11階建て以上のマンションなどの特定共同住宅等では、通常の自動火災報知設備に代えて共同住宅用自動火災報知設備を設けることができます。その受信機のうち、共用部分の感知器や各住戸の受信機からの信号をまとめて受けるのが住棟受信機です。
国の告示は住棟受信機を棟ごとに設けるとしつつ、同じ敷地に複数の棟があって「円滑な対応ができる場合」は例外としています。大阪市消防局の運用基準は、この例外を自動火災報知設備の基準の別の項目を借りて具体的にしています。
この記事では、国の告示が決めていることと大阪市の運用基準が補っていることを分けて、借りている項目を番号つきの手順でたどります。堺市と東大阪市の公開資料とも比べます。
大阪市で3棟のマンションを同じ敷地に計画しています。
住棟受信機は1か所にまとめられますか?
国の告示には円滑な対応ができる場合の例外があります。
大阪市はその中身を具体的にしています。
防災センターに並べて置けば足りますか?
それだけでは足りません。
副受信機と通話できる設備まで見ていきましょう。
- 国の告示第18号は、住棟受信機を特定共同住宅等の棟ごとに設けるとし、同じ敷地に2以上あって火災発生時に円滑な対応ができる場合は例外としています
- 大阪市の運用基準は、その場合を防災センター等で一括して監視し、迅速に対応する体制がある場合等とし、自動火災報知設備の基準の第3 8(1)を準用しています
- 準用先では、受信機を置かない棟に副受信機を設け、受信機と副受信機を相互に通話できる設備で結び、受信機で警戒する棟を明確に表示します
- 通話できる設備は、インターホン・非常電話・T型発信機・非常用の割り込みができる構内電話などで、停電時にも使えるものです
- 堺市も副受信機と同時通話装置を求めています。東大阪市の公開資料に特定共同住宅等の基準はなく、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認します
▼

目次
国の告示は住棟受信機を棟ごとに求めているのか

(一) 共同住宅用受信機から発せられた火災信号を受信した場合に、当該共同住宅用受信機の警戒区域の火災表示を行うこと。
(二) 規則第十二条第一項第八号に規定する防災センター等がない場合は、管理人室に設けること。ただし、当該管理人室に常時人がいない場合は、火災表示を容易に確認できる場所に設けることができる。
(三) 特定共同住宅等の棟ごとに設けること。ただし、同一敷地内に特定共同住宅等が二以上ある場合で、当該特定共同住宅等の火災発生時に、円滑な対応ができる場合はこの限りでない。
- 住棟受信機は、特定共同住宅等の棟ごとに設けるのが原則(第6号(3)本文)
- 同じ敷地に特定共同住宅等が2以上あり、火災発生時に円滑な対応ができる場合は、棟ごとでなくてよい(同ただし書)
- 住棟受信機には、一般の受信機を決めた消防法施行規則第24条第2号の例が当てはまる。除かれているのはハとリだけで、2以上の受信機の間の通話設備を決めたトは除かれていない(第6号柱書)
国の告示では、まとめてよい条件が「円滑な対応」としか書かれていないのですね。
はい、具体的な中身は告示の外にあります。
次は大阪市の運用基準です。
大阪市の運用基準は円滑な対応ができる場合をどう書いているのか

- 告示第18号第3第6号(3)ただし書が、円滑な対応ができる場合は棟ごとでなくてよいとする
- 大阪市の第6 7が、その場合を防災センター等での一括監視と迅速な対応の体制がある場合等と読む
- 同じ第6 7が、自動火災報知設備の基準の第3 8(1)を準用する。第6の柱書も「自動火災報知設備の基準の例による」としている
- 準用先の第3 8(1)が、副受信機・通話できる設備・警戒する棟の表示を求める(次の見出し)
- 第3 8(1)イの「7の例により」で、同じ第3の7が決める通話設備の種類と機能にたどり着く(その次の見出し)
国の言い回しに、大阪市は準用の一文を足しているのですね。
はい、準用先を読まないと条件が分かりません。
次は第3 8を開きます。
準用先の自動火災報知設備の基準は何をそろえるよう求めているのか

