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動植物油のタンクは危険物から外れる条件があるのか|常温と加圧しない貯蔵を平成元年の質疑で解説

動植物油のタンクは危険物から外れる条件があるのか

食用油や潤滑油に使う動植物油は、量が多くなると、火災予防上の規制がかかる物質です。
一方で、決まった方法で貯蔵しているあいだは、危険物から外れるという定めがあります。
平成元年の消防庁の質疑応答には、この「決まった方法」の中身と、注入口や払出口の扱いを問う事例が残っています。
この記事では、そのうちの七つの問いを五つの論点にまとめ、現行の危険物の規制に関する規則や政令と照らして読みます。
どこまでなら許可が要らず、どこからが危険物施設になるのかを、順に確かめます。

植物油のタンクは、危険物なのか、そうでないのか、いつも迷います。

はい。
貯蔵のしかたで扱いが分かれるので、条文から確かめます。

質疑応答の答えは、今の規則とどうつながるんでしょうか。

一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みます。

この記事の結論
  • 動植物油を電気ヒーターやスチームで保温して貯蔵する場合も、保温している温度が40度未満なら、規則にいう「常温で貯蔵保管」に該当するとされました
  • 大気弁付通気管を設けたタンクで貯蔵する場合も、「加圧しないで貯蔵保管」に該当するとされました
  • 地下タンクの直上に注入口や配管、弁などがあり、そこで1日に指定数量以上を取り扱うなら、その注入口等は一般取扱所になるとされました
  • 注入口が一般取扱所となる範囲は、注入口からタンクの元弁までとされ、保安距離は外壁又はこれに相当する工作物の外側までの間に確保する必要があります
  • 基準に合う貯蔵かどうかは立入検査や資料提出命令で確認され、基準に不適合となったタンクには、法第16条の6に基づく措置命令が出せるとされました

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動植物油タンクの五題として、電気やスチームで保温しても四十度未満なら常温、大気弁付きの通気管でも加圧しないに当たる、地下タンクの直上の注入口は一般取扱所になる、注入口から元弁までが範囲で保安距離も要る、基準を外れれば立入検査や措置命令の対象、を並べた図解

動植物油を電気ヒーターやスチームで保温すると、常温の貯蔵ではなくなるのか

灰色の大きな円筒形の屋外タンクが低いベージュの基礎の上に立ち、下半分に薄い灰色の保温材が巻かれ、細いオレンジ色の加熱帯と紺色の小さな温度計の箱が側面に付いているイメージ
動植物油類は、法別表第一の備考第17号で、総務省令で定めるところにより貯蔵保管されているものを除くとされています。
この総務省令が、危険物の規制に関する規則第1条の3第7項です。第1号は、政令第11条から第13条までの、屋外タンク貯蔵所・屋内タンク貯蔵所・地下タンク貯蔵所の基準の例によるタンクに、加圧しないで、常温で貯蔵保管されているものを掲げています。
寒い季節に固まりやすい油は、タンクを温めて流動性を保つことがあります。そこで、保温していても「常温」といえるのかが問われました。
問(要旨) 動植物油を電気ヒーター又はスチーム等により保温して貯蔵保管している場合も、規則第1条の3第7項第1号に規定する「常温で貯蔵保管されている」場合に該当するのか。
答(要旨) 保温している温度が40度未満の場合は、該当する。
(平成元年7月4日 消防危第64号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
保温していても、40度未満なら常温の貯蔵に当たるという答えでした。
答えは、保温の方法が電気でもスチームでも、保温している温度を基準にしています。
認められたのは40度未満の場合です。40度以上に保温する場合の扱いは、この答えには書かれていません。保温の温度を上げる予定があるときは、事前に所轄の消防機関に確認します。
ヒーターの設定温度だけでなく、実際のタンク内の油温がどうなるかを、季節ごとに確かめておくと安心です。

