電気室やサーバー室、駐車場などには、水を使わずにガスで火を消す消火設備が付いていることがあります。
ガスを放出したあとの部屋には、消火剤と燃焼ガスがたまったままになります。そのため国の基準は、消火剤を安全な場所に排出するための措置を求めています。
では、窓を開けて外へ逃がすだけでよいのでしょうか。それとも排出ファンが要るのでしょうか。
大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」は、消火剤の種類ごとに排出の方法を分けて書いています。
この記事では、国の基準と大阪市の取扱いを分けて読み、基準どうしの準用のつながりをたどったうえで、堺市の基準と比べます。
大阪市で、電気室に窒素の消火設備を付ける計画があります。
放出したガスは窓から逃がせばよいのでしょうか?
大阪市の運用基準では、窒素などの節は機械排出だけを書いています。
まず国の基準から確かめましょう。
二酸化炭素の設備とは扱いが違うのですね。
はい、消火剤ごとに借りる基準が違います。
つながりを順にたどっていきましょう。
- 国の消防法施行規則第19条第5項第18号は、放出した消火剤と燃焼ガスを安全な場所に排出する措置を求めていますが、方法までは書いていません
- 大阪市の運用基準では、二酸化炭素の消火設備は自然排出か機械排出を選べ、自然排出なら開口部が床面積の10パーセント以上としています
- 窒素・IG-55・IG-541の不活性ガス消火設備は、機械排出だけが書かれ、排出ファンは1時間におおむね5回以上換気できる容量とされています
- ハロン1301は二酸化炭素の基準を借りて開口部を1パーセントに読み替え、HFC-23などは窒素などの基準をそのまま借ります
- 堺市の審査基準は、窒素などやHFCも二酸化炭素の排出措置をまとめて借りる形で、排出口の高さや操作部の書き方が大阪市と違います
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目次
国の基準ではガス系消火設備の消火剤の排出は何を求めているのか

そこで各消防本部が、運用基準や審査基準で具体的な方法を示しています。排出設備の非常電源や標識など、国の基準そのものは不活性ガス消火設備の排出措置を解説した記事で読めます。
国の条文は「安全な場所へ」というところまでなのですね。
はい、方法の細かい決まりは各消防本部の基準で確かめます。
次の見出しで大阪市の二酸化炭素の基準を読みます。
大阪市で二酸化炭素消火設備の消火剤は窓から逃がしてよいのか

(1)は、自然排出又は機械排出のどちらかで、屋外や屋上の人のいない場所などへ排出できることとしています。自然排出を選ぶときの条件が(2)です(◆印=大阪市の行政指導基準)。
ア 局部的滞留を起こさないよう配置された開口部の面積(防護区画の高さの3分の2以下の位置にある部分に限る。)の合計が、防護区画の床面積の10パーセント以上であること
イ 防護区画外から、容易に開放できるものであること
仮の数字で計算してみます。床面積が60㎡、天井の高さが3mの防護区画とします。
| 確かめること | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 必要な開口部の面積 | 60㎡×10パーセント | 6㎡以上 |
| 数えてよい高さ | 3m×3分の2 | 床から2mまでの部分 |
| 床から1.5m〜2.5mの窓(幅2m) | 2mまでの部分は0.5m×2m | 1㎡だけ数える |
なお、二酸化炭素の設備には、防護区画の隣の部分にも排出などの措置を求める国の規定(規則第19条第5項第19号の2)があり、大阪市の11も隣接部分を経由せずに操作できる位置を求めています。隣接部分の扱いは防護区画に隣接する部分の保安措置を解説した記事で読めます。
窓を開ければよいのではなく、低い位置の開口の面積で決まるのですね。
はい、床面積の10パーセントを低い位置で確保する必要があります。
足りなければ機械排出を検討しましょう。
大阪市で窒素などの不活性ガス消火設備は排出ファンをどう付けるのか

その第2 11「排出措置」は、二酸化炭素の基準を借りずに、自分で9つの項目を書いています。最初の(1)は次のとおりです。
排出ファンの付け方を、二酸化炭素の基準と並べると次のとおりです。
| 項目 | 窒素など(第8節の2 第2 11) | 二酸化炭素(第8節 第2 11) |
|---|---|---|
| 排出の方法 | 機械排出だけ書かれている | 自然排出又は機械排出 |
| 排出にかける時間 | 1時間以内 | 1時間以内 |
| 排出ファンの容量 | 1時間当たりおおむね5回以上換気 | 1時間あたりおおむね5回(ポータブルファンは10回)以上 |
| ファンを防護区画内に置ける場合 | 不燃材料で遮蔽する等の耐熱保護 | 固定式のファンで耐熱保護 |
| 起動部・ダンパーの開放操作部 | 防護区画を経由せずに到達できる場所 | 防護区画及び隣接部分を経由せずに到達できる場所 |
| 操作部の高さ | 床から0.8m以上1.5m以下 | 床から0.8m以上1.5m以下 |
| ほかの部分とダクトを共用 | 逆流防止ダンパーなどで漏えいを防ぐ | 逆流防止ダンパーなどで漏えいを防ぐ |
ファンの起動部とダンパーの開放操作部は、床から0.8m以上1.5m以下の位置に付け、操作部である旨と操作方法を表示します。
窒素の設備は、ファンとダクトを前提に計画するのですね。
はい、大阪市の窒素などの節は機械排出が前提です。
ダクトの経路は設計の早い段階で決めましょう。
大阪市でハロン1301やHFCの消火設備はどの基準を借りるのか

