事業所の倉庫に、消防への届出が必要な薬品が眠っていることがあります。
消防庁は令和4年8月1日、消防活動阻害物質に4―メチルベンゼンスルホン酸を加える省令の公布を通知しました(消防危第156号)。
省令は令和5年2月1日に施行され、基準以上の数量では貯蔵する前の届出が必要になりました。
この記事では、追加された理由、加熱で出る蒸気、届出の数量と罰則を解説します。
薬品の倉庫に、消防への届出が必要な物があるとは知りませんでした。
消防活動阻害物質という制度に、4―メチルベンゼンスルホン酸が加わっています。
その薬品は、なぜ制度に加えられたのですか。
加熱すると有毒な蒸気が出て、消防活動の支障になるからです。
- 消防危第156号は、令和4年8月1日の省令公布の通知で、4―メチルベンゼンスルホン酸及びこれを含有する製剤を新たに消防活動阻害物質に加えるものです。
- 4―メチルベンゼンスルホン酸を5%以下含有する製剤は対象から除かれ、省令の施行日は令和5年2月1日です。
- 加熱すると、人体に有害な蒸気(主に硫黄酸化物)が発生することが確認されていると、消防庁の事務連絡は伝えています。
- 省令第2条の表が定める数量は200キログラム以上で、貯蔵や取扱いの前に所轄消防長又は消防署長へ届け出ます。
- 届出を怠ると、消防法第44条第8号により30万円以下の罰金又は拘留の対象になります。
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目次
4―メチルベンゼンスルホン酸はなぜ消防活動阻害物質に加えられたのか

まず、通知の本文で何が変わったのかを確認します。
危険物の規制に関する政令別表第一及び同令別表第二の総務省令で定める物質及び数量を指定する省令(平成元年自治省令第2号)において、4―メチルベンゼンスルホン酸及びこれを含有する製剤(4―メチルベンゼンスルホン酸5%以下を含有するものを除く。)を、新たに消防活動阻害物質に加えること。
改正したのは、令和4年総務省令第53号です。
追加されたのは、物質そのものだけでなくこれを含有する製剤です。
ただし、4―メチルベンゼンスルホン酸を5%以下含有する製剤は除かれます。
追加の理由は、同じ日に出された事務連絡に書かれています。
物質だけでなく、含有する製剤も対象なのですね。
はい。
ただし5%以下の製剤は対象外です。
届出が必要になるのはどの制度のどの数量からなのか

数量の基準は、政令と省令に分かれています。
圧縮アセチレンガス、液化石油ガスその他の火災予防又は消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質で政令で定めるものを貯蔵し、又は取り扱う者は、あらかじめ、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。ただし、船舶、自動車、航空機、鉄道又は軌道により貯蔵し、又は取り扱う場合その他政令で定める場合は、この限りでない。
法第九条の三第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の政令で定める物質は、次の各号に掲げる物質で当該各号に定める数量以上のものとする。(略)六 毒物及び劇物取締法第二条第二項に規定する劇物のうち別表第二の上欄に掲げる物質 当該物質に応じそれぞれ同表の下欄に定める数量
危険物の規制に関する政令別表第二の上欄に掲げる総務省令で定める物質は、次の表の上欄に掲げる物質とし、同令別表第二の下欄に定める総務省令で定める数量は、次の表の下欄に定める数量とする。
| 政令第1条の10第1項 | 物質 | 数量 |
|---|---|---|
| 第1号 | 圧縮アセチレンガス | 40キログラム |
| 第2号 | 無水硫酸 | 200キログラム |
| 第3号 | 液化石油ガス | 300キログラム |
| 第4号 | 生石灰(酸化カルシウム80パーセント以上を含有するもの) | 500キログラム |
| 第5号 | 毒物のうち別表第一に掲げる物質 | 別表第一の下欄に定める数量 |
| 第6号 | 劇物のうち別表第二に掲げる物質(総務省令で定めるものを含む) | 別表第二の下欄に定める数量(4―メチルベンゼンスルホン酸は省令第2条の表で200キログラム) |
政令第1条の10第1項第6号は、別表第二の物質について、同表の下欄が定める数量以上を対象にしています。
別表第二の最後の欄は、水又は熱を加えること等により人体に重大な障害をもたらすガスを発生する等消火活動に重大な支障を生ずる物質で、総務省令で定めるものとしています。
4―メチルベンゼンスルホン酸は、この総務省令で定める物質として省令第2条の表に加わりました。
貯蔵や取扱いを廃止するときも、法第9条の3第2項で届出が必要です。
数量は、200キログラム以上が基準なのですね。
はい。
省令第2条の表に定められています。
加熱するとどんな蒸気が出るから消防活動の支障になるのか

