消火器のように見えても、消防法の上で消火器にあたるかどうかは、形や名前では決まりません。
昭和の消防庁の通知には、スプレー缶のような器具や、配管のない自動の消火装置、投げて使う消火弾について、どう扱うかを答えた質疑が残っています。
分かれ目になるのは、消防法第21条の2の検定と、消防法施行令第32条の特例です。
この記事では、五つの質疑を、条文に照らして読みます。どの商品が検定の対象で、どの商品が特例で認められたのかを順に確かめます。
いいえ、質疑ごとに扱いが分かれています。
検定の対象になったものと、特例で認められたものがあります。
人が操作して消火剤を放出するかなどが、判断の材料でした。
順に、質疑と条文を見比べます。
この記事の結論
- 熱で自動的に作動する配管のない消火装置は、簡易消火用具としては認めることは適当でないと答え、条件を付けて設置を認めています
- スプレー式の器具は、人が操作して圧力で消火剤を放出することから消火器に該当すると答えています
- 消火器に該当する輸入品は、令第37条第1号にあたり、検定に合格した旨の表示がなければ販売も陳列もできません
- 投げて使う消火弾は、令第32条を適用して簡易消火用具と認められ、6個でA火災用1能力単位と扱われました
- 地下道に可燃物がなく通行のみに使う場合でも、消火器具の省略に令第32条を適用することは適当でないと答えています
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熱で自動的に作動する配管のない消火装置は、簡易消火用具として認められるのか
最初の質疑は、パイプレスケミカルスプリンクラーと称する消火液放射装置です。質疑の資料によると、容器本体に消火液を収めた器と、ヒュージブルリンクを使った熱感知部、炭酸ガス容器などからなり、室内の温度が72度に達するなどして作動すると、消火液が放射される構造です。令第7条第2項第1号は、簡易消火用具として、水バケツ、水槽、乾燥砂、膨張ひる石又は膨張真珠岩を挙げています。この装置が、その簡易消火用具に当たるかが問われました。
問(要旨) パイプレスケミカルスプリンクラー(商品名ケスジャン)について、次のとおり照会する。1 消防法施行令第7条第2項第1号に規定する簡易消火器具として認められるか。2 簡易消火用具として認められるならば、適応火災はいずれとすべきか。3 能力単位は、いかになるか。4 設置場所の要件としての室の規模は、どの程度の広さまで認めるのが適当か。5 消防法施行規則第6条第7項の規定は、そのまま適用してさしつかえないか。
答(要旨) 1 簡易消火用具として認めることは適当でない。2及び3 1により承知した。4 添付された資料から判断すれば、次の(1)により設置する場合に限り、設置を認めてさしつかえないものと解する。なお、当該機器の有効範囲の部分については、消防法施行令第32条を適用し、消火器具の設置個数を減少することができるものと解する。(1)ア 設置場所は、消防法第17条第1項の規定により、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備又は水噴霧消火設備等の設置が義務付けられた防火対象物又はその部分以外の場所とする。イ 適応火災はA火災とする。ウ 当該機器の取付け面の高さは4メートル以下とする。エ 当該機器は、床面積6平方メートルにつき1個以上の個数を設置する。オ 床面積100平方メートル未満ごとに、不燃材料等で区画された部分に設ける。5 4により承知した。
(昭和53年4月22日消防予第74号・神奈川県あての回答)
簡易消火用具としては認めず、条件を付けて設置を認めると答えています。
答えは、簡易消火用具として
認めることは適当でないとしたうえで、設置場所、適応火災、取付け面の高さ、個数、区画という
五つの条件を満たす場合に限り、設置を認めてさしつかえないとしています。その有効範囲の部分については、令第32条を適用し、消火器具の設置個数を減らせるとしています。
なお、答えは、この装置の能力単位が何単位になるかは、述べていません。また、この判断は、質疑の資料に記された製品を前提にしたものです。
簡易消火用具ではないけれど、置くこと自体は認められたんですね。
答えは、簡易消火用具とは認めず、条件を満たす場合に限って設置を認めるです。
能力単位までは、述べていません。
スプレー式の消火器と称する商品は、検定を受けなくても販売してよいのか
二つ目は、スプレー方式の器具です。問いには、容器の構造や放射時間などから見て、消火器の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第27号)に適合しないと考えるという前置きがあります。消防法第21条の2第4項は、検定対象機械器具等について、検定に合格した旨の表示が付されているものでなければ、販売し、又は販売の目的で陳列してはならないと定めています。令第37条第1号は、検定対象機械器具等の一つに消火器を挙げています。このスプレー式の器具に、その規定が及ぶかが問われました。
