地階を除く階数が7以上の建物などに設ける連結送水管は、火事のときに消防隊がポンプ車から水を送り込み、上の階の放水口で使う設備です。その入口が、建物の外壁にある送水口です。
国の法令は「消防ポンプ自動車が容易に接近できる位置」と高さを決めているだけで、建物のどの面に置くかまでは書いていません。そこを補っているのが各市の運用基準です。
この記事では、東大阪市消防局の運用基準を中心に、国の基準と市の運用を分けて読み、大阪市・堺市の基準とも比べます。
東大阪市で6階建ての事務所ビルを計画しています。
連結送水管の送水口はどこに付ければよいですか。
東大阪市の運用基準には水利・道路・障害物・消防局との調整の4つが書かれています。
順に見ていきましょう。
大阪市や堺市でも同じですか?
考え方は近いですが、大阪市と堺市はスプリンクラー設備の規定を借りています。
借り先までたどって比べます。
- 国の基準は、送水口を双口形にし、消防ポンプ自動車が容易に接近できる位置に、地盤面から0.5m以上1m以下の高さで立管の数以上設けることまでです
- 東大阪市は、水利の位置を考慮・道路等に面した識別しやすい位置・付近に障害物を置かない・警防部警備課と調整の4つを連結送水管の基準に直接書いています
- 大阪市は、置き場所をスプリンクラー設備の送水口の規定から準用し、水利の考慮と「努めて建物正面出入口付近」を求めています
- 堺市は、置き場所は連結送水管の基準に直接書き、機器と配管の口径・弁をスプリンクラー設備から準用しています。はしご車の進入経路に支障のない位置という項目もあります
- 3市とも記号の付いた指導の部分が多いので、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認します
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目次
国の基準では送水口の場所はどこまで決まっているのか

(略)
四 送水口及び放水口には、見やすい箇所に標識を設けること。
- 送水口は双口形にする
- 消防ポンプ自動車が容易に接近できる位置に設ける
- ホース接続口は立管の数以上の数を、地盤面から0.5m以上1m以下の高さに設ける
- 見やすい箇所に標識を設ける
国の基準は「ポンプ車が近づける位置」までなのですね。
はい、具体的な置き場所は市の運用で決まります。
まず東大阪市から見ます。
東大阪市は送水口の置き場所をどう決めているのか

⑴ 機器
送水口の結合金具は、差込式のものとすること。●
⑵ 設置場所
ア 消防用水、公設消火栓その他の水利の位置を考慮した位置とすること。▲
イ 道路等に面した容易に識別できる位置とすること。●
ウ 送水口付近には、操作及び視認の障害となるものを設けないこと。
エ 警防部警備課と調整すること。●
⑶ 設置方法
規則第31条第1号に規定する「ホース接続口」は、1の双口形の送水口を1のホース接続口とみなすこと。
- ア 消防用水や公設消火栓などの水利の位置を考慮する(▲)
- イ 道路等に面した、容易に識別できる位置にする(●)
- ウ 送水口の付近に操作や視認の障害となるものを設けない(無印)
- エ 東大阪市消防局の警防部警備課と調整する(●)
ウは無印なので、東大阪市は法令基準(「容易に接近することができる位置」の解釈)として扱っていると読めます。植栽や駐輪場、看板で送水口を隠さないことが大切です。
⑶は、規則第31条第1号の「立管の数以上」を数えるときに、双口形の送水口1つを1つのホース接続口と数えるという読み方です。立管が2本なら、双口形の送水口が2つ要ることになります。
このほか柱書は、規則第31条第3号のねじ式の結合金具に係る部分を除いて準用し、⑴で差込式と決めています。送水口の表示(反射板や乾式の表示)は⑷にあり、津市の送水口の表示の記事で東大阪市を含めて比べています。
警防部警備課との調整まで書いてあるのですね。
はい、消防隊が実際に使う位置だからです。
次は大阪市の借り方です。
大阪市はスプリンクラー設備の送水口の規定をどう借りているのか

(2) 努めて建物正面出入口付近とし、消防ポンプ自動車と接続する消防ホースの操作に支障のない場所とすること
- 連結送水管の節の第2 送水口◆ 1 設置場所を開く
- そこでスプリンクラー設備の基準の第5.1.(1)及び(2)を準用すると書かれている
- スプリンクラー設備の第5 送水口◆を開き、(1)水利の位置を考慮、(2)努めて建物正面出入口付近・ホースの操作に支障のない場所を読む
- 連結送水管の節に戻り、双口形1つを1つのホース接続口として立管の数以上、2以上なら有効な場合は分散配置を加える
東大阪市と比べると、水利の考慮と双口形の数え方は同じです。大阪市は「道路等に面した」ではなく「努めて建物正面出入口付近」と書き、分散配置にも触れています。大阪市の送水口の圧力の表示や設計送水圧力は大阪市の設計送水圧力の記事で解説しています。
連結送水管の置き場所が、スプリンクラー設備の節に書いてあるのですね。
はい、(1)と(2)だけを借りるのがポイントです。
次は堺市です。
堺市は何を借りて何を自分で書いているのか

