特定共同住宅等のマンションでは、自動火災報知設備の代わりに住戸用自動火災報知設備と共同住宅用非常警報設備を組み合わせて設けることができます。
内廊下や倉庫の感知器をどの受信機につなぐか、共用部分に一般の自動火災報知設備を付けたら非常警報設備を省けるのかは、国の質疑応答で「差し支えない」とされています。大阪市消防局の運用基準は、そこに火災表示灯・音響警報装置・鳴動方式・位置表示灯の電源という条件を書き足しています。
この記事では、国の法令が決めていることと大阪市の運用を分けて、借りている規定を番号つきの手順でたどります。堺市の審査基準とも並べて比べます。
大阪市で内廊下のマンションを計画しています。
共用部分は普通の自動火災報知設備にしたいのですが、できますか?
大阪市の運用基準は防災センター等の受信機につないでよいとしています。
ただし条件が付いています。
そうすると、非常警報設備も付けなくてよいのですか?
発信機・地区音響装置・位置表示灯までそろえれば省けます。
順にたどっていきましょう。
- 国の告示(平成18年消防庁告示第19号)は、住戸用自動火災報知設備の感知器を住戸用受信機に接続すると決めています
- 大阪市の運用基準は、外気に開放されていない共用部分や倉庫・機械室などの感知器を、防災センター等に置いた一般の自動火災報知設備の受信機につないでよいとしています
- その場合、住戸等ごとの火災表示灯、階ごとに水平距離25メートル以下の音響警報装置、消防法施行規則第24条の例による鳴動方式が条件です
- 住戸等に住戸用自動火災報知設備、共用部分に発信機・地区音響装置・位置表示灯までそろえた自動火災報知設備を付ければ、共同住宅用非常警報設備を設けないことができます。位置表示灯の非常電源は不要としています
- 堺市も同じ2つの扱いを定めていますが、書き方が違います。東大阪市の公開資料には特定共同住宅等の基準がなく、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認します
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目次
国の基準は住戸用自動火災報知設備の感知器をどこにつなぐと決めているのか

共住省令は、言葉の意味を次のように決めています。
四 共用部分 特定共同住宅等の廊下、階段、エレベーターホール、エントランスホール、駐車場その他これらに類する特定共同住宅等の部分であって、住戸等以外の部分をいう。
(略)
ホ 共同住宅用非常警報設備は、直接外気に開放されていない共用部分以外の共用部分に設置することができること。
ヘ イからホまでに規定するもののほか、住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備は、消防庁長官が定める設置及び維持に関する技術上の基準に適合するものであること。
- 住戸用自動火災報知設備は、住戸等と共用部分の両方に設ける(共住省令第3条第3項第4号イ)
- 共同住宅用非常警報設備は、外気に開放されていない共用部分には設けられない(同号ホ)
- 感知器は、住戸用受信機に接続する(告示第19号第三第二号(三))
国の告示では、感知器は住戸用受信機につなぐのが原則なのですね。
はい、一般の受信機につなぐのは例外です。
次は大阪市の運用基準です。
大阪市は共用部分の感知器を一般の受信機につなぐ条件をどう書いているのか

つなぎ先は、防災センター等に置いた令第21条の自動火災報知設備の受信機です。住戸の中の感知器は、これまでどおり住戸用受信機につなぎます。
大阪市の運用基準では、第7の5と7には◆(行政指導基準の印)が付いていません。
住戸の中の感知器は、一般の受信機につながないのですね。
はい、対象は共用部分と倉庫・機械室などです。
次は付いてくる条件を見ます。
大阪市は火災表示灯と音響警報装置をどう置くよう求めているのか

(2) 直接外気に開放されていない共用部分については、階ごとに、当該共用部分の各部分から1の音響警報装置までの水平距離が25メートル以下となるように設置すること。ただし、当該共用部分で共同住宅用非常警報設備の音響装置の有効範囲にある部分については、音響警報装置を設けないことができる。
(3) (2)により、音響警報装置を設ける場合の鳴動方式については、規則第24条第1項第5号ハ又は同項第5号の2ロの規定の例によること
- 第7の5(1)が、倉庫や機械室など住戸等ごとに火災表示灯を求める。受信機で住戸等ごとに出火室が分かれば不要
- 第7の5(2)が、内廊下など階ごとに各部分から水平距離25メートル以下に音響警報装置を求める。共同住宅用非常警報設備の音響装置が届く範囲は不要
- 第7の5(3)が、(2)の音響警報装置の鳴動方式を規則第24条の第5号ハ又は第5号の2ロの例によるとする
- その規則が、地階を除く階数が5以上で延べ面積が3000平方メートルを超える建物の鳴らし方を決めている(次の引用)
25メートルは、一般の自動火災報知設備の地区音響装置(規則第24条第5号ニ)と同じ数字です。規模の小さい建物で(3)をどう当てはめるかは書かれていないので、計画の段階で管轄の消防署に確認しておくと安心です。
倉庫ごとに表示灯を付けるか、受信機で部屋ごとに分けるかを選ぶのですね。
はい、出火室が受信機で分かれば表示灯は不要です。
次は非常警報設備の省略です。
大阪市は共用部分に自動火災報知設備があれば非常警報設備を省けるとしているのか