(1) 同一敷地内に2以上の棟がある場合で次に適合するよう措置されているときは、各棟の受信機を、当該敷地内で火災対応を速やかに行うことができる棟に集中して設置することができる(図2-1-2)。
ア 各棟には副受信機を設置すること(受信機を設置する棟を除く。)。ただし、無人の棟等で次に適合する場合は設置しないことができる。
(ア) 火災発生位置が、現場で容易に確認できる状況であること
(イ) 副受信機を設けない棟には、当該棟の見やすい位置に受信機の設置場所を掲示すること
イ 受信機と副受信機の間に、7の例により相互に通話できる設備を設置すること
ウ 受信機においては、当該受信機により警戒する棟が明確に表示されていること
- 住棟受信機を置かない棟に副受信機を置く。無人の棟等で、火災の位置が現場で容易に分かり、受信機の設置場所を見やすい位置に掲示すれば省ける(ア)
- 住棟受信機と副受信機の間を相互に通話できる設備で結ぶ(イ)
- 住棟受信機の側で、どの棟を警戒しているかを明確に表示する(ウ)
受信機を集めた棟以外にも、副受信機が要るのですね。
はい、どの棟にも火災を知らせるためです。
次は通話設備の中身です。
受信機と副受信機を結ぶ通話できる設備とは何か

(1) 機器は、次のいずれかであること
ア インターホン
イ 非常電話
ウ T型発信機
エ 構内電話で非常用の割り込みができる機能を有するもの又はこれと同等のもの
(2) 次の機能を有すること
ア 1の送受機を取り上げる方式又は選局スイッチを操作する方式等簡易な方法により、自動的に他の機器への発信が可能なものであること
イ 1の送受機の発信により、他方の機器への呼出し音が鳴動すること。なお、表示装置が設けられているものは、当該表示が有効に点灯するものであること
ウ 常用電源の停電時にも使用できるものであること。ただし、乾電池式のインターホンにあっては、電池交換の表示又は警報がでるものに限る。
(3) 受信機の付近で容易に操作できる位置に設けること
機器と機能をまとめると、次のとおりです。
- 機器は、インターホン・非常電話・T型発信機・非常用の割り込みができる構内電話(これと同等のものを含む)のいずれか
- 送受機を取り上げるなどの簡単な操作で相手に発信でき、相手側で呼出し音が鳴る
- 停電時にも使える。乾電池式のインターホンは、電池交換の表示か警報が出るものに限る
- 受信機の付近の操作しやすい位置に設ける
普通の内線電話だと、割り込みの機能がないと使えないのですね。
はい、非常用の割り込みが条件です。
最後に堺市・東大阪市と比べます。
堺市と東大阪市の基準と比べると何が違うのか

