地下駐車場や整備場には、広さによって泡・粉末などの特別な消火設備がいります。
粉末消火設備の消火剤の量は、国の基準では防護区画の体積や防護対象物の表面積から計算します。
大阪市消防局の運用基準には、駐車場や整備場を「放射区域」に分けて、床面積から量を決める特例があります。
しかも、その中身の一部は二酸化炭素や自動火災報知設備の基準を借りて組み立てられています。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、借りている規定を順にたどって、堺市・東大阪市と比べます。
大阪市で、地下に駐車場がある事務所ビルを計画しています。
粉末消火設備を考えているのですが、駐車場をいくつかに分けて守る方法があると聞きました。
大阪市の運用基準に、放射区域ごとに分けて設ける特例があります。
放射区域が4つ以上並ぶと、貯蔵容器を2個に分けるのが条件です。
容器を分ける理由や、消火剤の量の決め方も知りたいです。
はい、量は床面積1平方メートル当たり3キログラムか3.6キログラムで決めます。
根拠を順にたどっていきましょう。
- 国の基準では、駐車の用に供される部分の粉末消火設備は第三種粉末を使い、量は消防法施行規則第21条第3項(体積や表面積から計算)で決めます
- 大阪市の運用基準は、自動車の修理・整備の部分と駐車の部分について、令第32条又は条例第47条を適用する特例基準として、放射区域ごとに設ける方法を定めています
- 特例は令第18条(第2号〜第4号を除く)と規則第21条第2項・第4項の「例による」とし、量を決める規則第21条第3項は借りずに、床面積で決め直しています
- 放射区域が4以上並ぶと貯蔵容器を2個にして交互に受け持たせ、量は受け持つ最大の区域の床面積×3キログラム、区画して1個にするなら隣り合う2区域の合計×3.6キログラムです
- 堺市は同じ考え方を局所放出方式の細目に置き、1個にできる条件(3区域以下ごとの間仕切)や量の決め方が大阪市と違います。東大阪市の公開資料には粉末消火設備の基準がありません
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目次
国の基準で駐車場の粉末消火設備はどう決まるのか

消防法施行令第13条第1項の表は、駐車の用に供される部分で、地階か2階以上の階は200平方メートル以上、1階は500平方メートル以上、屋上部分は300平方メートル以上のもの(車両がすべて同時に屋外に出られる構造の階を除く)と、機械装置で駐車させる収容台数10以上のものに、水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末のいずれかの消火設備を求めています。
自動車の修理又は整備の用に供される部分も、地階か2階以上の階は200平方メートル以上、1階は500平方メートル以上で、泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末のいずれかが必要です(修理・整備の部分の記事で解説しています)。
粉末消火設備を選んだときの技術上の基準は、消防法施行令第18条と消防法施行規則第21条です。
| 方式 | 国の基準での量の決め方(第三種粉末) |
|---|---|
| 全域放出方式 | 防護区画の体積1立方メートル当たり0.36キログラム。開口部に自動閉鎖装置がなければ、開口部1平方メートル当たり2.7キログラムを足す |
| 局所放出方式 | 燃焼面が一面に限られる場合は防護対象物の表面積1平方メートル当たり5.2キログラム、それ以外は式で求めた量に防護空間の体積を掛ける。どちらも1.1倍する |
| 防護区画・防護対象物が2以上 | それぞれ計算した量のうち最大の量以上(第3号) |
ここまでが国の基準です。大阪市の特例は、この国の基準のどこを借りて、どこを差し替えているかを見ると読みやすくなります。
国の基準だと、駐車場の広さや天井の高さで量が大きく変わりそうですね。
はい、全域放出なら体積で計算します。
大阪市の特例は放射区域の床面積で量を決めるのが大きな違いです。
- 消防法施行令第13条第1項が、駐車や修理・整備の部分に粉末消火設備などを求める
- 消防法施行令第18条と消防法施行規則第21条が、粉末消火設備の技術上の基準を決める(量は規則第21条第3項、消火剤は第4項第1号で第三種粉末)
- 大阪市の運用基準 第10節 第7 特例基準の柱書が、令第32条又は条例第47条を適用すると決める
- 第7 2の柱書が、令第18条(第2号〜第4号を除く)と規則第21条第2項・第4項の「例による」とし、量の規定(規則第21条第3項)は借りない
- (1)〜(3)が、貯蔵容器の数・消火剤の量(3キログラム・3.6キログラム)・放射区域の面積(50平方メートル以上)を決め直す
- (4)が、起動装置に二酸化炭素を放射する不活性ガス消火設備の基準(第2.9)を準用し、感知器は規則第23条第4項の例と自動火災報知設備の基準(第4)による
大阪市の特例はどの規定を借りて組み立てられているのか

