店舗や病院を営業しながら増築や改装をすると、配線の切り替えなどで自動火災報知設備やスプリンクラー設備を一時的に止めることがあります。
消防法は消防用設備等を「設置し、及び維持」するよう求めていますが、工事中に止めるときの具体的な手当ては、法律には書かれていません。
この記事では、豊中市消防局の「消防用設備等の設置に関する運用基準」第1部 第2章 第4節 第3「工事中の防火対象物の安全対策と消防計画」を読み、止めるときの6つの措置と届出の流れを番号つきで示します。あわせて、堺市・東大阪市・大阪市の定めとも比べます。
豊中市で、営業中のテナントビルの改装を予定しています。
工事の日だけ自動火災報知設備を止めたいのですが、届け出だけで足りますか?
豊中市の運用基準は、止めるなら代わりに機能を確保する手当てを求めています。
届出の様式も決まっています。
止めること自体は、だめではないのですね。
はい、施工上やむを得ない場合を前提に、6つの措置から必要なものを選びます。
順に見ていきましょう。
- 消防法第17条第1項は消防用設備等を設置し、及び維持するよう求めていて、工事中だけ止めてよいという規定はありません
- 豊中市の運用基準は、施工上やむを得ず止める場合に、止める種類・時間・部分を必要最小限にし、仮設や移設で機能を保つなど6つの措置のうち必要なものを講じるよう定めています
- この6つの措置は、仮使用承認を受けた新築・増築の建物だけでなく、仮使用承認の対象にならない工事中の建物にも、準用の形でそのまま及びます
- 増築等の工事では工事期間中の防火安全対策届出書を正・副2部出し、軽易な工事なら消防用設備等機能停止届出書でもよいとされています
- 堺市は条例と施行規則で協議事項の届出を求め、東大阪市は延べ面積で対象を決めた計画書の提出を求めるなど、工事中の手当ての決め方は市ごとに違います
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目次
国の法令は工事中の消防用設備等をどう扱っているのか

一 特定行政庁が、安全上、防火上及び避難上支障がないと認めたとき。
国の法律には、止めるときの手順までは書かれていないのですね。
はい、だから豊中市の運用基準の中身が大事になります。
次は、豊中市が工事中の建物をどう分けているかです。
豊中市は工事中の建物をどう分けているのか

1 仮使用承認の対象となるもの(中略)
(1) 新築の場合(中略)
(2) 増築等を行い、既存部分を仮使用する場合(中略)
2 仮使用承認の対象とならないもの
前1以外で、工事中の防火対象物を使用する場合は、次の事項を遵守すること。
- 1(1)ア(新築の場合)=消防用設備等の本文と、止めるときの6つの措置(ア)〜(カ)が書かれている
- 1(2)ア(増築等で既存部分を仮使用する場合)=「前(1).アによること」として、1(1)アをそのまま借りている
- 2(1)(仮使用承認の対象とならないもの)=「前1.(1).アによること」として、これも1(1)アを借りている
- 防火管理等も同じ形で、1(2)イと2(2)が1(1)イを借りている
- したがって、どの区分の工事でも、止めるときの6つの措置は同じものが求められる
| 項目 | 1(1) 新築 | 1(2) 増築等で既存部分を仮使用 | 2 仮使用承認の対象外 |
|---|---|---|---|
| 消防用設備等 | 法第17条の基準どおり+止めるときの6つの措置 | 1(1)アによる | 1(1)アによる |
| 防火管理等 | 防火管理者・統括防火管理者、工事中の消防計画など | 1(1)イによる | 1(1)イによる |
| 防火区画 | 耐火建築物は耐火構造の壁・床、それ以外は準耐火構造(下地が不燃材料)の壁・床で区画し、防火戸を設ける | 1(1)ウによるほか、建基令第112条第11項の区画 | 準耐火構造(下地が不燃材料)又は不燃材料(金属・ガラスを除く)の壁・床で区画し、防火戸を設ける(内装工事等の軽易な工事で支障がないものは除く) |
| 避難施設 | 現行建基法令の基準に適合 | 建基令第5章第2節の避難施設を確保 | 直通階段・屋外への出口に通じる通路やバルコニー等を有効に確保 |
| 非常用の進入口 | 現行建基法令の基準に適合 | 建基令第126条の6又は第126条の7の進入口を確保(代替の開口部等がある場合を除く) | 3階以上の使用部分に設ける(基準時以前の建築物で有効な開口部がある場合を除く) |
仮使用の手続をしない改装工事でも、同じ措置が要るのですね。
はい、「前1.(1).アによること」があるので、止めるときの決まりは共通です。
次は、その6つの措置を見ます。
消防用設備等を止めるときの6つの措置とは何か

- (ア)機能を停止する消防用設備等の種類・停止する時間・停止する部分は必要最小限にする
- (イ)自動火災報知設備・非常警報設備・誘導灯を止める場合は、仮設工事等により機能を確保する
- (ウ)消火器・非常警報器具・避難器具・誘導標識の機能の確保に支障が出る場合は、機能が確保できる場所に移設する
- (エ)スプリンクラー設備又は水噴霧消火設備等を止める場合は、消火器や屋内消火栓設備のホースを増やすなど、他の消防用設備等を増強する
- (オ)巡回の回数を増やすなど、監視体制を強化する
- (カ)止める工事は営業時間等以外の時間に行う。ただし、ホテルや病院のように営業時間等が昼夜にわたるものは、昼間に工事をする
スプリンクラーを止めるときは、消火器を増やせばよいのですね。
(エ)では消火器と屋内消火栓のホースが例です。
どれをどれだけ増やすかは、止める範囲を図面で示して所轄の消防署と相談しましょう。
防火管理と火気の扱いでは何を求めているのか

