煙感知器は、火災の煙をいち早く捉える大切な感知器です。
ただ、タバコの煙や温泉の蒸気が絶えない場所では、誤作動が続いて困ることがあります。
この記事では、消防庁が昭和47年と昭和50年に示した質疑応答から五つを選び、現行の消防法施行規則第23条 と照らして読みます。
付けなくてよい場所、廊下での数え方、防火戸との兼用、既存の建物の扱いを、順に確かめます。
うちの店はお客さんがタバコを吸うので、煙感知器がよく鳴ってしまいます。
付け替えるべきなんでしょうか。
そこは昔から問われてきた点です。
五つの質疑応答で、答えを見ていきます。
昔の回答は、今の条文とどうつながるんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みます。
- 営業中にタバコの煙が絶えない場所は、昭和50年の回答が誤作動が多い場所とし、煙感知器でなく高感度の熱感知器とするよう求めました
- 蒸気が絶えない旅館の浴場は、昭和47年の回答が煙感知器を設けない場所に当たるとし、現行の規則第23条第4項第1号ニ(イ)も水蒸気が多量に滞留する場所を挙げています
- 廊下や通路の煙感知器は、昭和47年の回答で歩行距離30メートルにつき1個以上とされ、現行の第7号ヘは三種のものだけ20メートルと定めています
- 防火戸やダンパーの煙感知器との兼用はさしつかえないとされましたが、防火戸の制御盤を経由して受信機に表示することはできないと答えられました
- 既存の百貨店にも自動火災報知設備は必要で、スプリンクラーヘッドのある部分は感知区域を2倍とする特例が示されましたが、現行の条文の表にこの2倍の扱いはありません
▼

目次
営業中にタバコの煙が絶えない店でも、煙感知器に取り替えなければならないのか

窓のない階では煙感知器が必要になるため、その扱いが問われました。
(昭和50年6月16日 消防安第65号 消防庁安全救急課長から都道府県消防主管部長あて回答)
現行の消防法施行規則第23条第4項第1号は、煙感知器を設ける部分から除く場所を列挙しています。ニの(イ)は「じんあい、微粉又は水蒸気が多量に滞留する場所」、(ハ)は「厨房その他正常時において煙が滞留する場所」、(チ)は「機能に支障を及ぼすおそれのある場所」です。
回答が挙げた当時のニ(イ)の「誤作動が多い場所」という書き方は、現行では、これらの号に整理されています。
ただし、現行の条文に「タバコの煙」という言葉はありません。営業中の店の煙がどの号に当たるかは所轄の消防機関の判断になります。
無窓階などで煙感知器を設けない場合は、第6項第1号により、別表第一の二の三で適応するとされた感知器を設けます。「感知器を付けなくてよい」わけではない点に注意します。
煙感知器を外しても、感知器そのものは別のものを付けるんですね。
はい。
付ける感知器の種類が変わります。
蒸気が絶えない旅館の浴場や、点検しにくい場所には煙感知器を付けなくてよいのか

あわせて、感知器を付ける場所が満たすべき条件の趣旨も問われました。
別の問 規則第23条第4項第1号の「点検に便利な場所」の趣旨を教えてください。
別の答 感知器の機能の確保を図るためには、清掃、点検等が必要であり、これらの作業が容易に行える場所に設置することを規定したものである。
(昭和50年6月16日 消防安第65号 消防庁安全救急課長から都道府県消防主管部長あて回答)
現行の第4項第1号ニ(イ)は、「じんあい、微粉又は水蒸気が多量に滞留する場所」に煙感知器を設けないと定めており、この回答の考え方は今も条文に残っています。
無窓階などで設けない場合は、前の項目と同じく、第6項第1号により別表第一の二の三の感知器を選びます。
「点検に便利な場所」は、現行の第1号の柱書で、「点検その他の維持管理ができる場所に設けること」と書かれています。回答の趣旨と同じく、清掃や点検の手が届く場所が前提です。
蒸気の多い場所と、点検できない場所が両方とも条件なんですね。
はい。
付けられるかと、点検できるかの両方を見ます。
廊下や通路の煙感知器は、部屋の広さに関係なく歩行距離で数えてよいのか

