連結散水設備は、地階の天井に散水ヘッドを並べ、消防ポンプ自動車が外の送水口から水を送る設備です。
国の基準にも、散水ヘッドを付けなくてよい部分や、別の設備があれば設置しなくてよい部分の定めがあります。
大阪市の運用基準はこれに加えて、令第32条を使って連結散水設備を設置しないことができる7つの場合を並べています。
そのうち2つは、屋内消火栓設備とスプリンクラー設備の節の特例を借りた書き方です。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、借りている先まで順にたどります。
大阪市で地下1階が広い建物を計画していて、連結散水設備が必要と言われました。
地下駅のコンコースや金庫室まで全部にヘッドがいるのでしょうか。
大阪市の運用基準には、設置しないことができる場合が7つ並んでいます。
金庫室は、スプリンクラーの節を借りて読む項目です。
連結散水設備の節だけ読んでも分からないのですね。
はい、借りている先の条件まで読むのがこつです。
国の基準から順に見ていきましょう。
- 国の基準(消防法施行令第28条の2)は、地階の床面積の合計700平方メートル以上の建物に連結散水設備を求め、スプリンクラー設備等の有効範囲内や、連結送水管と排煙設備がそろった部分を外せるとしています
- 大阪市の運用基準 第12 特例基準は、令第32条を適用して連結散水設備を設置しないことができる7つの場合を挙げています(駅の乗降場・コンコース、開放廊下や手術室など、開口部のある地階、駐車場への傾斜路、特別避難階段の階段室など)
- そのうち1は屋内消火栓設備の特例(不燃物だけの倉庫やガス系消火設備の有効範囲など)、7はスプリンクラー設備の特例(金庫室・冷蔵室・可動式ブース)を借りています
- 大阪市の第9は、建築基準法の排煙設備を、消防法施行規則第30条の2の2第1号の排煙設備とみなすとしています(連結送水管とあわせて使う国の免除の読み方)
- 堺市の審査基準も特例適用基準を置いていますが、ドライエリアの4条件や階段室の条件など、書き方と条件が大阪市と違います。東大阪市の公開資料には連結散水設備の基準がありません
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目次
国の基準では連結散水設備をどこで省けるのか

連結散水設備を付ける建物は、消防法施行令第28条の2第1項が決めています。
国の基準の中にも、連結散水設備を外せる道が3つあります。
1つめは、散水ヘッドを付ける部分そのものから除かれる場所です。
一 特定主要構造部を耐火構造とした防火対象物のうち、耐火構造の壁若しくは床又は自動閉鎖の防火戸で区画された部分で、当該部分の床面積が五十平方メートル以下のもの
二 浴室、便所その他これらに類する場所
三 特定主要構造部を耐火構造とした防火対象物のうち、耐火構造の壁若しくは床又は自動閉鎖の特定防火設備である防火戸で区画された部分で、エレベーターの機械室、機械換気設備の機械室その他これらに類する室又は通信機器室、電子計算機器室その他これらに類する室の用途に供されるもの
四 発電機、変圧器その他これらに類する電気設備が設置されている場所
五 エレベーターの昇降路、リネンシユート、パイプダクトその他これらに類する部分
一 排煙設備を令第二十八条に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置した部分
二 第二十九条の規定に適合する部分
消防長または消防署長が、位置・構造・設備の状況から判断して認めたときに、基準によらないことができる規定です。
国の免除の組み合わせは連結散水設備はどんな設備があれば免除できるのかで、国の過去の質疑は連結散水設備を省略できる部分はどこかで詳しく取り上げています。
国の基準にも、外せる場所がいくつも書いてあるのですね。
はい、そのうえで大阪市は令第32条の使いどころを運用基準に並べています。
次はその一覧です。
大阪市の特例基準は連結散水設備をどこで省けるとしているのか