問(要旨) 最近、スプレー方式の「消火器」と称するものが販売されているが、容器の構造、放射時間等から考えても、現行の「消火器の技術上の規格を定める省令」(昭和39年9月17日自治省令第27号)に適合しないと考える。したがって、法第21条の2第4項に抵触するのではないか。
答(要旨) 設問の器具は、人が操作し、圧力によって消火剤を放出することから、「消火器」に該当する。したがって、法第21条の2に規定する型式承認及び個別検定に合格したものでなければ、販売し、又は販売の目的で陳列してはならず、また、設置、変更又は修理の請負に係る工事に使用してはならないことになる。
(昭和54年6月22日消防予第118号〔37〕・各都道府県消防主管部長あての回答)
人が操作して圧力で消火剤を放出することから、消火器に該当すると答えています。
答えは、規格に適合するかどうかの前に、
人が操作し、圧力によって消火剤を放出することを理由に、消火器に該当するとしています。そのため、型式承認と検定に合格したものでなければ、
販売も陳列もできず、設置などの工事にも使えないことになるとしています。
なお、答えは、この器具が規格の個別の項目に適合するかどうかは、述べていません。また、「個別検定」は当時の言葉で、現在の条文では、第21条の9第1項の表示が付されているものかどうかが基準になっています。
名前がスプレーでも、消火器として扱われるんですね。
答えは、人が操作して消火剤を放出するので、消火器に該当するです。
規格の個別の項目までは、述べていません。
消火器に該当する輸入品は、検定の表示がなければ販売できないのか
三つ目は、瞬間消火ガスと称して販売されていた輸入品です。質疑では、昭和54年6月22日付の消防予第118号(前の質疑と同じ通知)を引き、この器具が消火器に該当して法第21条の2の検定が必要と思われると尋ねています。問いに添えられた仕様には、総重量が420グラム、内気圧が5.7キログラム毎平方センチメートル、薬剤成分がハロン1211、容器の形状は別添のカタログのとおりと書かれていました。
問(要旨) 最近、瞬間消火ガスと称して下記のものが販売されているが、昭和54年6月22日付消防予第118号によると、この器具は消火器に該当し、消防法第21条の2に規定する検定が必要なものと思われるが、見解を示されたい。仕様は、総重量420グラム、内気圧5.7キログラム毎平方センチメートル、薬剤成分ハロン1211。
答(要旨) お見込みのとおり。なお、設問の器具は、消防法施行令第37条第1号の消火器に該当するので、消防法第21条の2の規定により、型式承認をされ個別検定に合格した旨の表示を付したものでなければ、販売し、又は販売の目的で陳列してはならないとされている。したがって、この趣旨を徹底するよう、管下市町村及び関係業界等を十分指導されたい。
(昭和56年1月10日消防予第6号〔昭和56年3月27日消防予第59号〔24〕〕・京都府あての回答)
令第37条第1号の消火器に該当し、検定に合格した表示がなければ販売できないと答えています。
答えは、問いのとおり、その器具が
令第37条第1号の消火器に当たるとしています。そのうえで、型式承認と検定に合格した旨の
表示を付したものでなければ、販売の目的での陳列も認められないとして、市町村と関係業界の指導を求めています。
なお、答えは、この器具の消火性能そのものは、述べていません。
答えは、消火器に該当するので、検定に合格した旨の表示が必要です。
消火性能そのものまでは、述べていません。
投げて使う消火弾は、令第32条を適用すれば簡易消火用具になるのか
四つ目は、投弾型消火弾です。質疑の資料によると、容器の液の容量は800ccで、液の成分は塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどです。液の比重は1.1以上、容器の材質は、本体がポリプロピレンとされています。令第7条第2項第1号は、簡易消火用具として、水バケツなどの4種類を挙げています。この消火弾を、水バケツに代わるものとして認められるかが問われました。
問(要旨) 下記に示す消火弾商品名「ブツトフアイアー」について、消防法施行令第7条第2項第1号に定める水バケツに代わるものとして、消防法施行令第32条の特例認定申請があったので、これに対する取扱いについて御教示願いたい。
一般仕様は、液の容量が800cc、液の成分が塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、明ばん、液の比重が1.1以上、容器の形状は投弾型である。
答(要旨) 設問の製品は、添付された資料から判断して、消防法施行令第32条を適用し、同令第7条第2項第1号に規定する簡易消火用具として認めてさしつかえない。なお、当該製品6個をもってA火災用1能力単位を有するものとして取り扱われたい。
(昭和57年11月13日消防予第229号〔昭和58年3月1日消防予第32号〔9〕〕・石川県あての回答)
令第32条を適用して簡易消火用具と認め、6個でA火災用1能力単位と答えています。