昭和45年の省令改正のあとの扱いが問われました。
(昭和47年10月30日 消防予第159号 消防庁予防課長から兵庫県あて回答)
現行の規則第23条第4項第7号ヘは、「廊下及び通路にあつては歩行距離30メートル(三種の感知器にあつては20メートル)につき一個以上」と定めています。
当時の回答は種別を問わず30メートルでしたが、現行は三種のものだけ20メートルと細かくなりました。同じ号は、階段や傾斜路を垂直距離15メートルにつき1個以上とする定めも置いています。
床面積で数える同じ項のホは、「廊下、通路、階段及び傾斜路を除く感知区域」と書いており、廊下や通路は別扱いです。設置する感知器の種別を確かめてから、間隔を決めます。
三種のときだけ、20メートルなんですね。
はい。
感知器の種別で間隔が変わります。
防火戸やダンパーの煙感知器と、自動火災報知設備の感知器は兼用できるのか

これを自動火災報知設備の感知器と共用してよいかが問われました。
別の問 防火戸の煙感知器の作動表示を制御盤に入れ、それから自動火災報知設備の受信機の表示窓に収容してもよろしいか。
別の答 設問の煙感知器を自動火災報知設備の感知器と兼用する場合は、感知器が作動した旨の信号を防火戸の制御盤を中継して受信機に表示することはできない。
(昭和50年6月16日 消防安第65号 消防庁安全救急課長から都道府県消防主管部長あて回答)
防火戸などの閉鎖は建築基準法側の設備で、建築基準法施行令第112条第19項が、煙が発生した場合などに自動的に閉鎖することを求めています。この閉鎖用の感知器と、消防用設備等の感知器が、当時は同じ機器で兼用されていました。
回答は、火災の信号を制御盤で中継する経路に頼らず、受信機へ直接つなぐ考え方をとったものです。現行の規則第24条も受信機の基準を定めていますが、この兼用時の中継の可否を直接書いた号は見当たりません。
兼用を考える場合は、設計者と所轄の消防機関に確かめます。防火設備側の感知器の置き方は、下の「あわせて読みたい」でも解説しています。
兼用できても、表示の通し方には決まりがあるんですね。
はい。
信号の経路まで確かめます。
既存の百貨店にも自動火災報知設備は必要で、感知区域の広さに緩和はあるのか

そこへ自動火災報知設備の併設が義務づけられ、既存の建物の扱いが問われました。
また、第5項に掲げる場所に第6項第1号に定める熱式感知器を技術上の基準に従って設置している場合は、令第32条を適用し、煙感知器に代えなくてもさしつかえない。
(昭和50年6月16日 消防安第65号 消防庁安全救急課長から都道府県消防主管部長あて回答)
既存の建物でも新しい基準が及ぶのは、消防法第17条の2の5第1項の括弧書きが、政令で定める消防用設備等を除いているためです。消防法施行令第34条第3号は、その一つに自動火災報知設備を挙げ、別表第一(四)項の百貨店も対象にしています。
ただし、答えにある「感知区域を2倍とする」扱いは、令第32条による当時の特例です。現行の第4項第7号ホの表には、この2倍は書かれていません。
令第32条は、消防長又は消防署長が、火災の発生や延焼のおそれが著しく少ないと判断した場合に基準を緩められる規定です。スプリンクラー設備と自動火災報知設備の関係は、下の「あわせて読みたい」でも解説しています。自分の建物の緩和は、所轄の消防機関の判断が前提です。
緩和は条文でなく、個別の判断だったんですね。
はい。
令第32条の特例は消防長等が判断します。
よくある質問
まとめ
質疑応答が、条文とつながりました。
うちの感知器の種類も確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条の2の5
- 消防法施行令第21条・第32条・第34条
- 消防法施行規則第23条
- 建築基準法施行令第112条
- 消防法施行令及び同法施行規則に関する質疑応答(昭和47年10月30日 消防予第155号・第159号 消防庁予防課長から栃木県・兵庫県あて回答)
- 自動火災報知設備に関する質疑応答(昭和50年6月16日 消防安第65号 消防庁安全救急課長から都道府県消防主管部長あて回答)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





