非常電源専用受電設備や自家発電設備は、規則が配電盤、距離、床面積まで細かく基準を定めています。
ところが、建物の構造や用途によっては、基準どおりの条件がそろわない場面も出てきます。
昭和53年の消防庁の通知には、パイプシャフト室の分電盤、電力計、既存建物の配線、複合用途ビルの床面積、自家発電設備の共用について答えた質疑が残っています。
この記事では、その質疑を五つの論点に分け、現行の条文に照らして読みます。非常電源まわりの設備が、どこまで融通が利くのかを順に見ていきます。
非常電源まわりって、設置場所も機器も全部マニュアルどおりにしないとだめなんですか。
質疑では、条件つきで柔軟に扱った例が残っています。
順番に見ていきましょう。
うちのビルだと、配電盤や自家発電の置き場所に悩んでいます。
では、質疑の答えと条文を見比べていきましょう。
番号は、現行の規則に合わせて引いています。
この記事の結論
- パイプシャフト室の分電盤は、耐火性能の規定を除いた基準に適合すればよいと答えています
- 非常電源専用受電設備の電力計は、出火や延焼のおそれが少ない場所なら耐熱保護を省略できると答えています
- 既存建物の配線は、開口部から防火上有効な距離を有するよう施工すれば信頼性の高い方式と認めると答えています
- 複合用途防火対象物の非常電源は、特定用途に供される部分の床面積の合計で判断すればよいと答えています
- 自家発電設備は、火災でない停電時に限り確実に切り分けられる仕組みがあれば一般負荷と共用してよいと答えています
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パイプシャフト室の分電盤は、JIS規格に適合するものでよいのか
規則第12条第1項第4号イ(ホ)は、低圧で受電する非常電源専用受電設備の配電盤や分電盤に、消防庁長官が定める基準に適合する第一種配電盤や第一種分電盤を使うよう定めています。パイプシャフト室のように、不燃材料で区画された機械室に類する場所に設ける場合の扱いが問われました。
問 パイプシャフト室が1時間耐火以上の構造であればJIS C8480に適合する分電盤でよいか。
(昭和53年2月21日消防予第32号・各都道府県消防主管部長あて回答)
答 配電盤及び分電盤の基準(昭和50年5月28日消防庁告示第8号)のうち耐火性能に関する規定を除いた基準に適合するものとされたい。
第一種分電盤でなくても、耐火性能の規定を除いた基準に適合すればよいと答えています。
パイプシャフト室の壁や扉そのものが不燃材料や防火戸で区画されているなら、分電盤の側で重ねて耐火性能を持たせる必要はないという考え方です。現行の規則第12条第1項第4号イ(ホ)(3)は、不燃材料で区画された機械室その他これらに類する室に設ける場合、第一種以外の配電盤や分電盤を使えると定めており、
この取扱いと同じ方向にあります。
JIS規格の分電盤なら、それだけで使えるんですか。
答えは、耐火性能の規定を除いた基準に適合すれば可、です。
部屋の区画が前提になります。
非常電源専用受電設備の電力計に、耐熱保護は必要なのか
低圧で受電する非常電源専用受電設備には、配電盤や分電盤のほかに、電力計を設ける場合があります。火災や延焼の危険が少ない場所に設ける電力計にまで、配電盤と同じ耐熱保護を求めるべきかが問われました。
問 低圧で受電する非常電源専用受電設備に設ける電力計について耐熱保護を行う必要があると思うがどうか。
(昭和53年2月21日消防予第32号・各都道府県消防主管部長あて回答)
答 お見込みのとおり。なお、出火危険、延焼危険の恐れが少ない場所に設ける場合は耐熱保護をしないことができる。
原則は耐熱保護が必要だが、出火や延焼のおそれが少ない場所に限り省略できると答えています。
一律に耐熱保護を外せるわけではなく、
場所の危険性を見極めたうえでの例外という位置づけです。配電盤や分電盤そのものの耐火性能に関する規定を除く取扱い(第1問)と同じく、周囲の防火環境が整っていることが条件になっています。
電力計は全部耐熱保護しないといけないと思っていました。
答えは原則必要、場所次第で省略可です。
置き場所の確認が先になります。
既存建物の非常電源は、どんな配線なら信頼性が高いと認められるのか
既存の防火対象物に対する消防用設備等の技術上の特例基準では、延べ面積3,000平方メートル以下の特定防火対象物について、ループ方式配電や地中配電等、信頼性の高い方式により受電されていることを条件に、一定の緩和を認めています。しかし、これらの配電方式がごく一部の地域でしか使えない県もあり、代わりになる方式が問われました。
問(要旨) 「既存防火対象物に対する消防用設備等の技術上の特例基準の適用について」(昭和50年7月10日消防安第77号)の通達中、特定防火対象物で延べ面積3,000平方メートル以下のものにあつては、ループ方式配電、地中配電等信頼性の高い方式により受電されていることとされているが、当県内においてはこれらによる配電はごく一部の地域のみであり、当該要件を満たすことは不可能であるので、これらに準ずる信頼性の高い方式による受電とはどのようなものをいうのか。
(昭和53年9月9日消防予第179号〔7〕・各都道府県消防主管部長あて回答)
答 設問の場合、開口部から防火上有効な距離を有するように施工された屋側配線等をいう。
ループ方式配電や地中配電そのものでなくても、開口部から防火上有効な距離を取って施工した屋側配線等なら信頼性の高い方式と認めると答えています。
配電の方式そのものを限定するのではなく、
開口部からの延焼リスクを避けられているかという実質面で判断している点がポイントです。地域の配電事情によらず、既存の屋側配線でも条件を満たせる余地があります。
うちの地域だと、ループ方式配電なんて見たことないです。
答えは開口部から離した屋側配線でも可、です。
方式名より距離が肝心です。
複合用途防火対象物の非常電源は、どの床面積で判断するのか
