ホテルの客室と廊下のあいだの壁や、マンションの住戸どうしを仕切る壁は、建築基準法施行令で準耐火構造にすることが決まっています。
ところが堺市消防局の「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」には、国の基準に上乗せした取扱いが書かれています。
ホテルの客室の出入口に防火戸を付けること、共同住宅の界壁が外壁に当たる部分を90cmの幅で耐火構造にすることの2つです。
では堺市では、国の基準と比べて何がどこまで求められるのでしょうか。
この記事では、国の基準と堺市の審査基準を分けて読み、大阪市・東大阪市の基準とも比べます。
堺市でビジネスホテルの新築を計画しています。
客室のドアは普通の木の扉で考えていました。
堺市の審査基準には、客室と廊下の間の開口部に防火戸を設ける取扱いがあります。
国の基準にはない上乗せです。
同じ会社でマンションも建てるのですが、そちらにも上乗せはあるのですか。
界壁が接する外壁の90cm幅に上乗せがあります。
国の条文から順に確かめましょう。
- 国の基準(建築基準法施行令第114条第2項)は、ホテルの防火上主要な間仕切壁を準耐火構造にして小屋裏か天井裏まで届かせることを求めています
- 堺市の審査基準は、ホテル等の宿泊室と廊下を準耐火構造の壁で区画し、開口部に防火戸を設けるとしています
- 共同住宅等の界壁については、防火区画の外壁の規定に準じて、界壁が接する外壁の90cm幅を耐火構造にし、開口部には防火戸か50cm以上突き出したひさし・そで壁を設けるとしています
- どちらも★印で、堺市消防局が防火安全性の向上を目的に定めた指導基準です
- 大阪市と東大阪市の公開の運用基準には、同じ取扱いの記載は見当たりません
▼

目次
国の基準ではホテルの客室と廊下の壁はどう決まっているのか

一方で、第114条には間仕切壁の出入口に防火戸を付けることを求める規定はありません。第5項が定めているのは、給水管や風道が壁を貫通する部分の処理です。
どの壁が「防火上主要な間仕切壁」に当たるかや、天井裏まで届かせなくてよい部分の考え方は、防火上主要な間仕切壁の記事で詳しく解説しています。
国の基準では、壁は準耐火構造でも、ドアには決まりがないのですね。
はい、第114条は壁と天井裏までの立ち上げを定めています。
次の見出しで堺市の取扱いを読みます。
堺市でホテルの客室と廊下はなぜ防火戸まで求められるのか

国の第114条第2項と比べると、堺市は次の2点をはっきり書いています。
- 区画する場所を、宿泊室と廊下のあいだと名指ししている
- 壁だけでなく、その壁の開口部(客室の出入口など)に防火戸を設けるとしている
- 国の第114条第2項にあるスプリンクラー設備を設けた部分などの除外は、8(1)の文面には書かれていない
末尾の★は、審査基準の第1章 総則の凡例で意味が決められています。
法令ではなく指導基準でも、相談なしに進めるのは危ないですね。
はい、★は堺市が独自に定めた指導基準です。
設計の早い段階で所轄と打ち合わせましょう。
国の基準では共同住宅の界壁と外壁の関係はどう決まっているのか

ここで問題になるのが、界壁が外壁にぶつかる部分です。室内で界壁がしっかりしていても、外壁の窓から窓へ炎が回り込めば、隣の住戸に燃え移ります。
建築基準法施行令には、防火区画に接する外壁を守る規定が第112条第16項・第17項にあります。
つまり国の基準では、界壁が接する外壁に90cmの規定は直接にはかからないことになります。防火区画の外壁の規定そのものは防火区画に接する外壁の記事で解説しています。
国の90cmの規定は、防火区画の外壁だけが対象なのですね。
はい、第112条第16項は界壁を挙げていません。
堺市はここに上乗せをしています。
堺市で共同住宅の界壁が接する外壁は90cmをどうするのか

