建物の窓の前に駐車場や駐輪場、植え込みがある場合、その窓は避難や消火活動に使える開口部として数えてもらえるのでしょうか。
消防法施行規則は、無窓階の判定に数える開口部を、道又は道に通ずる幅員1メートル以上の通路その他の空地に面したものと定めています。
この記事では、吹田市消防本部の質疑応答集が、開口部の前の駐車場・駐輪場・樹木をどう答えているかを、国の規則と豊中市・堺市の基準と並べて読みます。
条文には駐車場も植木も出てこないため、市の運用が違うところと、書かれていないところを分けて整理します。
窓の前に自転車が並んでいると、その窓は使えないのですか?
国の規則は、空地に面していることを求めます。
駐輪場の扱いは、市の運用に任されています。
市によって扱いが違うということですか?
はい、吹田市と豊中市と堺市で書き方が違います。
順に確かめていきましょう。
- 国の規則は、開口部が道又は道に通ずる幅員1メートル以上の通路その他の空地に面していることを求めるだけで、駐車場や樹木には触れていません
- 吹田市の質疑応答集 第18節 問3は、開口部の前面1m以内に駐車場・固定装置付きの駐輪場・中木・高木があると、これらに面する開口部を有効としません
- 吹田市は、高さ400mm以下の低木、固定装置付きのない駐輪場、固定装置付きのない排気量50cc未満の単車置場は「可とする」としています
- 豊中市は駐車場と駐輪場を一律に支障なしとは扱わず、堺市は樹木を高さ概ね50cm以下に限ります。堺市の審査基準には駐車場の記述が見当たりません
- 開口部を有効としないことと、階が無窓階になることは別です。実際の取扱いは、管轄の消防署で確認してください
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目次
国の規則は開口部の前の空地をどう定めているのか

条文には、駐車場、駐輪場、樹木という言葉はありません。窓の前に何があると「空地」と言えなくなるのかは、規則だけでは決まらず、各消防本部が運用で補っています。
11階以上の階は、第2号が除かれています。この記事の話は、10階以下の階が対象です。 無窓階の窓の数え方の全体像は、無窓階の有効な開口部の記事で解説しています。
条文を読むだけでは、駐輪場がだめかどうか分からないのですね?
そうです。
国の条文は「空地に面していること」までです。
具体的な線引きは市ごとの運用です。
吹田市の質疑応答集は窓の前の駐車場や植木をどう答えているのか

| 開口部の前面1m以内にあるもの | 吹田市の答え |
|---|---|
| 駐車場 | 有効としない |
| 固定装置付きの駐輪場 | 有効としない |
| 中木・高木 | 有効としない |
| 高さ400mm以下の低木 | 可とする |
| 固定装置付きのない駐輪場 | 可とする |
| 固定装置付きのない排気量50cc未満の単車置場 | 可とする |
答3は、中木と高木の高さの目安を書いていません。低木は400mm以下と数字がありますが、400mmを超え、中木に届かない高さの植木がどちらに当たるのかは、質疑応答集からは分かりません。 もう一つ注意が要ります。答3が「有効としない」とするのは、その開口部です。階全体が無窓階になるかどうかは、ほかの開口部を数えたうえで決まります。
前に植木があると、すぐ無窓階になるのですか?
その窓が数えられなくなるだけです。
他の窓で条件を満たせば無窓階ではありません。
豊中市と堺市は窓の前の障害物をどう書いているのか

