11階建て以上のマンションなどの特定共同住宅等では、通常のスプリンクラー設備に代えて共同住宅用スプリンクラー設備を設けることができます。国の共住省令がどの階に設けるかを決め、細かな取扱いは各消防本部の基準が補っています。
大阪市消防局の運用基準は、この設備について7つの取扱いを書いています。メゾネット住戸の範囲、配管と送水口、補助散水栓で屋内消火栓設備を外す条件、非常電源、電気室やゴミ置場に設ける場合です。
この記事では、国の共住省令が決めていることと、大阪市の運用上の取扱いを分けてたどります。どの規定を足がかりにしているかを番号つきの手順で示し、堺市の審査基準とも比べます。
大阪市で14階建てのマンションを計画しています。
共同住宅用スプリンクラーは何階に要りますか?
国の共住省令では11階以上の階が基本です。
大阪市の取扱いも順に見ていきましょう。
10階以下の屋内消火栓はどうなるのですか?
大阪市は補助散水栓で包含すれば外せるとしています。
条件があるので確かめましょう。
- 国の共住省令第3条第3項第2号は、共同住宅用スプリンクラー設備を11階以上の階などに設けるとし、水源4立方メートル以上や送水口などを決めています
- 大阪市は、メゾネット住戸の1つの階だけが対象でも住戸全体に設けるとしています
- 大阪市は、摩擦損失計算で支障がなければ立上り管50A・自動警報装置の二次側40A・ヘッド1個なら20Aにでき、送水口は1つにできるとしています
- 大阪市は、ほかの階を補助散水栓で包含すれば屋内消火栓設備を設置しないことができるとし、流水検知装置と表示装置を条件にしています
- 堺市も、メゾネット住戸全体への設置、5住戸未満の非常電源、補助散水栓による屋内消火栓設備の省略を定めています。最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認します
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目次
国の基準では共同住宅用スプリンクラー設備をどの階に設けるのか

イ 次の(イ)から(ハ)に掲げる階又は部分に設置すること。
(イ) 特定共同住宅等の十一階以上の階及び特定住戸利用施設(十階以下の階に存するものに限る。)
ニ 水源の水量は、四立方メートル以上となるように設けること。
ヘ 非常電源は、規則第十四条第一項第六号の二の規定の例により設けること。
ト 送水口は、規則第十四条第一項第六号の規定の例によるほか、消防ポンプ自動車が容易に接近することができる位置に単口形又は双口形の送水口を設けること。
もう1つ大事なのが、同じ第3条第1項の表です。どの消防用設備等を共同住宅用の設備に代えられるかを、構造類型と階数ごとに決めています。屋内消火栓設備の欄は、次のように書き分けられています。
| 構造類型 | 代えられる屋内消火栓設備 |
|---|---|
| 開放型・二方向避難・開放型 | 屋内消火栓設備(限定なし) |
| 二方向避難型・その他(地階を除く階数11以上) | 第3項第2号イに掲げる階及び部分に設置するものに限る |
| 二方向避難型・その他(地階を除く階数10以下) | 第3項第2号イ(ロ)及び(ハ)に掲げる階及び部分に設置するものに限る |
- 共同住宅用スプリンクラー設備は、11階以上の階などに設ける(第3条第3項第2号イ)
- 水源は4立方メートル以上、送水口は単口形か双口形で、消防ポンプ自動車が近づける位置に設ける(同ニ・ト)
- 二方向避難型やその他の特定共同住宅等では、屋内消火栓設備を代えられるのは共同住宅用スプリンクラー設備を設ける階に限られる(第3条第1項の表)。11階建て以上なら、10階以下の階に屋内消火栓設備が残ることがある
構造類型によって、10階以下の屋内消火栓が残るのですね。
はい、表の書き方が類型ごとに違います。
次は大阪市の取扱いです。
大阪市はメゾネット住戸と配管と送水口をどう扱うのか