- 出発点は建築基準法施行令第114条第1項。長屋・共同住宅の各戸の界壁を準耐火構造にして小屋裏か天井裏まで届かせる(外壁の定めはない)
- 堺市の8(2)は、界壁を耐火構造の壁で区画する場合を対象にしている
- その場合に「同第112条第10項及び第11項に準じ」とある。これは防火区画に接する外壁の90cmと、その開口部の防火設備の規定を指している
- この2つの規定は、現行の条文では第112条第16項(外壁90cm)と第17項(開口部の防火設備)にある。審査基準の項番号は改正前の番号と考えられる
- 借りてきた規定を界壁に当てはめ、界壁が接する外壁の90cm幅を耐火構造にする
- その部分に開口部があれば防火戸を設けるか、50cm以上突き出した耐火構造のひさし・そで壁を設ける
また、国の第16項・第17項は「ひさし等で遮られていれば90cmは不要」「90cmの部分の開口部には防火設備」という順に読みます。堺市の8(2)は、開口部に防火戸を付けるか、50cmのひさし・そで壁を付けるかという書き方です。細かい組合せは所轄で確かめてください。
| 項目 | 国の第112条第16項・第17項 | 堺市の8(2)★ |
|---|---|---|
| 対象 | 防火区画の床・壁に接する外壁 | 共同住宅等の界壁が接する外壁 |
| 外壁の幅 | 90cm以上 | 90cm幅 |
| 外壁の構造 | 準耐火構造 | 耐火構造 |
| 開口部 | 防火設備 | 防火戸 |
| ひさし・そで壁 | 50cm以上突出した準耐火構造なら90cmは不要 | 50cm以上突出した耐火構造のひさし・そで壁 |
界壁の外側で窓が並ぶ設計だと、間に壁を残すかひさしが必要なのですね。
はい、90cm幅の耐火構造か50cmのひさし・そで壁です。
立面図の段階で確認しましょう。
大阪市や東大阪市の基準ではどう書かれているのか

「記載なし」は、その市で防火戸やひさしが不要という意味ではありません。建築基準法施行令の基準は全国共通で、上乗せの指導があるかどうかは計画ごとに所轄の消防署で確かめる必要があります。
| 項目 | 国の基準 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|---|
| ホテルの客室と廊下の壁 | 防火上主要な間仕切壁は準耐火構造(第114条第2項) | 準耐火構造の壁で区画★ | 記載なし | 記載なし |
| 客室の出入口 | 第114条に定めなし | 防火戸★ | 記載なし | 記載なし |
| 界壁が接する外壁 | 第114条に定めなし | 90cm幅を耐火構造★ | 記載なし | 記載なし |
| その部分の開口部 | 第114条に定めなし | 防火戸か50cmのひさし・そで壁★ | 記載なし | 記載なし |
ホテルでは、客室の防火戸と階段の防火設備をあわせて管理することになります。階段の防火戸の夜間の管理は防火設備の管理の記事で読めます。堺市の防火区画のほかの★は、竪穴区画の記事と地下駐車場の防火区画の記事で解説しています。
大阪府内でも、ここまで書いてあるのは堺市だけなのですね。
はい、公開の基準で確認できたのは堺市だけです。
ほかの市でも計画時に所轄へ相談しましょう。
よくある質問
まとめ
まず客室の出入口と外壁の立面を確かめます。
堺市の計画なら早めに所轄に相談します!
堺市では、客室の防火戸と界壁の外壁90cmが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例、第2章 第1節 総論 第9 防火区画 6(2)・8(1)(2) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 公開の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 建築基準法施行令 第112条第16項・第17項、第114条第1項・第2項(e-Gov法令検索)
- 消防法施行令 別表第1(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各市の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物で防火戸やひさしをどう設けるかは、所轄の消防署と建築確認の窓口にご確認ください。