条例第47条は大阪市火災予防条例の規定で、この記事ではその中身には触れず、運用基準が「令第32条又は条例第47条」を挙げていることだけを確認します。
第7の見出しには◆が付いていません。大阪市の運用基準の凡例では、無印は法令基準(法令と消防庁予防課長通知等の法令解釈基準を含む)、◆は行政手続法上の行政指導基準です。
駐車や整備の部分を扱うのは第7 2です。
| 国の規定 | 中身 | 第7 2での扱い |
|---|---|---|
| 令第18条第1号・第5号・第6号 | 噴射ヘッドの設置、容器の置き場所、非常電源 | 借りる(例による) |
| 令第18条第2号・第3号 | 移動式のホース接続口(15メートル)とホースの長さ | 除く |
| 令第18条第4号 | 消火剤の量は総務省令で定める | 除く(量は(2)で決め直す) |
| 規則第21条第2項 | 局所放出方式の噴射ヘッド | 借りる |
| 規則第21条第3項 | 方式ごとの量の計算(体積・表面積) | 挙げていない |
| 規則第21条第4項 | 消火剤の種類(駐車は第三種粉末)、容器・配管・起動装置などの細目 | 借りる |
つまり大阪市の特例は、部屋全体を消火剤で満たす全域放出ではなく、床を区切った放射区域ごとに放射する方式を、量の決め方だけ差し替えて認める形になっています。
「例による」と書いてあるところは、国の条文をそのまま当てはめるのですね。
はい、除くと書かれた号と、挙がっていない項が差し替えの部分です。
次は、その差し替えた中身を見ます。
大阪市では貯蔵容器の数と消火剤の量をどう決めるのか

一列なら1番目と3番目、2番目と4番目を同じ容器に、2行2列なら対角線上の区域どうしを同じ容器にします。
こうすると、隣り合う区域は必ず別の容器が受け持つことになり、配管も別系統です。
一方、隣り合う区域どうしが不燃材料で区画されていれば、容器は1個でよいとしています。 量は(2)、区域の広さは(3)が決めています。
| 設け方 | 計算 | 貯蔵する量 |
|---|---|---|
| 容器2個((1)ア・(2)ア) | 容器A=①③のうち大きい③70平方メートル×3キログラム 容器B=②④のうち大きい②80平方メートル×3キログラム | A=210キログラム以上 B=240キログラム以上 |
| 容器1個((1)イ・(2)イ) | 隣り合う2区域の合計(①②=140、②③=150、③④=120)のうち最大の150平方メートル×3.6キログラム | 540キログラム以上 |
1個にするには隣り合う区域ごとの不燃区画が条件なので、区画できない駐車場で区域が4以上なら2個と読めます。
なお、区域が2つか3つで区画もない場合の容器の数は、第7 2に書かれていません。計画の段階で所轄の消防署と協議するのが確実です。
どの区域も50平方メートル以上にする必要があるので、細かく区切りすぎることはできません。
容器を2個にするのは、隣の区域に燃え広がったときの備えなのですね。
運用基準に理由は書かれていませんが、隣り合う区域を別の容器と別の配管で守る形です。
次は、どうやって放射を始めるかを見ます。
大阪市では起動装置と感知器をどう設けるのか

| 準用する箇所 | 中身(要約) |
|---|---|
| (1)イ | 1の防護区画の起動装置は1個。出入口が反対方向にあるときは2個にできる |
| (1)ウ〜カ | 起動装置と表示が見分けられる明るさ、保安上の注意事項の表示、いたずら防止、雨水がかかる場所の防滴 |
| (2)ウ | 自動と手動の切替えは防護区画ごと(安全上支障がなければ一括切替えも可) |
| (3) | 自動起動方式に設ける手動式の起動装置は、感知器の作動と手動の操作で放出する |
そのうえで、感知器について2つを加えています。
つまり、粉末消火設備を動かす感知器は、自動火災報知設備とは別に専用の熱感知器を放射区域ごとに設け、付け方は自動火災報知設備の基準を借りる、という連鎖です。
人が常時いない駐車場などでは、専用にしないことができるとしています。
この書き方は、同じ節の全域放出方式の起動装置(第2 11)とほぼ同じで、「防護区画」が「放射区域」に変わっているのが違いです。
感知器まで、放射区域ごとに分けるのですね。
はい、区域ごとに感知して、その区域の選択弁を開く仕組みです。
最後に、堺市と東大阪市を見ます。
堺市や東大阪市でも同じ扱いなのか