最後の第12が特例基準です。
1 屋内消火栓設備の基準(第12.1((6)を除く。)又は7)に適合するもの
2 令別表第1(10)項に掲げる防火対象物又はその部分で、特定主要構造部を耐火構造とし、かつ、天井及び壁の室内に面する部分の仕上げを難燃材料とした乗降場、コンコース、通路及び売店(移動可能なもので、出火のおそれが少ないと認められるものに限る。)
3 規則第13条第3項第6号から第8号までに掲げる場所
4 規則第5条の5に定める開口部を有する地階
5 地階の駐車場にいたる傾斜路(スロープ)で、不燃材料で造られ、かつ、屋内消火栓設備又は補助散水栓の有効範囲内となるもの
6 特別避難階段の階段室
7 閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備の基準(第14.2、4又は15)に該当するもの
ただし柱書に「令第32条の規定を適用し」とあるとおり、当てはまれば自動的に外れるのではなく、所轄が個別に認める特例です。
2から6は、この節の中で条件が完結しています。
| 番号 | 設置しないことができる場所 | 大阪市が付けている条件 |
|---|---|---|
| 2 | 駅など(令別表第1(10)項)の乗降場・コンコース・通路・売店 | 特定主要構造部が耐火構造で、天井と壁の仕上げが難燃材料。売店は移動可能で出火のおそれが少ないものに限る |
| 3 | 開放廊下など外気が流通する場所、手術室など、レントゲン室など | 消防法施行規則第13条第3項第6号〜第8号の場所(スプリンクラーヘッドが要らない場所の一部) |
| 4 | 開口部のある地階 | 消防法施行規則第5条の5の開口部を有すること |
| 5 | 地階の駐車場へ下りる傾斜路(スロープ) | 不燃材料で造られ、屋内消火栓設備か補助散水栓の有効範囲内であること |
| 6 | 特別避難階段の階段室 | この節には追加の条件が書かれていない |
七 手術室、分娩室、内視鏡検査室、人工血液透析室、麻酔室、重症患者集中治療看護室その他これらに類する室
八 レントゲン室等放射線源を使用し、貯蔵し、又は廃棄する室
開口部の位置や外からの近づき方をどう見るかは、計画の段階で所轄の消防署と確かめてください。
6の特別避難階段の階段室も、階段室の扱いは国の質疑でも問われてきた論点なので、早めの協議が確実です。
駅のコンコースや開口部のある地階は、連結散水設備の節だけで条件が分かるのですね。
はい、2から6はこの節で読めます。
残る1と7は別の節を開かないと中身が分かりません。
屋内消火栓とスプリンクラーの特例を借りる1と7は何を指すのか

借りるのは1(ただし(6)を除く)と7です。
(1) 倉庫等で、不燃性の物品のみを収納するもの
(2) 浄水場又は汚水処理場等で、内部の設備が水管、貯水池又は貯水槽のみであるもの
(3) サイダー・ジュース工場その他これらに類するもの
(4) 不燃性の金属、石材等の加工工場で、可燃性の物品を収容又は取り扱わないもの
(5) プール又はスケートリンク(滑走部分に限る。)
なお、発電機や変圧器などの電気設備がある場所は、国の施行規則第30条の2第4号でもともと散水ヘッドを設ける部分から除かれています。
不燃物だけを扱う倉庫の考え方は、大阪市で金属だけの倉庫なら自動火災報知設備はいらないのかでも同じ特例を取り上げています。
7は、スプリンクラー設備の節の第14 特例基準のうち、2・4・15を借りています。
(1) 不燃材料の壁、床及び扉で区画された床面積が100平方メートル以下のもので次に適合するもの
(2) 耐火構造又は準耐火構造の壁、床及び特定防火設備である防火戸で区画されたもので次に適合するもの
中身を表にまとめると次のとおりです。
| 借りる先 | 対象 | 主な条件 |
|---|---|---|
| スプリンクラー 第14 2 | 金庫室等 | 耐火構造の壁・床、特定防火設備である防火戸などで区画 |
| スプリンクラー 第14 4(1) | 冷蔵室・冷凍室 | 不燃材料の壁・床・扉で区画した100平方メートル以下。収容物が不燃性の物品や生鮮食品等、温度異常を防災センター等に表示・警報 |
| スプリンクラー 第14 4(2) | 冷蔵室・冷凍室 | 耐火構造か準耐火構造の壁・床と特定防火設備で区画。火気使用がない、断熱材が不燃材料かコンクリート・モルタル(2センチメートル以上)等で覆う |
| スプリンクラー 第14 15 | 可動式ブース | (1)床面積6平方メートル以下・天井と壁を不燃材料で仕上げ・住宅用下方放出型自動消火装置などの条件、または(2)消火実験等と第三者機関の検証 |
1と7の読み方を、手順にすると次のとおりです。
- 連結散水設備の第12を開き、1は屋内消火栓設備、7はスプリンクラー設備の節を指していることを確かめます
- 屋内消火栓設備の第12 1を開き、(1)〜(5)の5つと柱書の条件(不燃材料で造られ、出火の危険がないなど)を両方満たすかを見ます。(6)は使えません
- 屋内消火栓設備の第12 7を開き、評価を受けた不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備の有効範囲内かを見ます
- スプリンクラー設備の第14 2・4・15を開き、金庫室等・冷蔵室等・可動式ブースの条件を1つずつ確かめます
- 当てはまりそうなら、令第32条の適用として所轄の消防署と協議します
連結散水設備の特例なのに、屋内消火栓やスプリンクラーの条件で決まるのですね。
はい、借りている番号まで正確に読むことが大切です。
次は排煙設備の扱いです。
建築基準法の排煙設備でも連結散水設備を省けるのか

