食品工場や物流倉庫の冷凍室・冷蔵室は、室内が氷点下に保たれ、人が長くとどまる場所ではありません。
それでも消防法施行令は、建物の用途と面積で消防用設備等を求めるので、冷凍室の中にも消火器や感知器が要るように見えます。
この記事では、吹田市消防本部の質疑応答集が冷凍室・冷蔵室をどう答えているかを入口に、豊中市消防局と大阪市消防局の運用基準を原文で比べます。
吹田市は5つの設備をまとめて室内に置かなくてよいと答え、豊中市と大阪市は設備ごとに条件を書き分けています。
吹田市に冷凍倉庫を建てます。
マイナス30℃の部屋の中にも消火器や感知器を付けるのですか?
吹田市の質疑応答集は、温度が自動管理され可燃物が極めて少ないなら、室内には設置不要と答えています。
豊中市や大阪市でも同じ扱いですか?
豊中市と大阪市は、屋内消火栓やスプリンクラーなど設備ごとに条件を決めています。
順に見ていきましょう。
- 吹田市の質疑応答集 第19節は、冷蔵室・冷凍室の部分について、消火器・屋内消火栓設備・自動火災報知設備・非常警報設備・誘導灯の5つは室内に設置不要で、誘導灯以外は室外の設備でできるだけ包含するとしています
- その条件は、温度が自動管理できていることと、可燃性物品等の収容量が極めて少ないことの2つで、根拠は消防法施行令第32条の特例です
- 吹田市は別の節でも、冷凍室等の感知器は1平方メートル以上なら必要だが、温度の異常を受信機などに警報表示できれば不要と答え、排煙設備は50平方メートル以下などの条件で設置を要しないとしています
- 豊中市と大阪市は、屋内消火栓はホースを延ばして冷凍室の各部分に届かせる、スプリンクラーヘッドは100平方メートル以下の区画で省略、誘導灯は歩行距離30メートル以下などと、設備ごとに条件を書き分けています
- どの市でも令第32条の特例なので、計画の段階で所轄の消防署に相談することが前提です
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目次
吹田市の質疑応答集は冷凍室の消防用設備等をどう扱っているのか

問いの中で、冷蔵室は-5℃、冷凍室は-25℃から-45℃の部屋として書かれています。
1 設置場所
(1) 冷蔵室、冷凍室部分
消火器、屋内消火栓設備、自動火災報知設備、非常警報設備及び誘導灯は室内には設置は不要であるが、包含は可能な限りすること。(誘導灯は除く。)
- 対象は冷蔵室・冷凍室の部分で、建物全体ではない
- 消火器・屋内消火栓設備・自動火災報知設備・非常警報設備・誘導灯の5つは室内に設置しなくてよい
- ただし、誘導灯以外の4つは、室外に置いた設備の有効範囲や警戒範囲にできる限り含める(包含する)
- 問いには「小規模なものは除く」とあり、どこからが小規模かは書かれていない
5つの設備を一つの答えでまとめて扱っているのが、吹田市の質疑応答集の特徴です。
室内に置かなくてよいなら、冷凍室のことは考えなくてよいのですか?
いいえ、外の設備でできるだけ包含することが求められています。
配置の段階で範囲を確かめましょう。
吹田市の冷凍室の特例には何が条件になっているのか

(1) 当該部分の温度が自動管理できていること。
(2) 可燃性物品等の収容量が極めて少ないこと。
吹田市の答えは、冷凍室ならどれでも自動的に外れるという意味ではなく、2つの条件を満たす冷凍室なら特例を認める方向で扱う、という運用の目安と読むのが安全です。
国の質疑では、昭和45年の消防予第172号が、冷凍室の温度を常時監視する装置を人のいる場所に置けば、令第32条を適用して自動火災報知設備を省略してよいと答えています。国の質疑が自動火災報知設備について答えたものであるのに対し、吹田市は消火器から誘導灯までの5つの設備に広げて答えている点が違います。国の質疑の内容は特殊な用途や構造の建物で消防用設備等の基準はどこまで緩和されるかの記事で解説しています。
温度の自動管理とは、どこまでの設備が要るのですか?
第19節は自動管理できていることとしか書いていません。
次の節の答えと合わせて確かめます。
吹田市は冷凍室の感知器と排煙設備をどう答えているのか