ア 機器等は、第4 スプリンクラー設備Ⅱ.1.(9).ア及びイ.(イ)を準用すること。
(略)
ウ 送水口は、政令第29 条第2 項第3 号の規定により消防ポンプ自動車が容易に接近できる場所とするほか、次によること。★
(ア) 採水が容易に得られる場所を原則とすること。
(イ) 送水口を2以上設ける場合、消防隊が有効に消防活動を行うことができる場所に分散して配置すること。
(ウ) 消防活動空地を設ける建物にあっては、はしご車の進入経路に支障とならない位置とすること。
アで準用しているスプリンクラー設備の(9)は次のとおりです。
(ア) 省令第14 条第1 項第6 号ロに規定する送水口の結合金具は、差込式のものとすること。
(イ) 送水口は、認定品を使用すること。
(略)
(イ) スプリンクラー設備の主管に接続する送水口の配管の口径は接続する主管と同等以上であり、かつ、100A以上とすること。◆③
また、送水口の直近には止水弁、逆止弁及びその一次側に排水弁を設けること。★
- 連結送水管の節のⅡ1(1)送水口を開く
- アで、スプリンクラー設備のⅡ1(9)のアとイ(イ)を準用すると書かれている
- スプリンクラー設備の(9)を開き、ア差込式の結合金具・認定品、イ(イ)送水口の配管の口径・止水弁・逆止弁・排水弁を読む
- 連結送水管の節に戻り、ウ★の採水しやすい場所・分散配置・はしご車の進入経路で置き場所を決める
イ(イ)はもともとスプリンクラー設備の主管に向けた書き方なので、連結送水管の配管にどう読み替えるかは審査基準に書かれていません。口径の扱いで迷うときは設計の段階で管轄の消防署に確認するのが確実です。
なお、送水口の数については、同じ審査基準の配管等の項目(Ⅱ1(2)オ★)に、同一棟に複数の立管があるときはそれぞれの立管に送水口を設け、バイパス配管で立管を相互に接続する決まりがあります。
堺市は、置き場所は自分で書いて、機器はスプリンクラーから借りるのですね。
はい、借りる範囲が大阪市と逆なのが面白いところです。
最後に3市を並べます。
3市を並べると送水口の置き場所は何が違うのか

| 項目 | 東大阪市 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 置き場所の書き方 | 連結送水管の基準に直接 | スプリンクラー設備の第5.1(1)(2)を準用 | 連結送水管の基準に直接(ウ★) |
| 水利 | 消防用水・公設消火栓その他の水利の位置を考慮(▲) | 同じ(◆・準用) | 採水が容易に得られる場所を原則(★) |
| 建物のどの面か | 道路等に面した容易に識別できる位置(●) | 努めて建物正面出入口付近・ホースの操作に支障のない場所(◆) | 消防活動空地のある建物ははしご車の進入経路に支障とならない位置(★) |
| 付近の障害物 | 操作・視認の障害となるものを設けない(無印) | ホースの操作に支障のない場所(◆・上と同じ項目) | 送水口の項目には見当たらない |
| 数の数え方 | 双口形1つを1つのホース接続口(無印) | 双口形1つを1つのホース接続口として立管の数以上(◆) | 複数の立管にはそれぞれ送水口(Ⅱ1(2)オ★) |
| 2以上設けるとき | 送水口の項目には見当たらない | 有効な場合は分散配置(◆) | 有効に消防活動できる場所に分散(★) |
| 消防局との調整 | 警防部警備課と調整(●) | 送水口の項目には見当たらない | 送水口の項目には見当たらない |
| 結合金具 | 差込式(●) | 規則第31条第3号のねじ式に係る部分を除いて準用 | 差込式・認定品(スプリンクラー設備から準用・★) |
- 水利を考えて置くことは、3市とも同じです
- 建物のどの面に置くかは、東大阪市が道路等に面した位置、大阪市が努めて正面出入口付近、堺市がはしご車の進入経路に支障のない位置と、書き方が分かれます
- 大阪市は置き場所をスプリンクラー設備から借り、堺市は機器と配管をスプリンクラー設備から借りるという、借りる範囲の違いがあります
- 東大阪市だけが、消防局の警防部警備課との調整を送水口の項目に書いています
- 結合金具は、書き方は違っても3市とも差込式にそろいます
- 敷地まわりの消防用水・公設消火栓の位置を図面に落とす
- 送水口を道路等に面した、見つけやすい壁面に置き、地盤面から0.5m以上1m以下の高さにする
- 立管の数を数え、双口形の送水口をその数以上設ける
- 植栽・駐輪場・看板などで操作や視認の妨げにならないことを確かめ、消防局の警防部警備課と調整する
同じ大阪府内でも、送水口の置き方の書き方が少しずつ違うのですね。
はい、借り先まで開いて比べると違いが見えます。
計画する市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず水利と道路の位置を図面に落として、送水口の候補を決めます。
消防局との調整も早めにします!
借り先の規定まで読むと抜けがなくなるのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 東大阪市消防局「連結送水管の設置に係る運用基準」凡例/Ⅱ 細目 1 送水口 柱書・(1) 機器・(2) 設置場所 ア〜エ・(3) 設置方法 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例/第5章 第3節 連結送水管 第2 送水口 1 設置場所/第1章 第3節 閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備 第5 送水口 1 設置場所 (1)(2) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」総則 凡例/第22 連結送水管 Ⅱ 細目 1 (1) 送水口 ア・ウ・(2) オ/第4 スプリンクラー設備 Ⅱ 細目 1 (9) 送水口 ア・イ(イ) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令 第29条、消防法施行規則 第14条・第31条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および東大阪市・大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。準用する規定の読み替え方が基準に書かれていない部分は、本記事では断定していません。