1 第2.1に定めるメゾネット型住戸等の1の階のみが、共住省令第3条第3項第2号イの規定又は条例第40条第1項の規定による場合でも、当該住戸等全体に共同住宅用スプリンクラー設備を設置すること
1が引く「第2.1」と「条例第40条第1項」は、次のとおりです。
- 国の共住省令第3条第3項第2号イは、共同住宅用スプリンクラー設備を11階以上の階などに設けるとする
- 大阪市の火災予防条例第40条第1項は、たとえば第7号で11階未満でも地盤面からの高さが31メートルを超える階にスプリンクラー設備を求めている
- 大阪市の第2 1は、メゾネット住戸を1つの階として扱わず、建物の階として数えるとする。10階と11階にまたがる住戸なら、上の階だけが対象になることがある
- そこで第5 1は、住戸の1つの階だけが対象になる場合でも、その住戸全体に共同住宅用スプリンクラー設備を設けるとする
3 送水口の数は、1とすることができる。
高さ31メートルを超える階のスプリンクラー設備の取扱いは、堺市の31メートルのスプリンクラーの記事で大阪市の条例とも比べています。
メゾネットは、下の階もまとめて設けるのですね。
はい、住戸の一部だけ設けることはしないという取扱いです。
次は屋内消火栓との関係です。
大阪市で補助散水栓があれば屋内消火栓はいらないのか

- 国の共住省令第3条第1項の表で、二方向避難型やその他の特定共同住宅等は、屋内消火栓設備を代えられるのが共同住宅用スプリンクラー設備を設ける階に限られる
- そのため、11階以上に共同住宅用スプリンクラー設備を設けても、10階以下の階には屋内消火栓設備が残ることがある
- 大阪市の第5 4は、共同住宅用スプリンクラー設備を設けた階以外の階を補助散水栓で包含すれば、屋内消火栓設備を設置しないことができるとする
- その条件として、補助散水栓の一次側に流水検知装置を設け、加圧送水装置の起動と使用部分を表示する装置を防災センター等に設ける
福祉施設などの住戸利用施設がある場合の屋内消火栓設備の特例は、大阪市の住戸利用施設の屋内消火栓の記事で解説しています。
補助散水栓で包含すれば、屋内消火栓はいらないのですね。
はい、ただし流水検知装置と表示装置が条件です。
次は非常電源と電気室です。
大阪市で住戸が5未満のときや電気室に設けるときはどうなるのか

次の6は、住戸・共用室・管理人室以外の「住戸等」に設ける場合です。大阪市は第1 4で、住戸等に次の部分も含むとしています。
(1) 電気室(制御盤等が設けられており、人が内部に入って作業を行うEPS等も含む。)
(2) ゴミ置場
(3) 受水槽室
(4) ポンプ室
- 国の共住省令第3条第3項第2号ロは、ヘッドを住戸、共用室及び管理人室の居室と収納室に設けるとする
- 大阪市の第1 4は、住戸等に電気室・ゴミ置場・受水槽室・ポンプ室なども含むとする
- 第5 6は、それらの部屋に設けるなら、部屋ごとに制御弁と自動警報装置を設け、住棟受信機に部屋ごとの起動と制御弁閉止の信号を表示するとする。この場合、表示器は設置しないことができる
- 第6 4は、第5 6により住戸利用施設以外のそれらの部屋に設けた場合、有効範囲内の部分には共同住宅用自動火災報知設備を設置しないことができるとする
電気室に付けるなら、部屋ごとに弁と表示が要るのですね。
はい、どの部屋で作動したか分かるようにするためです。
最後に堺市と比べます。
堺市と比べると共同住宅用スプリンクラー設備の扱いは何が違うのか