まず、第5節 自動火災報知設備の問4です。
ただし、受信機又は常時人が監視している場所に設置する警報盤等に温度が異常である旨の警報を表示できる場合は、感知器の設置は不要。
第19節の「温度が自動管理できていること」と合わせて読むと、温度を自動で管理するだけでなく、異常を人が気づける場所に表示するところまで用意しておくのが確実です。
次に、第11節 排煙設備の問1は、令第32条を適用して排煙設備を要しない部分として、冷凍室を2つの形で挙げています。
3 不燃材料の壁、柱、床、天井(天井のない場合は屋根)及び扉で区画された床面積50 ㎡以下の冷蔵室又は冷凍庫で次に適合するもの。
(1)収容物は、不燃性の物品又は生鮮食料品等出火の恐れが少ないものであること。
(2)冷蔵室又は冷凍室の温度に異常が生じたときに、防災センター等に当該異常を表示し、かつ、警報を発する装置が設けてあること。
(3)(2)による移報の配線は耐熱配線とすること。
ただし、消防用設備等特例適用願出書を提出すること。
そして答1は、消防用設備等特例適用願出書の提出を求めています。第19節には願出書の記載がありませんが、令第32条の特例である以上、手続きは所轄の消防署で確かめてください。
感知器と排煙で、冷凍室の条件が少しずつ違うのですね?
はい、節ごとに面積や警報の条件が違います。
3つの節を並べて確かめましょう。
豊中市と大阪市は冷凍室の特例をどう書き分けているのか

いずれも柱書きで令第32条の規定を適用しとされています。まず屋内消火栓設備です。
(1) 冷凍室等の各部分から1のホース接続口までの水平距離(次号において「水平距離」という。)が、40メートル以下となる場合は、次に適合すること
ア 1号消火栓には、冷凍室等の各部分から1のホース接続口に至る歩行距離以上の合計長さとなるようホースを設けること
イ アのホースを全て延長した場合に、ノズル先端において、放水圧力が0.17メガパスカル以上で、かつ、放水量が130リットル毎分以上の性能を有するものであること
ほかの設備も、次のように条件が決まっています。
(1) 収容物は、不燃性の物品又は生鮮食料品等出火のおそれが少ないものであること。
(2) 冷蔵室又は冷凍室の温度に異常が生じた時に、中央管理室等に当該異常を表示し、かつ、警報を発する装置が設けられていること。
(2) 恒温室、冷蔵室等で、当該場所における温度の異常を早期に感知することができる装置を有しており、当該装置が温度の異常を感知した場合に、防災センター等において警報及び灯火により容易に覚知できるよう措置されているもの
(ア) 冷凍室又は冷蔵室内の各部分から直近の出入口までの歩行距離が30メートル以下のもの
大阪市消防局の運用基準も、屋内消火栓・スプリンクラー設備・自動火災報知設備・誘導灯・排煙設備のそれぞれに冷凍室の特例があり、数値は豊中市とほぼ同じです。大阪市は消火器にも、出入口に分散して置き所要数を20%増やす特例を設けています。大阪市の特例は大阪市で冷凍倉庫の消防用設備等はどこまで緩和されるのかの記事で節ごとにたどっています。3市を並べると次のとおりです。
| 設備 | 吹田市 | 豊中市 | 大阪市 |
|---|---|---|---|
| 消火器 | 室内は不要(包含はできる限り) | 冷凍室の特例は見当たらない | 出入口に分散配置し所要数を20%増し |
| 屋内消火栓設備 | 室内は不要(包含はできる限り) | ホースを延ばして各部分に届かせる(40メートルで性能が変わる) | 豊中市とほぼ同じ |
| スプリンクラー設備 | 第19節の対象外 | 100平方メートル以下の区画でヘッド不要 | 豊中市とほぼ同じ |
| 自動火災報知設備 | 室内は不要/感知器は1平方メートル以上で必要(温度警報で不要) | 温度異常を防災センター等で覚知できれば感知器不要 | 恒温室・冷蔵室等で同様の特例 |
| 誘導灯 | 室内は不要(包含の対象からも除く) | 歩行距離30メートル以下などで避難口誘導灯不要 | 豊中市とほぼ同じ |
| 排煙設備 | 耐火区画なら不要/不燃区画は50平方メートル以下 | 吹田市とほぼ同じ(配線は規則の例) | 同様の特例 |
豊中市では、冷凍室の中にスプリンクラーヘッドが要ることもあるのですか?
100平方メートルを超える区画や条件を満たさない冷凍室では、特例が使えないことがあります。
区画の大きさを先に確かめましょう。
吹田市で冷凍倉庫を計画するときは何を確かめればよいのか