答えは、消火弾を令第7条第2項第1号の
簡易消火用具として認め、能力を
6個でA火災用1能力単位と数えるよう求めています。
なお、答えは、ここで認めたのが質疑に添えられた資料の製品であることを前提としています。他の製品まで同じ数え方が当てはまるとは述べていません。
答えは、簡易消火用具として認め、6個でA火災用1能力単位です。
他の製品の数え方までは、述べていません。
人が通るだけの地下道は、消火器具を省略してよいのか
最後は、地下道の消火器具の省略です。令別表第1の(16の3)項は、建築物の地階で連続して地下道に面して設けられたものと、その地下道とを合わせたもので、(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イの用途に供される部分が存するものに限ると定めています。問いは、この防火対象物の地下道の部分に可燃物などがなく、通行の用にのみ供されている場合に、そこに置く消火器具を、令第32条を適用して省略できるかというものです。令第10条第1項は、(16の3)項を含む防火対象物に、消火器具の設置を定めています。
問(要旨) 令別表第1(16の3)項に掲げる防火対象物の地下道の部分に、可燃物等がなく、通行の用のみに供されている場合、当該地下道部分に設置する消火器具について、令第32条の規定を適用して省略することはできないか。
答(要旨) 設問の場合、令第32条の規定を適用することは適当でない。
(昭和56年12月18日消防予第299号「第4」・各都道府県消防主管部長あての回答)
可燃物がなく通行のみの地下道でも、令第32条を適用することは適当でないと答えています。
答えは、地下道の部分に
可燃物などがなく、通行の用のみに供されているという前提を置いても、消火器具の省略に令第32条を適用することを
適当でないとしています。
なお、答えは、その理由については、述べていません。
答えは、消火器具の省略に令第32条を適用することは適当でないです。
理由までは、述べていません。
よくある質問
Q消火器かどうかは、商品の名前で決まりますか?
A質疑の答えは、名前ではなく、人が操作し、圧力によって消火剤を放出することを理由に、スプレー式の器具を消火器に該当するとしています。個別の商品がどれに当たるかは、所轄の消防署に確かめてください。
Q消火器に該当する商品は、検定の表示がなければ設置工事にも使えませんか?
A消防法第21条の2第4項は、検定対象機械器具等のうち消防の用に供する機械器具又は設備について、表示が付されているものでなければ、設置、変更又は修理の請負に係る工事に使用してはならないと定めています。
Q質疑で認められた消火弾は、消火器の代わりに置いてよいのですか?
A質疑の答えは、令第7条第2項第1号の簡易消火用具として認めたものです。消火器の代わりに置いてよいとは述べていません。なお、規則第6条第7項は、簡易消火用具の能力単位の合計が、消火器の能力単位の合計の二分の一を超えないよう定めています。
Q質疑の回答は、今もそのまま使えますか?
A質疑の回答は昭和53年から57年のものです。その後の改正で変わっている条文や運用があります。現行の令、規則と、所轄の消防署の運用に確かめてください。
まとめ
✔配管のない自動の消火装置は、簡易消火用具としては認めることは適当でないとされ、五つの条件を満たす場合に限り設置が認められた
✔スプレー式の器具は、人が操作し圧力で消火剤を放出することから消火器に該当するとされた
✔消火器に該当する輸入品は、令第37条第1号にあたり、検定に合格した旨の表示がなければ販売も陳列もできない
✔投げて使う消火弾は、令第32条を適用して簡易消火用具と認められ、6個で1能力単位と扱われた
✔可燃物がなく通行のみの地下道でも、消火器具の省略に令第32条を適用することは適当でないとされた
✔質疑は昭和53年から57年のもの。現行の条文と運用は、その後の改正で変わっている場合がある
✔自分の建物や商品の扱いは、所轄の消防署に確かめる
消火器に似た商品でも、検定の対象かどうかで扱いが変わるんですね。
まずは、うちに置いてある消火用具の表示を見直してみます!
進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
防火管理はプロにお任せ下さい
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この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- 消防法第21条の2、消防法施行令第7条第2項第1号・第10条・第32条・第37条、消防法施行令別表第1、消防法施行規則第6条
- 消防庁の通知・回答(昭和53年4月22日消防予第74号、昭和54年6月22日消防予第118号、昭和56年1月10日消防予第6号、昭和56年12月18日消防予第299号、昭和57年11月13日消防予第229号)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。