(略)
二 起動装置は、規則第二十五条の二第二項第二号の二(イを除く。)の規定によるほか、各階ごとに、階段付近に設けること。
(略)
五 非常電源は、規則第二十五条の二第二項第五号の規定の例によること。
- 住戸・共用室・管理人室に住戸用自動火災報知設備を設ける
- 共用部分に令第21条の自動火災報知設備を設け、発信機・地区音響装置・位置表示灯をそろえる
- すると、共同住宅用非常警報設備を設置しないことができる(第7 7)
- このときの鳴動方式は、第7の5(3)の例による
- 5(3)から、規則第24条第5号ハ又は第5号の2ロの例にたどり着く(前の見出し)
音響装置の置き方の国の基準は音響装置の置き方の記事で、鳴らし方は鳴動方式の記事で解説しています。
位置表示灯の非常電源まで書いてあるのは、細かいですね。
はい、大阪市の運用基準に書かれた一文です。
次は堺市と比べます。
堺市や東大阪市では共用部分の感知器と非常警報設備をどう扱うのか

(3) ★ : 指導基準のうち、堺市消防局として防火安全性の向上を図ることを目的として定めたもの
| 項目 | 国(共住省令・告示第19号) | 大阪市(第7 5・7) | 堺市(Ⅶ 9・10) |
|---|---|---|---|
| 共用部分等の感知器 | 住戸用受信機に接続(第三第二号(三)) | 防災センター等の令第21条の受信機に接続してよい | 防災センター等又は管理人室等の受信機に接続できる(10(2)◆) |
| 火災表示灯 | 定めなし | 住戸等ごと。受信機で出火室が分かれば不要(5(1)) | 同じ項目の定めは見当たらない |
| 音響警報装置 | 定めなし | 階ごとに水平距離25メートル以下(5(2)) | 同じ項目の定めは見当たらない |
| 非常警報設備の省略 | 定めなし | 発信機・地区音響装置・位置表示灯で省略可(7) | 発信機・地区音響装置・表示灯を告示第4に準じて設置で省略可(9(2)★) |
| 鳴動方式・電源 | 規則第25条の2第2項第5号の例の非常電源(第四第五号) | 鳴動は5(3)の例。位置表示灯の非常電源は不要 | 告示第4に準じる(非常電源の除外の記載は見当たらない) |
東大阪市消防局の公開されている運用基準(6つのPDF)には、特定共同住宅等の基準がありません。住棟受信機のまとめ方は大阪市の住棟受信機の記事で、免震ピットの感知器は東大阪市の免震ピットの記事で比べています。
大阪市で計画するときは、次の順に確かめると抜けが出ません。
- 住戸用自動火災報知設備で計画する特定共同住宅等か
- 内廊下など外気に開放されていない共用部分や、倉庫・機械室があるか
- それらの感知器を防災センター等の受信機につなぐなら、火災表示灯と25メートルの音響警報装置を図面に入れたか
- 共用部分に発信機・地区音響装置・位置表示灯までそろえ、共同住宅用非常警報設備を省くか
- 鳴動方式を規則第24条の区分鳴動の例で組んだか、管轄の消防署と確認したか
堺市と大阪市で、書き方がけっこう違うのですね。
はい、結論は同じでも条件の書き方が違います。
市ごとの基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず共用部分の感知器のつなぎ先を決めます。
そのうえで消防署に相談します!
大阪市は表示灯と音響の条件も要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第8章 第7節 特定共同住宅等 第7 住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備 柱書・5・7 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例/特定共同住宅等 Ⅶ 住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備 9(2)・10(2) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開資料に特定共同住宅等の基準なし) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第2条・第3条第3項第4号(e-Gov法令検索)
- 住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備の設置及び維持に関する技術上の基準(平成18年消防庁告示第19号)第三第二号・第四(消防庁ホームページ掲載版)
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条・第25条の2(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。