まず、ハロン1301を放射するもの(第9節)の第3 12です。
- 設備の消火剤がハロン1301か、HFC-23などかを確かめる
- ハロン1301なら、二酸化炭素の第2 11を開く(第9節 第3 12)
- その(2)アの「10パーセント」を「1パーセント」に読み替える。自然排出なら開口部は床面積の1パーセント以上になる
- HFC-23などなら、窒素などの第2 11を開く(第9節の2 第2 11)
- 窒素などの第2 11は機械排出だけなので、排出ファンの9項目をそのまま当てはめる
たとえば床面積60㎡の防護区画なら、ハロン1301の自然排出の開口部は60㎡×1パーセント=0.6㎡以上です。二酸化炭素の6㎡と比べると10分の1になります。ハロン1301の防護区画の開口部や排出装置についての国の古い質疑応答は、ハロン1301の防護区画の質疑応答を解説した記事で読んでいます。
ハロンとHFCで、借りる基準が別々なのですね。
はい、消火剤の名前から借りる先を確かめるのが近道です。
読み替えの数字も忘れずに確かめましょう。
堺市や東大阪市では消火剤の排出の基準は違うのか

除かれていない(15)ア(イ)には自然排気による排出方法(開口部が床面積の10%以上)があるため、条文の形のうえでは自然排気の項目も借りています。大阪市の窒素などの節が機械排出だけを書いているのと、ここが違います。
ハロゲン化物消火設備(第8)は、ハロン系もHFC系も(15)を借ります。ハロン系には、開口部を床面積の1%以上にできるただし書があります(◆印=消防庁の通知等を参考にした指導基準)。
| 項目 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|
| 二酸化炭素の排出方法 | 自然排出又は機械排出 | 機械排出又は自然排気 |
| 自然排出の開口部 | 床面積の10パーセント以上(高さの3分の2以下) | 床面積の10%以上(階高の2/3以下) |
| 窒素などの排出方法 | 機械排出だけ書かれている | 二酸化炭素の(15)を準用(自然排気の項目も含む形) |
| HFC-23などが借りる先 | 窒素などの第2 11 | 二酸化炭素の(15) |
| ハロン1301の開口部 | 1パーセントに読み替え | 1%以上とすることができる(◆) |
| ダクトでの排出口 | 屋上の人のいない場所、又は地盤面からおおむね3m以上の屋外 | 原則屋上、例外で2階以上(概ね3m以上)(★) |
| 排出ファンの容量 | おおむね5回以上(二酸化炭素のポータブルファンは10回) | 5回以上(ポータブルファンを含む・★) |
| 操作部の位置 | 床から0.8m以上1.5m以下 | 防災センター等(二酸化炭素・★)、防護区画を経由しない場所(窒素など・★) |
堺市の窒素などで実際に自然排気が認められるかは、条文の準用の形から読んだものです。設計では所轄の消防署に確かめてください。大阪市の粉末消火設備の特例は大阪市の粉末消火設備の記事で堺市と比べています。
同じ窒素の設備でも、大阪市と堺市で借りる基準の形が違うのですね。
はい、大阪市は窒素などで独自の9項目、堺市は二酸化炭素の(15)を準用です。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず消火剤の種類と借りる基準を確かめます。
排出ファンとダクトの経路も早めに相談します!
大阪市では、窒素などは機械排出、二酸化炭素とハロン1301は自然排出も可が要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第8節 不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するもの) 第2 11 排出措置・第8節の2 不活性ガス消火設備(窒素・IG-55・IG-541を放射するもの) 第2 11 排出措置・第9節 ハロゲン化物消火設備(ハロン1301を放射するもの) 第3 12 排出措置・第9節の2 ハロゲン化物消火設備(HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12を放射するもの) 第2 11 排出措置 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第7 不活性ガス消火設備 Ⅱ 1(15)・2(14)、第8 ハロゲン化物消火設備 Ⅱ 2(13)・3(13) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 公開の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行規則 第19条第5項第18号・第19号の2・第20条第4項
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。記事中の計算例は説明のための仮の数字です。個々の設備の排出の方法は、所轄の消防署にご確認ください。