(1) 第3章 第1節 第12 自動火災報知設備Ⅱ.1を準用すること。
(2) 18 号告示第3 第6 号に規定する「同一敷地内に特定共同住宅等が2以上ある場合で、当該特定共同住宅等の火災発生時に、円滑な対応ができる場合」とは、同一敷地内に存する複数の特定共同住宅等を防災センター等において一括で監視しており、火災発生時に迅速な対応を講ずる体制が構築されている場合で、受信機を設置しない建築物には副受信機(表示盤)及び同時通話装置を設けた場合をいうこと。◆②
(3) 常時人がいない管理人室に住棟受信機を設置する場合、火災時に管理人室の出入口が自動的に解錠される等の措置を講ずること。◆②
ただし、同一室内に2以上の受信機が設けられている場合は、同時通話装置を設けないことができる。◆①
(ア) 発信機(P型1級、T型)
(イ) 非常電話
(ウ) インターホン
(エ) 構内電話で緊急割込の機能を有するもの
キ 一の建築物は、当該建築物に設置される受信機で監視するものであること。ただし、同一敷地内に自動火災報知設備が設置される建築物が2棟以上ある場合で、次のすべてに該当する場合は政令第32 条又は条例第72 条の規定を適用し、各棟を監視する各受信機を同一敷地内の一箇所の火災受信場所に集中して設けることができる。(第12-5図参照)
(ア) 防災センター、守衛所等の集中的な管理ができる火災受信場所があること。
(イ) 受信機を設置しない建築物(無人となる建築物は除く。)には副受信機(表示盤)及び同時通話装置を設けること。
キ 1棟の防火対象物は、原則として当該棟に設置する受信機で監視すること。ただし、次のいずれかに適合する場合は、1の受信機で当該敷地内の棟を管理することができる。●
(略)
b 受信機を設置しない棟(無人(管理人等を常駐させないことをいう。以下同じ。)の棟を除く。)には、副受信機及び同時通話装置を設けること。
| 項目 | 国(告示第18号) | 大阪市 | 堺市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|---|
| 住棟受信機をまとめる条件 | 同一敷地に2以上で円滑な対応ができる場合 | 防災センター等で一括監視+迅速な対応の体制(第6 7) | 同じ+副受信機と同時通話装置(7(2)◆) | 特定共同住宅等の基準なし |
| 受信機を置かない棟 | 定めなし | 副受信機。無人の棟等は条件付きで省略可(第3 8(1)ア◆) | 副受信機(表示盤)。自火報のキは無人の建築物を除く | 一般の自火報で副受信機(キ b・無人の棟を除く●) |
| 通話設備の機器 | 規則第24条第2号トの例 | インターホン・非常電話・T型発信機・割り込みできる構内電話 | P型1級発信機も含む。同一室内なら不要(カ◆) | インターホン・非常電話・T型発信機・割り込みできる構内電話(オ▲) |
| 通話設備の機能 | 定めなし | 簡易発信・呼出し音・停電時も使用・受信機付近(第3 7(2)(3)) | カに機能の定めなし | オに機能の定めなし |
| 警戒する棟の表示 | 定めなし | 受信機で明確に表示(ウ) | 7(2)・キに記載なし | カ・キに記載なし |
| 管理人室 | 防災センター等がなければ管理人室(第6号(2)) | 管理人室の感知器を直結するなら区分して表示(第6 5) | 常時人がいなければ出入口の自動解錠等(7(3)◆) | — |
- 住棟受信機を集める棟に、防災センター等の一括監視と迅速な対応の体制があるか
- 住棟受信機を置かない棟に副受信機を置くか。無人の棟等で省くなら、火災の位置の確認と受信機の設置場所の掲示ができるか
- 住棟受信機と副受信機を結ぶ通話設備の機器と、停電時の使用を確かめたか
- 住棟受信機で警戒する棟が明確に分かる表示になっているか
大阪市は準用で、堺市は一文で、ほぼ同じことを求めているのですね。
はい、通話設備の機器と機能に違いがあります。
設計の段階で消防署に確認しましょう。
よくある質問
まとめ
まず住棟受信機を集める棟と副受信機の配置を決めます。
そのうえで消防署に相談します!
大阪市は準用先の通話設備も要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第8章 第7節 特定共同住宅等 第6 共同住宅用自動火災報知設備 柱書・5・7/第2章 第1節 自動火災報知設備 第1 16・第3 受信機 7・8(図2-1-2) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」特定共同住宅等 Ⅵ 共同住宅用自動火災報知設備 7 住棟受信機/第3章 第1節 第12 自動火災報知設備 Ⅱ 1(3)カ・キ(第12-5図) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」Ⅱ 細目 1 受信機 (2)設置方法 オ・カ・キ(公開PDFに特定共同住宅等の基準なし) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第3条第3項第3号(e-Gov法令検索)
- 共同住宅用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準(平成18年消防庁告示第18号)第3第6号(消防庁)
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条第2号(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。