駐車場と駐輪場は、吹田市のような固定装置の区別がなく、空地や通路にあれば支障がないものとして取り扱えません。
なお、豊中市の運用基準は条文を「規則第5条の3」と引いていますが、現行の規則で同じ内容を定めているのは第5条の5第2項第2号です。 堺市消防局の審査基準は、同じ項目を次のように書いています。
堺市のほかの空地の扱い(中庭や河川敷)は、堺市の無窓階の記事で解説しています。 大阪市と東大阪市の運用基準・審査基準を読んだ範囲では、窓の前の駐車場や樹木を扱う項目は見当たりませんでした。
豊中市は駐車場を認めないのですね。
はい、駐車場と駐輪場は
支障なしと取り扱えないと書いています。
堺市は樹木の高さだけを書いています。
吹田市・豊中市・堺市の違いを並べるとどうなるのか

| 窓の前にあるもの | 吹田市 | 豊中市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 駐車場 | 有効としない | 支障なしと取り扱えない | 書かれていない |
| 駐輪場 | 固定装置付きは有効としない、固定装置のないものは可 | 支障なしと取り扱えない(固定装置の区別なし) | 書かれていない |
| 樹木 | 中木・高木は有効としない、高さ400mm以下の低木は可 | 支障がないものは可、障害物が高さ1.2m以下なら支障なし | 高さ概ね50cm以下に限る |
| 単車置場 | 固定装置のない排気量50cc未満は可 | 書かれていない | 書かれていない |
一つ目は、駐輪場の扱いです。吹田市は固定装置の有無で分け、豊中市は区別せずに支障なしと取り扱えないとしています。固定装置のない駐輪場は、吹田市では可、豊中市では不可と読めます。
二つ目は、樹木の高さです。吹田市は低木を400mm以下、堺市は50cm以下(500mm)、豊中市は障害物の高さ1.2m以下と、数字の置き方が三市でそれぞれ違います。
三つ目は、書いてあるかどうかです。駐車場は、吹田市と豊中市が書き、堺市の審査基準には見当たりません。書かれていないことは、認められているという意味ではありません。 三市は同じ大阪府内ですが、窓の前の障害物の線引きはそろっていません。同じ設備でも、建物のある市によって判断が変わる場面です。
同じ大阪府でも、窓の前の扱いがこんなに違うのですね。
はい、国の条文は同じでも、
市の運用で線引きが変わります。
建物の所在地の基準で確認します。
窓の前に駐輪場や植木を置く前に何を確かめればよいのか

- その窓を、無窓階の判定で数えているかどうかを確かめます。10階以下の階は、直径1メートル以上の円が内接する開口部、または幅75センチメートル以上かつ高さ1.2メートル以上の開口部が、二以上必要です。
- 窓が面している幅1メートル以上の通路その他の空地に、駐車場、駐輪場、樹木、塀がかかっていないかを確かめます。
- 建物のある市の基準で、駐車場・駐輪場・樹木の扱いを確かめます。吹田市は第18節 問3、豊中市は運用基準の第4 2(2)、堺市は審査基準の第5 2(2)ウです。
- 他の市の扱いを当てはめません。固定装置のない駐輪場は、吹田市では可と読めますが、豊中市では支障なしと取り扱えません。
- 窓の前を変える前に、消防署へ相談します。その窓を外すと階が無窓階になる場合は、感知器や避難器具などの設備が変わることがあります。
窓の前に物を置く前に、消防署へ相談すればよいのですね?
はい、市の運用で線引きが違います。
設置や変更の前に確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず窓の前の空地を確かめます。
そのうえで消防署に相談します!
窓の前の扱いは消防署で確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 吹田市消防本部「消防用設備等設置指導等に関する質疑応答集」第18節 普通階判定 問3(更新2026-07-13) https://www.city.suita.osaka.jp/anzen/1017917/1017954/1044807.html
- 豊中市消防局「消防用設備等の設置に関する運用基準」(令和6年4月1日改正)第1部 第2章 第4 無窓階の取扱い 2(2) https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kurashi/bosai/toyonakafiredept/todokede/setubiunnyoukijun.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第2章 第1節 第5 無窓階の取扱い 2(2)ウ https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行規則 第5条の5(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※本記事は公表されている法令および吹田市・豊中市・堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。基準は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物が無窓階に当たるかは、所轄の消防署にご確認ください。