保温してよいのは、40度未満までなんですね。

はい。
温度の線が、答えの中心です。

大気弁付通気管のタンクでも、加圧しないで貯蔵していることになるのか

灰色の大きな円筒形の屋外タンクが低いベージュの基礎の上に立ち、屋根の上の短い灰色の通気管の先に小さな丸いオレンジ色の弁のふたが付いているイメージ
規則第1条の3第7項第1号の条件は、「常温」のほかに、「加圧しないで」とあります。
タンクには、空気の出入りのための通気管が付いています。その通気管に弁が付いている場合でも、加圧していないといえるのかが問われました。
問(要旨) 規則第20条第1項第2号に規定する大気弁付通気管を設けたタンクで貯蔵保管されている動植物油も、規則第1条の3第7項第1号に規定する「加圧しないで貯蔵保管されているもの」に該当するのか。
答(要旨) 該当する。
(平成元年7月4日 消防危第64号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
大気弁付通気管があっても、加圧しない貯蔵に当たるという答えでした。
規則第20条第1項は、圧力タンク以外の屋外貯蔵タンクに設ける通気管を、無弁通気管又は大気弁付通気管とし、その構造を定めています。大気弁付通気管は、5キロパスカル以下の圧力差で作動できるものとされています。
つまり、大気弁付通気管は、タンクを圧力タンクとして使うための弁ではなく、わずかな圧力差でタンク内外の空気を通す弁です。答えは、この弁があっても加圧しているとは扱わない、という趣旨に読めます。

弁が付いていても、圧力タンク扱いにはならないんですね。

はい。
圧力タンクではない通気管の一つとして、規則が定めています。

地下タンクの直上にある注入口は、なぜ一般取扱所になるのか

ベージュの地面の断面に灰色の横長の地下タンクが埋まり、地面の上のちょうど真上に、灰色の小さな注入口の箱と、紺色の小さな弁の付いた短い灰色の管が立っているイメージ
貯蔵の基準に合っているあいだ、動植物油のタンクは危険物の貯蔵所として許可を受ける対象になりません。
では、そのタンクに油を注ぐ注入口の部分は、どう扱われるのでしょうか。
問(要旨) 動植物油の地下タンク(動植物油の貯蔵量が1万リットル以上のもの)に附属して、注入口及び当該注入口に接続する配管、弁等が地下タンクの直上部に設けられており、当該注入口等の部分において1日に指定数量以上の動植物油類を取り扱う場合には、当該注入口等は一般取扱所となるのか。
答(要旨) お見込みのとおり。
(平成元年7月4日 消防危第64号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
注入口等で1日に指定数量以上を取り扱うなら、一般取扱所になるという答えでした。
動植物油類の指定数量は、政令別表第三で1万リットルです。
政令第3条は、給油取扱所・販売取扱所・移送取扱所のいずれにも当たらない取扱所を、一般取扱所と区分しています。答えの筋道は、次のように読めます。タンクの中の貯蔵は、基準に合っているあいだ危険物から外れます。しかし、タンクへの注入や払出しの場面は、貯蔵ではなく取扱いです。そこで1日に指定数量以上を取り扱うなら、その部分は一般取扱所として許可が要る、ということです。

タンクの中と、注ぐ場所では、扱いが分かれるんですね。

はい。
貯蔵と取扱いを分けて見るのがポイントです。

屋外タンクの払出口と注入口は、どこまでが危険物施設で保安距離は要るのか

灰色の大きな円筒形のタンクの底から灰色の管が下りて紺色の小さな弁を通り、灰色の小さな注入口の箱につながり、弁から注入口までの管の部分がオレンジ色になっていて、離れた場所に小さなベージュの家が建っているイメージ
屋外のタンクにも、油を出し入れする口があります。
払出口と注入口について、許可の要否と、一般取扱所になる場合の範囲、保安距離が問われました。
問(要旨) (1)動植物油の屋外タンク(動植物油の貯蔵量が1万リットル以上のもの)に附属する払出口及び当該払出口に接続する配管、弁等の部分において、1日に指定数量以上の動植物油類を取り扱う場合は、当該払出口等は危険物施設として許可が必要か。(2)タンクに附属する注入口及び当該注入口に接続する配管、弁等が一般取扱所となる場合、一般取扱所となる範囲はどこか。また、その一般取扱所について保安距離は必要か。
答(要旨) (1)払出し先の形態に応じ、許可を受ける必要がある。(2)前段は、注入口からタンクの元弁(元弁がない場合にあっては、配管とタンクの接続部)までである。後段は、保安距離は、「外壁又はこれに相当する工作物の外側」までの間に確保する必要がある。
(平成元年7月4日 消防危第64号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
払出口は払出し先で許可が変わり、注入口は元弁までが一般取扱所の範囲でした。
払出口の答えは、払出し先の形態に応じて必要な許可が決まる、というものです。個別の許可の種類は、払出し先を具体的に決めたうえで所轄の消防機関に確認します。
注入口の範囲は、注入口からタンクの元弁までです。元弁がないときは、配管とタンクの接続部までとされています。
保安距離は、政令第9条第1項第1号が、製造所について定めています。一般取扱所は、政令第19条第1項がこれを準用しています。距離は、住居の用に供する建築物で10メートル以上、学校・病院・劇場などで30メートル以上、重要文化財などで50メートル以上です。答えは、この距離を、一般取扱所の外壁又はこれに相当する工作物の外側から測るとしています。