そこに、消防活動上の留意事項が書かれています。
4―メチルベンゼンスルホン酸等は、加熱されることにより人体に有害な蒸気(主に硫黄酸化物(SO2))を発生することが確認されていること。
当該物質1molから生成した蒸気(主に硫黄酸化物(SO2))はLC50となる空間体積に換算すると基準値(9,780リットル以上)を大きく上回っているとともに、当該蒸気は人体に有害なものであるため、消防活動において支障となるおそれがあることから、消防活動阻害物質に指定することが適当である。
| 加熱温度の範囲 | 1モルから出た有毒な蒸気でLC50となる空間体積(合計) | 基準値9,780リットルとの比較 |
|---|---|---|
| 室温~300℃ | 27.1リットル | 下回る |
| 300~500℃ | 5,720リットル | 下回る |
| 500~800℃ | 14,926リットル | 上回る |
報告書は、毒物劇物の判定基準を踏まえ、1モルの物質が9,780リットル以上の空間をLC50にできるかどうかで見ています。
加熱温度が高いほど蒸気は増え、500~800℃では14,926リットルと基準値を上回りました。
特に多く検出されたのは硫黄酸化物で、試験には1水和物が使われ、発生量は4―メチルベンゼンスルホン酸として換算されています。
火災で加熱されると蒸気が出て消防活動の支障になるおそれがある、というのが指定の理由です。
加熱したときの蒸気の量で、制度に加えるかを決めたのですね。
はい。
硫黄酸化物が特に多く出ると確認されています。
いつから届出が必要になり怠るとどうなるのか

まず、施行日を確認します。
改正省令は、令和5年2月1日から施行すること。
次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。(略)八 (略)第九条の三第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)(略)の規定による届出を怠つた者
届出を怠ると、消防法第44条第8号により30万円以下の罰金又は拘留の対象になります。
届出は、貯蔵や取扱いを始める前に、所轄消防長又は消防署長へ行います。
この省令の附則には、令和5年2月1日の施行を定める規定があり、経過措置に当たる規定は見当たりません。
すでに保有している場合の届出の時期は、所轄の消防機関に確認しておきましょう。
施行前から置いている薬品は、いつまでに届ければよいのでしょうか。
経過措置の定めは見当たらないので、所轄の消防機関に確認してください。
倉庫や工場では明日から何を確認すればよいのか

そのため、確認したい点を先に整理しておきます。 確認したいのは、物質・濃度・数量・届出の4点です。
1点目は、保管している薬品や製剤に4―メチルベンゼンスルホン酸が含まれていないかです。
2点目は、含有率が5%以下かどうかです。製品のラベルや安全データシートで確かめます。
3点目は、貯蔵や取扱いの数量が200キログラム以上になるかどうかです。
4点目は、該当するときに、貯蔵を始める前に所轄消防長又は消防署長へ届け出ることです。
数量の数え方や、すでに保管している分の扱いは、所轄の消防機関で確認しておきましょう。
ラベルの含有率と保管量を、まず確かめればよいのですね。
はい。
該当しそうなら、届出の前に消防機関へ相談してください。
よくある質問
まとめ
含有する薬品と数量を確かめて、必要なら届出を進めます!
消防活動阻害物質の届出も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令別表第一及び同令別表第二の総務省令で定める物質及び数量を指定する省令の一部を改正する省令の公布について(令和4年8月1日 消防危第156号 消防庁次長)
- 4―メチルベンゼンスルホン酸等に係る消防活動上等の留意事項について(令和4年8月1日 事務連絡 消防庁危険物保安室)
- 火災危険性を有するおそれのある物質等に関する調査検討報告書(消防庁)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第9条の3・第44条
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第1条の10・別表第一・別表第二
- 危険物の規制に関する政令別表第一及び同令別表第二の総務省令で定める物質及び数量を指定する省令(平成元年自治省令第2号)第2条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