設置場所の決まりから、別の節を借りています。
オーバーヘッド方式の定義は、第9の該当箇所には見当たりませんでした。採用するときは堺市消防局に方式の説明を確かめてください。
貯蔵容器の数と量は、(3)が決めています。
(イ) 放射区域が相接して複数ある場合で隣接する3放射区域以下ごとに防火上有効な間仕切等で区画されている場合は、貯蔵容器等を1個とすることができる。
ただし、放射区域が隣接して2個のみの場合で、放射区域が相互に3m 以上ラップする場合にあっては、消火剤の量の最大となる放射区域の量以上とすることができる。
(ウ) 駐車の用に供される部分にあっては、省令第21 条第3 項第2 号及び第3 号において、防護対象物の表面1 ㎡当りの消火剤量の割合で計算した量とあるのは、放射区域の床面積1 ㎡当りの消火剤の量と読み替えること。
そして(ウ)で、国の局所放出方式の計算(規則第21条第3項第2号・第3号)の「表面積」を「放射区域の床面積」と読み替えます。
この読み替えをそのまま当てはめると、第三種粉末なら床面積1平方メートル当たり5.2キログラムに1.1を掛けた割合になると読めますが、堺市の審査基準にこの数字は書かれていないので、計算は堺市消防局と確かめてください。
直列は1個おき、並列は対角線上という組み合わせ(第9-5図・第9-6図)は、大阪市と同じです。
東大阪市は、公開している6つの運用基準(避難器具・自動火災報知設備・非常コンセント・連結送水管・消火器具・誘導灯)に粉末消火設備の基準がなく、比べることができませんでした。
3市を並べると、次のとおりです。
| 比べる点 | 大阪市(運用基準 第10節 第7 2) | 堺市(審査基準 第9 Ⅱ3) | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 位置づけ | 特例基準(令第32条又は条例第47条を適用・無印) | 局所放出方式の細目(駐車の部分は(ウ)で読み替え) | 公開資料に基準なし |
| 対象 | 自動車の修理・整備の部分と駐車の部分 | 局所放出方式(オーバーヘッド方式は不活性ガスの設置場所の制限を受けない) | ― |
| 容器を分ける条件 | 4以上相接→2個、隣り合う区域は別の容器 | 4以上相接→2個以上、隣り合う区域は別の容器 | ― |
| 容器1個にできる条件 | 隣接する放射区域ごとに不燃材料で区画 | 隣接する3放射区域以下ごとに間仕切等で区画 | ― |
| 容器2個の量 | 受け持つ最大の区域の床面積×3キログラム | 受け持つ放射区域の量のうち最大(量は規則の表面積を床面積に読み替え) | ― |
| 容器1個の量 | 隣り合う2区域の床面積の合計の最大×3.6キログラム | 隣り合う2区域の量の最大(2区域のみで3メートル以上重なれば大きい方の区域) | ― |
| 放射区域の面積 | 50平方メートル以上 | 第9の該当箇所に記載なし | ― |
| 起動装置 | 放射区域ごと・専用の熱感知器(二酸化炭素の基準を準用) | 全域放出方式の(10)による | ― |
容器を1個にできる区画の条件も、大阪市は隣り合う区域ごと、堺市は3区域以下ごとと違います。
駐車場の泡消火設備の扱いは堺市の屋上駐車場の記事で比べています。
駐車場で粉末消火設備を計画するときは、放射区域の割り方と容器の受け持ちを図面に書き込んで、所轄の消防署と協議するのが確実です。
同じ大阪府内でも、特例として書くか細目として書くかで違うのですね。
はい、建物がどの市にあるかで読む基準が変わります。
よくある質問で整理しておきましょう。
よくある質問
まとめ
まず図面に放射区域を書き込んで、4つ以上並ぶか、50平方メートル以上あるかを確かめます。
容器の受け持ちと量も、3キログラムと3.6キログラムの両方で試算しておきます!
同じ駐車場でも、区域の割り方と区画で容器の数と量が変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第10節 粉末消火設備 第7 特例基準 2(1)〜(4)・図1-10-1、第1章 第8節 不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するもの)第2 9、凡例 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第9 粉末消火設備 Ⅱ 細目 3 局所放出方式 (1)(3)・第9-5図〜第9-8図、第7 不活性ガス消火設備 Ⅱ 3(1) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第13条・第18条・第32条
- 消防法施行規則 第21条・第23条第4項
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