規則第12条第1項第4号は、特定防火対象物で延べ面積が1,000平方メートル以上のものについて、屋内消火栓設備の非常電源を自家発電設備、蓄電池設備または燃料電池設備に限っています。複合用途防火対象物では、令第9条のみなし規定により用途ごとに基準が適用されるため、この「延べ面積」をどう数えるかが問われました。
問(要旨) 令第11条で規定する屋内消火栓設備は、令第9条の規定の適用があるため、規則第12条第4号でいう「特定防火対象物で延べ面積が1,000平方メートル以上」という場合の延べ面積とは、設備の設置を要する特定用途部分の床面積の合計と解されるのではないか。
(昭和53年9月9日消防予第179号〔7〕・各都道府県消防主管部長あて回答)
答(要旨) 複合用途防火対象物で令第9条の規定が適用される場合の消防用設備等の非常電源は、当該用途ごとに判断して、特定防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が1,000平方メートル以上の場合、当該用途に供される部分に設置する非常電源を自家発電設備又は蓄電池設備とすれば足りる。また、令第9条の規定の適用のないものについては防火対象物全体で判断することが必要である。
建物全体の延べ面積ではなく、特定用途に供される部分の床面積の合計で判断すればよいと答えています。
ただし答えは、
令第9条の適用を受けない防火対象物は防火対象物全体で判断するとも述べており、すべての建物に部分判断が及ぶわけではありません。自分の建物がどちらに当たるかを、まず確かめる必要があります。
テナントが入った建物だと、延べ面積の数え方が変わるんですね。
答えは用途部分の床面積の合計です。
令第9条が効くかどうかが分かれ目です。
自家発電設備は、火災でない停電時に限り一般の電気設備と共用してよいのか
規則第12条第1項第4号ロは、自家発電設備について、常用電源が停電したときに自動的に非常電源へ切り替わることなどを定めています。火災でない停電のときに限り、この自家発電設備を一般の照明やコンセントの電源としても使ってよいかが問われました。
問(要旨) 火災時でない停電時において、次の方法により消防用設備等の自家発電設備を一般負荷に共用してよいか。停電になれば一般負荷の遮断器を自動的に断ち、消防用負荷と切り離したうえで、停電が火災によるものでないことを確認してから、手動で一般負荷の遮断器を投入して使用する。もし確認が誤っていても、火災である場合には一般負荷に投入できず、使用できないこととする。
(昭和53年4月28日消防予第83号・高知県総務部長あて回答)
停電になれば一般負荷を自動的に切り離し、火災でないことを確認してから手動で戻す仕組みであれば、共用してさしつかえないと答えています。
答えの前提は、
火災による停電では一般負荷に絶対に投入できない仕組みになっていることです。確認を誤った場合でも、火災時には一般負荷側の遮断器が投入できないよう設計されていることが条件で、単に自家発電設備を兼用するというだけでは認められません。
自家発電設備を、停電のたびに一般の電気にも使えたら助かります。
答えは火災時は絶対に一般負荷に回さない仕組みが条件です。
確実な自動遮断が前提になります。
よくある質問
Q非常電源専用受電設備の配電盤や電力計に、第一種配電盤より簡易なものを使えますか?
A質疑の答えは、不燃材料で区画された機械室等や、出火・延焼のおそれが少ない場所に限り、耐火性能や耐熱保護の規定を除いた基準でよいとしています。設置場所の条件は所轄の消防署に確かめてください。
Qループ方式配電が使えない地域では、非常電源の配線はどうすればよいですか?
A質疑の答えは、開口部から防火上有効な距離を有するように施工された屋側配線等であれば、信頼性の高い方式と認めるとしています。
Q自家発電設備を一般の電気設備と共用するには、何が条件になりますか?
A質疑の答えは、火災による停電では一般負荷に投入できない自動遮断の仕組みがあることを条件に、火災でない停電時に限り共用してさしつかえないとしています。
Q質疑の回答は、今もそのまま使えますか?
A質疑の回答は昭和53年のものです。その後の改正で変わっている条文や運用があります。現行の規則、告示と、所轄の消防署の運用に確かめてください。
まとめ
✔パイプシャフト室の分電盤は、耐火性能の規定を除いた基準に適合すればよいとされた
✔非常電源専用受電設備の電力計は、出火・延焼のおそれが少ない場所なら耐熱保護を省略できるとされた
✔既存建物の配線は、開口部から防火上有効な距離を有する屋側配線でも信頼性の高い方式と認められるとされた
✔複合用途防火対象物の非常電源は、特定用途に供される部分の床面積の合計で判断してよいとされた
✔自家発電設備は、火災時に一般負荷へ絶対に投入できない自動遮断の仕組みがあれば、停電時に限り一般負荷と共用できるとされた
✔質疑は昭和53年のもの。現行の条文と運用は、その後の改正で変わっている場合がある
✔自分の建物の設備の扱いは、所轄の消防署に確かめる
非常電源まわりも、条件つきで融通が利く場合があるんですね。
まずは、うちの設備の置き場所や配線がどれに当たるか見てみます!
進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
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この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- 消防法施行令第9条、第32条
- 消防法施行規則第12条第1項第4号イ(ホ)、同号ロ
- 非常電源専用受電設備の基準(昭和50年消防庁告示第7号)、配電盤及び分電盤の基準(昭和50年5月28日消防庁告示第8号)
- 消防庁の通知・回答(昭和53年2月21日消防予第32号、昭和53年4月28日消防予第83号、昭和53年9月9日消防予第179号〔7〕)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。