- (ア)消防法第8条・第8条の2にもとづき防火管理者・統括防火管理者を定め、工事中に使用する防火対象物としての消防計画を立てる
- (イ)工事部分の作業には、豊中市火災予防条例第28条(作業中の防火管理)にもとづき火災予防措置を講じる
- (ウ)工事部分に持ち込む可燃物と危険物は最少限度にし、危険物は条例第30条・第31条にもとづき取り扱う
- (エ)工事用シートは、防炎性能を有するものを使う
- (オ)工事部分の整理・整とんを徹底する
- a 作業の前に防火責任者等が安全確認をし、作業中の監視と作業後の点検を行う
- b 断熱材や合成樹脂等を確実に除去してから作業する。除去できない場合は、あらかじめ散水し、火気を使う範囲を不燃材料で区画するなどの防護措置をする
- c 切断は、努めて火花の出ない方法(ワイヤーカッター等)で行う
ウレタンの断熱材がある現場は、火気を使わないのが原則なのですね。
はい、原則として火気を持ち込まないのが運用基準の考え方です。
やむを得ないときは、散水と不燃材料の区画で守ります。
届出は何を出し大阪府内の他市とはどう違うのか

なお、軽易な工事を行う場合にあっては、消防用設備等機能停止届出書によることができる。
- 工事施工責任者・各分担工事者ごとの防火責任者と、統括する防火責任者
- 工事中に使う引火性・爆発性物品の管理
- 溶接器具・バーナーなど火気使用設備器具等の使用場所・種類・使用期間と管理
- 喫煙その他火気の管理
- 火災発生時の建物内への連絡・避難
- 消防機関への通報
- 室の用途・壁の位置と種類・開口部と防火戸の位置がわかる各階平面図
- 避難施設等と消防用設備等ごとの工事期間
- 機能確保に支障が出る避難施設等と消防用設備等の種類・箇所と、代わりの措置の概要
- 工事期間中の使用部分とその用途
| 項目 | 豊中市 | 堺市 | 東大阪市 | 大阪市 |
|---|---|---|---|---|
| 定めている場所 | 運用基準 第1部 第2章 第4節 第3 | 火災予防条例 第38条第2項・施行規則 第5条・同条の解説及び運用 | 火災予防条例 第74条・施行規則 第14条 | 火災予防条例 第29条第2項 |
| 対象 | 工事中の防火対象物を使用する場合(仮使用の対象か否かで区分) | (1)項〜(4)項・(5)項イ・(6)項・(9)項イ・(16)項イの防火対象物の工事等 | 同じ用途で延べ3,000平方メートル以上と、(16の2)項で1,000平方メートル以上の工事 | (19)項・(20)項を除く防火対象物の工事等 |
| 止めるときの手当て | 6つの措置を本文で列挙 | 協議事項に「消防用設備等の維持管理又は代替措置」を含め、記入例を別表2で例示 | 計画書の提出を定める(措置の列挙は条例にない) | 関係者と施工責任者の協議で定める |
| 消防への提出 | 防火安全対策届出書を正・副2部(軽易な工事は機能停止届出書でも可) | 協議して定めたとき速やかに様式第2号 | 工事着手の7日前までに様式第21 | 条例・施行規則に提出の定めは見当たらない |
豊中市では、止める設備と期間を届出書に書いて出すのですね。
はい、工事期間中の防火安全対策届出書を正・副2部です。
軽い工事なら機能停止届出書でもよいとされています。
よくある質問
まとめ
止める設備と時間を工程表に書き出して、工事の前に豊中市の消防署へ相談します!
止める範囲と代わりの手当てを決めておけば、営業への影響も最小限で済みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 豊中市消防局「消防用設備等の設置に関する運用基準」第1部 第2章 第4節 第3 工事中の防火対象物の安全対策と消防計画(消防用設備等機能停止届を含む) https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kurashi/bosai/toyonakafiredept/todokede/setubiunnyoukijun.html
- 豊中市火災予防条例 第28条(豊中市例規集)
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」火災予防条例 第38条・同施行規則 第5条【解説及び運用】・別表2 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市火災予防条例 第74条・同施行規則 第14条(東大阪市例規集)、東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 大阪市火災予防条例 第29条(大阪市例規データベース)、大阪市消防局 消防用設備等の設置に係る運用基準 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 吹田市消防本部「消防用設備等設置指導等に関する質疑応答集」 https://www.city.suita.osaka.jp/anzen/1017917/1017954/1044807.html
- 消防法 第17条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186
- 消防法施行規則 第3条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
- 建築基準法 第7条の6(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
※本記事は公表されている法令および豊中市・堺市・東大阪市・大阪市・吹田市の公開資料に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたものです。準用のたどり方、(カ)の書き分けの読み方、他市との対比は、資料を読んだうえでの整理であり、各市が明記しているものではありません。「見当たらない」とした項目は、各市の公開資料を確認した範囲でのものです。運用基準は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防局で確認してください。個別の工事の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。