(2) 前(1)の場合、当該設備の水源水量は4 ㎥以上、また、加圧送水装置のポンプの吐出量は240ℓ/min 以上で足りるものであること。◆③
(5) メゾネット型住戸の上階のみに共同住宅用スプリンクラー設備の設置義務が生ずる場合でも、下階を含めて当該住戸全体に共同住宅用スプリンクラー設備を設置すること。なお、当該メゾネット型住戸に設置する流水検知装置等については、一の流水検知装置等により当該上階及び下階を受持つことができるものであること。◆②
(4) 管径は、原則として配管摩擦損失計算によること。なお、取り付けられるヘッド数により管径を設定する場合は、第5-1表によること。また枝管に取り付けられるヘッド数は、配水管から片側5個以下であること。
東大阪市は、公開されている6つの運用基準(消火器具・自動火災報知設備・避難器具・誘導灯・連結送水管・非常コンセント)に特定共同住宅等の基準がないため比べていません。2市を並べると次のとおりです。
| 項目 | 大阪市(第5) | 堺市(Ⅴ) |
|---|---|---|
| メゾネット住戸 | 1つの階だけが対象でも住戸全体に設置 | 上階のみが対象でも住戸全体に設置。流水検知装置等は1つで上下階を受け持てる(◆②) |
| 配管の口径 | 摩擦損失計算で支障がなければ立上り管50A・二次側40A・ヘッド1個は20A | 原則は摩擦損失計算。ヘッド数で決めるなら25A・32A・40Aの表 |
| 送水口 | 1にできる | Ⅴに数を決めた項目は見当たらない |
| 補助散水栓で屋内消火栓設備を外す | 流水検知装置+防災センター等に起動と使用部分の表示 | 令第32条を適用。表示装置か住棟受信機に始動と使用部分の表示(◆②)。水源4㎥以上・吐出量240ℓ/min以上で足りる(◆③) |
| 5住戸未満の非常電源 | その住戸等分の容量にできる | その住戸分の容量で足りる(◆②) |
| 電気室などに設ける場合 | 部屋ごとに制御弁と自動警報装置・自火報を設置しないことができる | Ⅴに同じ項目は見当たらない |
違いが出るのは、配管の口径の決め方(大阪市は計算を前提に口径を下げる、堺市はヘッド数の表)と、補助散水栓を使うときの水源と吐出量を堺市だけが書いている点です。大阪市の第5の中には、補助散水栓を使う場合の水源の量やポンプの吐出量を決めた項目は見当たりません。 大阪市で共同住宅用スプリンクラー設備を計画するときは、次の順に確かめると抜けが出ません。
- 構造類型と階数から、共同住宅用スプリンクラー設備を設ける階と、屋内消火栓設備が残る階を共住省令第3条第1項の表で確かめる
- メゾネット住戸があれば、住戸全体を設置範囲に入れる
- 配管の口径を下げるなら摩擦損失計算書で支障がないことを示す
- 10階以下の屋内消火栓設備を外すなら、補助散水栓で包含し、流水検知装置と防災センター等の表示装置を設ける
- 電気室やゴミ置場にも設けるなら、部屋ごとの制御弁と自動警報装置と住棟受信機の表示を計画に入れる
大阪市と堺市で、配管の決め方が少し違うのですね。
はい、大阪市は計算が前提、堺市はヘッド数の表もあります。
計画する市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず構造類型と屋内消火栓が残る階を確かめます。
そのうえで消防局に協議します!
大阪市は補助散水栓と配管の取扱いが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例/第8章 第7節 特定共同住宅等 第1 4・第2 1・第5 共同住宅用スプリンクラー設備 柱書・1〜7・第6 4 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 大阪市火災予防条例 第40条 第1項 第7号(大阪市例規データベース)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」総則 凡例/特定共同住宅等 Ⅴ 共同住宅用スプリンクラー設備 5(2)・7(4)・13(1)(2)(5)・通知一覧 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第3条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。消防庁告示第17号と、堺市の審査基準が示す消防庁の通知は本文まで確かめていないため、内容は各市の基準に書かれた範囲で説明しています。