元弁までが範囲で、そこから保安距離を取るんですね。

はい。
範囲の端を決めてから、距離を測ります。

基準に合う貯蔵かどうかは消防がどう確かめ、外れたらどうなるのか

ベージュの地面に灰色の大きな円筒形のタンクが立ち、その横の小さなベージュの机の上に、何も書かれていない紺色のバインダーと小さな灰色の虫眼鏡が置かれているイメージ
最後の二問は、基準に合っていることをどう確かめるか、合わなくなったらどうなるか、です。
問(要旨) (1)1万リットル以上の動植物油が、規則第1条の3第7項第1号でその例によるものとされる基準に適合して貯蔵保管されていることを、消防機関はどのように確認するのか。(2)タンクが、破損等により、同号でその例によるものとされる基準に不適合となった場合には、法第16条の6に基づく措置命令を発することができるか。
答(要旨) (1)必要に応じ、法第16条の5に基づく立入検査、資料提出命令等により確認される。(2)お見込みのとおり。
(平成元年7月4日 消防危第64号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
確認は立入検査や資料提出命令で行われ、不適合なら措置命令が出せるという答えでした。
法第16条の5は、危険物の貯蔵又は取扱いに伴う火災の防止のため必要があるときに、資料の提出を命じ、報告を求め、立入検査をさせることができると定めています。
法第16条の6は、許可を受けないで指定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱っている者に、除去その他の必要な措置を命じることができると定めています。基準に合わなくなったタンクの動植物油は、危険物から外れる前提を失うため、無許可の貯蔵として、この命令の対象になりうるという筋道です。
タンクの破損や劣化があれば、命令を待たずに、補修と基準への適合を確かめます。

基準から外れたら、危険物として扱われるんですね。

はい。
貯蔵の基準を保ち続けることが前提です。

よくある質問

Q動植物油のタンクは、いつも危険物として許可が要りますか?
A法別表第一の備考第17号は、動植物油類から、総務省令で定めるところにより貯蔵保管されているものを除いています。規則第1条の3第7項第1号などの基準に合う貯蔵は危険物から外れますが、基準を保てなくなれば、危険物として扱われます。
Q40度以上に温めてもよいですか?
A質疑応答の答えが認めたのは、保温の温度が40度未満の場合です。40度以上で保温する場合の扱いは書かれていないので、事前に所轄の消防機関に確認します。
Q動植物油類の指定数量はいくらですか?
A政令別表第三で、動植物油類の指定数量は1万リットルです。注入口や払出口の部分が一般取扱所になるかどうかは、1日の取扱量がこの数量以上かどうかで見ます。
Q平成元年の回答は、今もそのまま使えますか?
A回答は発出当時のものです。現行の規則第1条の3第7項と第20条第1項に同じ趣旨の定めがありますが、個別の設備への適用は、所轄の消防機関に確認します。

まとめ

✔動植物油は、規則に定める基準で貯蔵しているあいだ危険物から外れる
✔電気ヒーターやスチームで保温しても、温度が40度未満なら常温の貯蔵に当たる
✔大気弁付通気管のタンクも、加圧しない貯蔵に当たる
✔地下タンク直上の注入口等で、1日に指定数量以上を取り扱うなら一般取扱所になる
✔注入口の範囲は元弁まで。保安距離は外壁又はこれに相当する工作物の外側までの間に確保する
✔基準に不適合となったタンクには、法第16条の6の措置命令が出せる
✔質疑応答は、今の条文の意味を理解するために読む。個別の適用は所轄の消防機関に確認する

質疑応答が、条文とつながりました。
うちの油のタンクも、今の規則で確かめてみます!

質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法別表第一(備考第17号)・第16条の5・第16条の6
  • 危険物の規制に関する政令第3条・第9条・第19条・別表第三
  • 危険物の規制に関する規則第1条の3・第20条
  • 危険物規制事務に関する執務資料(給油取扱所を除く)の送付について(平成元年7月4日 消防危第64号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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