どの温度が書かれているかを確かめる必要があります。
要件2にある省令の条文は、現行では、第14条が電路に過電流遮断器を施設することを、第44条が発電機や特別高圧の変圧器に異常があったとき自動的に遮断することなどを、それぞれ定めています。
これは、令第32条で個別に認める扱いです。消防長又は消防署長の判断になるので、計画の段階で、所轄の消防署に確かめておく必要があります。
植物油なら、特殊消火設備でなくてもいいということですか。
六つの要件を満たせば、そうです。
個別の判断になる点に注意してください。
既設のガス専燃発電設備は、常用防災兼用として使い続けられるのか

この設備の運用は、平成6年に消防庁の予防課長が出した通知で示されています。質疑は、その通知が示す基準ができる前に設けられた既設の発電設備を、そのまま使えるかを確かめたものです。
(消防庁の消防用設備等に係る質疑応答・通知)(消防庁の質疑応答・問11)
現行の規則第12条第1項第4号ロは、自家発電設備の基準として、容量が屋内消火栓設備を有効に30分間以上作動できること、常用電源が停電したとき自動的に切り替わること、消防庁長官が定める基準に適合することなどを定めています。この質疑にある「常用防災兼用ガス専燃発電設備」という言葉は、その規則の条文ではなく、消防庁の通知で運用が示されています。
適合性の判断に、民間の協会の認定制度を活用するよう答えている点も、実務では確かめておく必要があります。
既設でも、基準に合っていれば使えるんですね。
はい。
適合しているかどうかは、認定制度を活用して確かめます。
予備燃料のないガス専燃発電設備は、燃料の安定供給をどう確かめるのか

質疑は、その評価を、誰が、どこまで、どのように行うのかを、3つの問で確かめています。
(消防庁の消防用設備等に係る質疑応答・通知)(消防庁の質疑応答・問12から問14)
評価が見る項目は、ガス導管の耐震対策、ガス遮断装置の設置位置、緊急ガス遮断装置の設置位置、供内管の耐震対策といった、地震などでガスが止まらないかにかかわるものです。同じガス会社の同じ地域でも、建物ごとに導管の引き方が違うので、申請は建物ごとになる、と読めます。
質疑にある評価委員会や協会は、当時の名前です。実際に申請するときは、所轄の消防署に、現在の窓口を確かめてください。
評価の申請は、建物ごとにやるんですね。
はい。
見る範囲は、製造設備出口バルブから区分バルブまでが原則です。
常用防災兼用のガス専燃発電設備は、電源の切替試験をどう行うのか

ところが、常用防災兼用の設備は、平常時にも発電している設備です。停電して切り替わる、という一般の自家発電設備の動きとは、仕組みが違います。質疑は、この違いを踏まえた試験の扱いを確かめました。
(消防庁の消防用設備等に係る質疑応答・通知)(消防庁の質疑応答・問15)
現行の規則第12条第1項第4号ロ(ロ)は、常用電源が停電したときに、自動的に非常電源へ切り替わることを求めています。常用防災兼用の設備は、平常時も発電しているので、この切替えの試験だけでは、防災の機能を確かめきれません。回答は、その代わりに、火災が発生したときに負荷を切り替える動きを確認するよう求めたものと読めます。
試験の具体的な方法は、通知が示す技術指針の中身によります。設置の形態ごとに違うので、試験の前に、所轄の消防署と、試験の内容を確かめておく必要があります。
普通の切替試験とは、確かめる中身が違うんですね。
はい。
確かめるのは、火災のときの負荷の切替えです。
よくある質問
まとめ
電気室にも、条件つきの扱いが意外と多いんですね。
条件を確かめて、進めてみます!
進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第2条第7項・別表第一
- 消防法施行令第13条・第32条
- 消防法施行規則第12条
- 電気設備に関する技術基準を定める省令第14条・第44条
- 消防庁の消防用設備等に係る質疑応答(予防行政の通知)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。