大阪市は、建築基準法に適合する排煙設備でも、この排煙設備として扱うと書いています。
ここで大事なのは、第30条の2の2が令第28条の2第4項の「連結送水管を設置したとき」の続きだという点です。
連鎖を順に並べると次のとおりです。
- 消防法施行令第28条の2第1項が、地階の床面積の合計700平方メートル以上の建物に連結散水設備を求めます
- 同条第4項が、連結送水管を令第29条の基準どおり設けたとき、総務省令で定める部分には連結散水設備を設置しないことができるとします
- 消防法施行規則第30条の2の2第1号が、その部分を排煙設備を令第28条の基準どおり設けた部分と定めます
- 大阪市の第9が、建築基準法に適合する排煙設備を設けた部分を、第1号の排煙設備が設けられたものとみなして扱います
排煙設備だけでは足りず、連結送水管が前提です。
見出しの◆は、大阪市の凡例で「行政手続法上の行政指導に該当する事項(行政指導基準)」とされています。
消防法と建築基準法の排煙設備の違いは排煙設備は消防隊のための設備なのか、大阪市の連結送水管の特例は大阪市で連結送水管を設置しないことができる建物はどれかで解説しています。
排煙設備があっても、連結送水管がない地階では使えないのですね。
はい、連結送水管と排煙設備のセットで読む規定です。
最後に堺市と比べましょう。
堺市や東大阪市は連結散水設備の特例をどう書いているのか

そのため、比べられるのは大阪市と堺市です。
堺市消防局の審査基準は、第21の5に特例適用基準を置いています。
(1)はドライエリアに面した地階の4つの条件で、鈴鹿市で地階の連結散水設備はドライエリアがあれば省けるのかで詳しく比べています。
(2)は、散水ヘッドを設けないことができる部分です。
ア 天井及び壁の仕上げが下地を含め不燃材料で造られ、かつ、可燃性の物品等が置かれていない次の部分
(ア) 政令別表第1(10)項に掲げる防火対象物のプラットホーム、コンコースその他これらに類する部分
この場合、当該部分には連結送水管の放水口を設置すること。
エ 階段室
この場合、地階に政令第12条の技術上の基準に従ってスプリンクラー設備が設置されていること。
(2)ウは、スプリンクラー設備の節(第4 Ⅱ.1.(3).イ)を借りています。
(ア) 金庫室で、当該室内の可燃物品がキャビネット等に格納されており、かつ、金庫室の開口部に特定防火設備又はこれと同等以上のものを設けてある場合
(イ) 不燃材料で造られた冷凍室又は冷蔵室で、自動温度調節装置が設けられ、かつ、守衛室等常時人のいる場所に警報が発せられる場合
違いを表にまとめます。
| 項目 | 大阪市(第12・第9) | 堺市(第21 5) |
|---|---|---|
| 駅のホーム・コンコース | 特定主要構造部が耐火構造、天井と壁が難燃材料仕上げ(売店も対象) | 天井と壁が下地を含め不燃材料、可燃物なし、連結送水管の放水口を設置 |
| 階段室 | 特別避難階段の階段室(追加の条件の記載なし) | 階段室。地階にスプリンクラー設備があること(◆③) |
| 手術室・レントゲン室など | 施行規則第13条第3項第6号〜第8号の場所 | 第7号・第8号の室を耐火構造の柱・壁・床や防火設備等で区画した場合 |
| 金庫室・冷蔵室 | スプリンクラー 第14 2・4を借りる(区画・面積・警報など) | スプリンクラー Ⅱ1(3)イを借りる(可燃物の格納、自動温度調節と警報など) |
| 開口部のある地階 | 施行規則第5条の5の開口部(細目の記載なし) | ドライエリアの幅2.5メートル以上など4条件(5(1)) |
| 不燃物だけの倉庫など | 屋内消火栓 第12 1を借りる | 第21の5には項目なし |
| 駐車場への傾斜路 | 不燃材料で、屋内消火栓か補助散水栓の有効範囲内 | 第21の5には項目なし |
| 建築基準法の排煙設備 | 連結送水管とあわせて第30条の2の2第1号の排煙設備とみなす(第9◆) | 第21には項目なし |
階段室も、大阪市は特別避難階段に限って書き、堺市は地階のスプリンクラー設備を条件にしています。
建物のある市の基準で、どの項目に当たるか、借りている先の条件まで満たすかを確かめてください。
閉鎖型ヘッドを使う場合のポンプと水源は、大阪市で閉鎖型ヘッドの連結散水設備にポンプと水源はいるのかで比べています。
同じ「特例」でも、大阪市と堺市で条件の付け方がずいぶん違いますね。
はい、項目名が同じでも条件が違うことがあります。
市の基準の本文まで確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず地階の図面で、駅のコンコースや金庫室、階段室など外したい部分に印を付けます。
借りている節の条件まで読んで、協議の資料にします!
大阪市と堺市のどちらの基準で審査されるかで、外せる条件が変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第5章 第2節 連結散水設備 第9 排煙設備に係る取り扱い・第12 特例基準、第1章 第2節 屋内消火栓設備 第12 特例基準 1・7、第1章 第3節 閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備 第14 特例基準 2・4・15、凡例 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第21 連結散水設備 Ⅱ 5 特例適用基準、第4 スプリンクラー設備 Ⅱ 1(3)イ、第1章 総則 4 凡例 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第28条の2、第32条
- 消防法施行規則 第5条の5、第13条第3項、第30条の2、第30条の2の2
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