- 冷凍室・冷蔵室の位置と床面積と温度を図面に書き出します。1平方メートル以上か、50平方メートル以下か、が節ごとの分かれ目です。
- 温度を自動で管理する装置と、温度の異常を受信機か常時人がいる場所の警報盤などに警報表示する仕組みを決めます。
- 室内に置く物を確かめます。可燃性物品等が極めて少ないことが第19節の条件で、段ボール梱包の多い倉庫は個別に相談します。
- 室外の消火器・屋内消火栓・感知器・非常ベルの配置で、冷凍室をできるだけ包含できるかを確かめます。
- 排煙設備を外すなら、区画の造りと面積を確かめ、特例適用願出書の要否を含めて所轄の消防署に事前相談します。
同じ冷凍倉庫を豊中市に建てるなら、考え方は変わりますか?
豊中市は設備ごとの条件で見ます。
所在地の基準で一つずつ確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず冷凍室の面積と温度の警報を決めます。
そのうえで室外の設備で包含できるかを消防署に相談します!
特例は設計の段階で相談するのが近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 吹田市消防本部「消防用設備等設置指導等に関する質疑応答集」第19節 特例適用(令32条)問1・答1(更新2026-07-13) https://www.city.suita.osaka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/044/807/19tokurei.pdf
- 吹田市消防本部「消防用設備等設置指導等に関する質疑応答集」第5節 自動火災報知設備 問4・答4 https://www.city.suita.osaka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/044/807/05jidoukasaihouti.pdf
- 吹田市消防本部「消防用設備等設置指導等に関する質疑応答集」第11節 排煙設備 問1・答1 https://www.city.suita.osaka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/044/807/11haienn.pdf
- 豊中市消防局「消防用設備等の設置に関する運用基準」(令和6年4月1日改正)屋内消火栓設備 第12 特例基準 10・スプリンクラー設備 第14 特例基準 4・自動火災報知設備 第11 特例基準 2・誘導灯及び誘導標識 第8 特例基準 1(2)・排煙設備 第5 特例基準 3、4(PDF222〜223・245・351・450〜451・464ページ目) https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kurashi/bosai/toyonakafiredept/todokede/setubiunnyoukijun.files/setubi1.pdf
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」(消火器具・屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備・誘導灯・排煙設備の各特例基準) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 消防法施行令 第32条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
- 冷凍室または冷蔵室の用途に供する消防用設備等の設置について(昭和45年9月9日 消防予第172号) https://fdma.co.jp/tokushu-tatemono-rei32jo-jirei/
※本記事は公表されている法令および吹田市・豊中市・大阪市・東大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたものです。「見当たらない」としたものは、公開資料を確認した範囲の結果です。運用基準は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防局で確認してください。令第32条の特例を使えるかどうかは、個々の建物ごとに所轄の消防署にご確認ください。






